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ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ギャルゲヒロインとの日常

情報

作者:田尾典丈

イラスト:有河サトル

ざっくりあらすじ

不思議なメールに誘われる形で『エターナル イノセンス』というギャルゲー世界のヒロイン達と生活することになった都筑武紀。ゲームの設定に沿って進んでいく日常だったが、現実と虚構が混じったことによる不具合に苦しめられることとなる。

感想などなど

ギャルゲーの世界に憧れたことはあるだろうか。ゲーム上で描かれた魅力的なヒロイン達に恋をして、こんな恋が現実でもしてみたいと思ったオタクは、数多くいることであろう。

しかし、二次元の美少女達は画面上から出てきてくれることはない。そんなこと分かりきった上で、みんなゲームを楽しんでいる。

もしも。そんな二次元の美少女達が現実に出てきて、一緒に学校に通えるとなったらどうだろう。現実ではあり得ないような、思わず笑ってしまうようなイベントを現実で体験できるとすれば、皆さんも少しくらい体験してみたいと思うものではないだろうか。

本作はそんな二次元世界、いわるゆ虚構と現実が入り乱れる世界を描いたライトノベルとなっている。ギャルゲのあるあるから、泣きゲーでありがちな設定が現実に落とし込まれたことによる救いのなさ、ギャルゲーの主人公がいかに凄いか、などなど見所はたくさんあるので、本ブログでその魅力が伝われば幸いだ。

 

さて、都筑武紀が大好きで、現実と交わることになるゲームの名は『エターナル イノセンス』。無名のゲーム会社が作成し、魅力的なキャラクター(今見ると少し古く感じてしまうが)、感動的なストーリーが多くのファンを生み、主人公もその一人となっている。

主人公はかなりやりこんでいるらしく、その知識量は相当なもの。ヒロイン達のスリーサイズはもちろんのこと、ゲーム内で選んだ選択肢に対する反応、友好関係に至るまでの全てを把握しているほどだ。

冒頭にて『あなたの世界を変えてみませんか?』というタイトルのメールを受け取り、疑いながらも何となくメールの指示に従って、『エターナル イノセンス』というゲームのヒロイン達と共に現実世界を一緒に過ごせるように、設定を作り替えてしまう。

すると朝目覚めると、ヒロインの一人である姉の春海(通称・春姉。当然血は繋がっていない)、さらにヒロインの一人である妹の夏海(朝、兄の布団に潜り込むことが日課。血は繋がっていない)の二人に囲まれて起こされるという夢のような状況。

あ、ギャルゲーでありそう。タイトルとか思い浮かばないけど。

朝食はヒロイン達が作ってくれたものを食べ、通学は姉と妹に加え、幼馴染みである秋原理恵が加わって両手に花どころか手が足りていない。もう攻略しようとか以前に、ヒロイン達が皆惚れている。天国かな?

女性慣れしていない主人公はそんな状況に緊張を隠せないが、それでも嬉しいということに変わりはない。ゲームの選択肢での台詞を思い出しながら、彼女達との会話を進めていく。

しかしギャルゲーというものは朝から晩まで、一日上の会話や行動の全てを選べる訳ではない。トイレに行くの行動を一つとってしても、ゲームでは描かれていなかった日常や齟齬というものが発生する。

例えば。

ゲーム内では春姉の仲の良い友人として、生徒会長が登場していた。しかし、どうやら生徒会長の立ち絵はなかったらしく、現実世界での生徒会長が春姉の友人となっているようだ。

ヒロインの一人である神楽咲には、ゲームでありがちなファンクラブがいる系の女子であり、学校の男子の三割がそのクラブに所属していた。その設定は現実に落とし込まれ、かなり異質な環境を生み出している。

また、ギャルゲーではヒロインの一人を攻略している間、他のキャラクターのシナリオは進行しないのがお約束である。しかし現実ではそうはいかない。神楽咲を攻略しようとすれば、春姉も夏海も秋原のルートも同時に勝手に進行していく。

この意味が分かるには、ある程度ギャルゲーのことを知っていなければなるまい。

例えばの話。

ヒロインAを死から救うようなEDが用意されているとする。しかしヒロインBを攻略している限り、ヒロインAが死にかけるようなことはないというのが基本的なギャルゲーであろう(例外はあるだろうが)。

現実ではそんなことはあり得ない。ヒロインBを攻略している最中、ヒロインAは死にかけていく。ゲームのフラグ管理はゲームだからこそ通用し、現実ではフラグなんて目で見える形で存在しない。選択肢たった一つで人生は塗り変わるほど単純ではない。人の人生というものは、もっと多くの複雑な関係性で構築されていくのだ。

 

例えヒロインがどんな窮地に陥ったとしても、主人公は救ってくれる。主人公が主人公たる所以だ。だからこそヒロインは惚れたのだ。

しかし都筑武紀は主人公ではない。ギャルゲをプレイして選択肢をポチポチ選んでいただけの外側の人間に過ぎない。ヒロイン達が主人公に惚れている理由は、ゲームの設定で決まっていたからという無情なものだ。慈悲はない。

虚構と現実が入り乱れることで、ゲームとは違うストーリーが幕を開ける。ヒロイン達を襲う危機に対して、主人公ではない都筑武紀にできることはあるのか。ギャルゲーの主人公がやったような勇気ある行動を、無茶だと笑ってしまうような展開を、彼にはできるのだろうか。

ゲームほど現実は甘くない。現実に現れたヒロインは、ただ主人公が好きなだけの人形ではないのだ。本作では、おそらく多くの人が想像するよりも、ちょぴりシリアスな展開が待っている。

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