※ネタバレをしないように書いています。
ギャルゲヒロインとの日常
情報
作者:田尾典丈
イラスト:有河サトル
ざっくりあらすじ
不思議なメールに誘われる形で『エターナル イノセンス』というギャルゲー世界のヒロイン達と生活することになった都筑武紀。虚構の世界からやってきたヒロインたちを全員幸せにすると誓った彼の周囲で、八年前に分かれてしまったという幼馴染が現れ、事態はおかしな方向へと向かって行く。
感想などなど
ゲームのヒロインたちと生活していると、絶えず襲ってくる死亡フラグや虐めフラグ、絶縁フラグや引き籠りフラグなどが同時に襲ってきて死にかけるということを学んだ第一巻。残念ながらこの教訓が生かされることは、今後の人生で一度たりともないだろう。二次元と三次元は結局のところ交わりようのない平行世界なのだ。
第一巻のラスト。ゲームのEDと共に消えていったヒロイン達ではあったが、まさかのDisc2の登場で物語が続いていくとは思わなかった。まぁ、売れたゲームは続編が出るものだし、それほど売れたということなのだろう。
だが第二巻で描かれていく物語というのは、いわゆるクロスオーバー作品とでも言うべきだろうか。『エターナル イノセンス』のヒロイン達をそのままに、『メモリーロンド』という超鬱ゲーの設定が入り乱れてくる。
一作品の虚構と現実が入り乱れただけでも、とてつもなく大変だったというのに、二作品目しかも鬱ゲーが入ってくるのだから、設定やストーリー、フラグ管理のややこしさは苛烈を極める。しかもやっかいなことに『メモリーロンド』というゲームに関して、主人公はトゥルーエンドまで攻略していないという詰み状態。
もう辛い。
鬱ゲーとはプレイしていると鬱になってしまうゲームのことである。本作において鬱ゲーという単語は一度たりとも登場していないが、バッドエンドでみんな死んじゃうようなギャルゲーは、もう鬱ゲーと言っていいとブログ主的には思うのだ。
何を隠そう、『メモリーロンド』というゲームはバッドエンドでみんな勝手に死んでいく。トゥルーエンドはネタバレなので書かないが、死なずとも記憶喪失か、みんなじゃなくとも誰か死ぬ。
となるとトゥルーエンドが気になってくるわけだが、都筑は『あまりにもフラグ管理がややこしすぎてやめてしまった』と語るほどの高難易度ギャルゲーとなっている。設定もかなりややこしい。AIRくらい。
『メモリーロンド』の物語を簡単にまとめようと思い、脳内で設定を反復し、何とか文章に起こそうとしてみるが、『不思議な力を持った樹によって、ヒロインの記憶が消えたり、ヒロインを救うために死のうとしたり、一度力を使った樹の力が再び力を使えるようにするために誰かを生贄として捧げたりする話』というように鬱要素もりだくさんの内容となってしまった。
第二巻ではなぜか、そのゲームのヒロインや主人公が都筑の前に現れ、誰が死んでもおかしくない危機的な状況へと追い込まれていくことになる。
ここで問題となってくることは二つ。
一点目。何故、都筑が巻き込まれていくことになるのか?
当たり前だが『メモリーロンド』というゲームには都筑は登場しない。ゲームに実在の一般人を登場させるなんてことはない。そうだというのに、都筑はゲームの物語に関わっていくことになってしまう。そこに合理的な説明がつけられるか?
二点目。誰が『メモリーロンド』のゲーム設定を現実に持ち込んだのか?
これは一点目とも繋がってくる。『メモリーロンド』が現実にやってきた理由は、やはり都筑と同様にメールによる影響としか考えられない。となると、そのメールでどの範囲まで現実に介入してくるように設定されているのだろうか。それによっては都筑としての取るべき手段というのも変わってくるというものだ。
第二巻はかなりややこしい内容となっている。どこまでが虚構で、どこからが現実か。それが分からなくなっていく。
しかし確実なのは、現実にやってきた虚構世界の住民達も必死になって生きている。例えそれがゲームのイベントによって運命づけられたものだとしても、最後まで抗い続けるその意思に嘘などあるはずもない。
現実世界において、世界が変わってしまったことに気づいた都筑、または変えてしまった者は、そんな意思と向き合わなくてはいけない。ただ一つのトゥルー……ハッピーエンドを目指して。
それをもぎ取った都筑は、もはや主人公と呼んでいい気がするのはブログ主だけだろうか。