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アンダカの怪造学Ⅱ モノクロ・エンジェル 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

現界と虚界

情報

作者:日日日

イラスト:エナミカツミ

ざっくりあらすじ

虚界という異世界から、今いる現界へ怪造生物を呼び出して使役する《怪造学》。それを専門で学ぶことができる学園に入学した伊依は、刀を持って一匹の怪造生物を殺そうとする同級生・舞弓と出会う。

感想などなど

第一巻にて街を容易く一つ滅ぼしてしまうほど強いフェニックスと戦い、魔王という虚界を生み出したとまでされる最強最悪の怪造生物を、呼び出してギリギリ勝った伊依。失ったものは大きく、長い時間を共にした友人の桃子を失ってしまい、さらに怪造生物を殺してしまったという失意の念に苛まれていく。

そんな彼女を救ったのは、皮肉にも彼女のことを嫌っていた教員・蟻馬であった。彼は彼女の成績を下げるために、影で暗躍(?)しているような男であるが、まぁ、事態が好転したのであれば良し。

さて、第二巻では街一つどころか世界が滅びかねない事件へと首を突っ込んでいくことになる。事件の概要はこれから語っていくとして、ここで大事なのは魔王の存在である。

魔王。

世界が滅びかねないという状況において、奴ほど頼りになる怪造生物もいないであろう。それが分かっているからこそ、虚界から囁きかけてくる。

俺の力を使え、と。

俺を呼べ、と。

友達である怪造生物を殺したくない伊依は、それらを全て断っていく。その辺りの葛藤も見所の一つであるとブログ主は思うのだ。少女の掲げた大きな理想は、その程度のことを成し遂げるくらいでなければ叶わないほど大きな夢なのだと考えさせられる。

 

さて、世界が滅びるという事件について語っていこう。

ある場所に、舞弓という刀を持ち、悪を薙ぎ倒す正義に憧れる少女がいた。彼女はある時、神と名乗る存在からゲームの話を持ちかけられた。ゲームの内容はこうだ。

『天使と悪魔がいる。二体は互いに引き合う性質を持っており、触れると同時に一つへと融合する。しかし融合した瞬間に世界は滅びてしまう。同じく七日間、二体の悪魔が生存していても世界は滅びてしまう』

『そんなゲームの勝利条件は、天使か悪魔のどちらかを殺すこと。悪魔は神が傍に置いており、天使はプレイヤーである真弓の傍においておく』

そのゲームに真弓の兄はかつて挑み、そして死んだ。世界の崩壊は免れたものの、命は失ったという訳だ。次は妹であるお前の番だ、と語る神と名乗る存在。

正義に憧れ、兄に憧れ続けた少女は、刀を握りしめゲームに挑むことを決意する。

 

このゲームのルールを聞いて、疑問に思ったことはないだろうか。そう、天使か悪魔のどちらかを殺せば世界の破滅は免れるのであれば、真弓は神に置いて行かれた天使を殺せばゲームは終了ということになる。

それではあまりに簡単すぎやしないだろうか?

事実、神に辿り付く道筋を見失った真弓は、手元にいた天使を殺そうと躍起になる。おそらく、怪造生物を例え敵であろうが何であろうが助けようとする伊依に出会わなければ、殺して消し炭にしていたことであろう。

お察しの通り、天使――とは言っているが実際は怪造生物――を殺そうとしている真弓に遭遇し、天使――伊依は梅子と命名――を守ろうと必死になる。これが真弓と伊依、二人のファーストコンタクトである。

こうしてフェニックス殺しとしてその名を馳せていた伊依は、世界の破滅を防ぐための戦いにその身を興じることとなる。彼女自身の戦闘力はそれほどでもないが、虚界から呼び出す友達こと怪造生物達の協力を得ながら、様々な障害を乗り越えていくことになる。

その展開は、低レベルで工夫して敵を攻略していくゲーム的感覚が近しい。さらにミステリというほどのものではないが、敵の正体を推理して罠に掛けようとする展開は、ドラマ的で飽きが来ないようになっている。エピローグの引きもかなり上手い。

一度読み始めてしまうと、最後まで読んでしまうような不思議な魅力のある作品だとブログ主的には思う。

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