※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
旅の終わりを感じながら
情報
作者:壁井ユカコ
イラスト:田上俊介
ざっくりあらすじ
ボロボロなラジオこと兵長は、体にガタが来ていたのだろう。記憶が飛び飛びになり、性格が大きく変わってしまった。そんな兵長を修復するために旅を再開する。しかし、ハーヴェイは違うことを考えているようで……。
感想などなど
さて、これまでの旅はキーリとハーヴェイと兵長の三人の旅でした(ベアトリクスもいましたが、まぁ、一先ず置いておきましょう)。これからも続くのだろう、と思っていた矢先に兵長の記憶喪失。
呆けたおじいちゃん……という表現が分かりやすいです。兵長の音波攻撃はもう使えず、記憶が徐々に逆行していき、ハーヴェイを「主人」と呼び、キーリを「手下」として扱う兵長……皆さんはそんな兵長を見たいでしょうか?
「見たい!」という人は是非ページを捲りましょう。見たくない人も「旅の終わり」を見たいならば同じくページを捲って下さい。
ベアトリクスを探すという一つの目的があったと思いますが、諦めムードの漂う三人。読んでいて辛いものがあります。回想(?)シーンにてベアトリクスらしき不死人が(ネタバレ)されていることを読者は知っているのに、三人は知らないということが歯痒さを加速させます。
そんな中、兵長が呆けるという緊急事態が発生。頼りがいがあり、キーリとハーヴェイを幾度となく支えてきた兵長が、兵長ではなくなっていく過程は心に来るものがあります。
まぁ、何だかんだで呆けてしまっても ”良いキャラしてる” と自分は思ってしまいましたが、キーリとハーヴェイはそれどころではありません。これまで厳しい言葉を投げかけてくれた相手が急に優しく、対等な立場だった相手が上から目線で言ってきたらどう思うでしょう。
相手と過ごした時間が長いほど、居心地の悪さを覚えるはずです。自分もこれまで仲良く冗談言い合っていた友人が他人行儀になったら……どうするでしょうね……。
キーリ達は、とりあえず、兵長を修繕するための旅に出ることとなります(部品が古すぎて見つからないため)。そんな旅となるわけですが、当然簡単なものではありません。
物語では度々「旅の終わり」という言葉が繰り返されます。あまりに露骨ですが、旅の終焉が近づいて来ていることが伝わってきます。そのために必要な伏線だったり、情報が怒濤に押し寄せてくるのです。
例えば、キーリの両親。覚えてますかね。死んでることになっています。砂の海で出てきましたが……。
例えば、ハーヴェイと兵長の出会い。あまり出てきていませんでしたね。
例えば、不死人の作り方。出てきていると言えば出てきていますが、もっとそれ以前のお話。
九巻で終わるということを知って読んでいますが、次巻で終わりと言われても納得の物語です。さて、彼らはどのように旅を終わらせていくのでしょうか。