工大生のメモ帳

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【漫画】ジャンケットバンク 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

鏡に答えはない

情報

作者:田中一行

試し読み:ジャンケットバンク 1

ざっくりあらすじ

普通の銀行に勤める普通の新人行員・御手洗暉は、ある日特別業務部審査課という聞き覚えのない部署の上司・宇佐美銭丸に連れられ、銀行の地下にある賭場へと連れてこられた。そこでは大金の揺れ動く非合法ギャンブルが行われていた。

感想などなど

物々交換で生活できた社会はとうの昔に終わりを告げて、貨幣社会となってしまった日本で生まれ育って来ました。紙幣は所詮紙ですが、その紙に価値が生み出されているということを真摯に受け止め、日常生活を送るのに必要な金を稼ぐ日々を過ごしております。

そんな貧乏人の自分にとって、数千万から億という桁の金はお目にかかったことがありません。世界には一時間で数億稼ぐ人間がいるという事実は、どこか遠い世界の夢のようにしか感じられないのです。

それは銀行員・御手洗暉も一緒でした。銀行という大金が動く環境で働いていながら、それは手元を離れた客の金。金はデータ上で揺れ動く数字の値に過ぎないという冷めた感覚をした彼にとって、銀行での仕事はやりがいのない退屈な仕事となりつつあるのでした。

そんな彼に舞い込んだ異動の知らせ。「何かやらかしただろうか?」という心配をする彼を出迎えたのは、額を血で汚した特別業務部審査課という聞き覚えのない部署の上司・宇佐美銭丸であった。

そして連れて行かれる地下の賭場。『特別業務部審査課』というのは、この地下の賭場を管理し審査する業務を請け負う文字通り特別な課だった。この漫画はそんな銀行の地下にある賭場で出会った ”何よりも楽しい勝負を優先する” ギャンブラー真経津晨と、彼がギャンブル勝負の果てでどんな最期を迎えるのか見たい銀行員・御手洗暉によるギャンブル漫画である。

 

本漫画における第一ゲームは『ウラギリスズメ』。

ゲーム内容は至極シンプルで、片方のプレイヤーが二つある箱の片方に「宝石」を隠し、もう片方のプレイヤーが「宝石」が入っている箱を当てる。宝石を隠す「ハイド」側プレイヤーが賭け金を設定し、箱を当てる「チェック」側プレイヤーは、「宝石」を見つけられれば金を得ることができて、外せば失う。「ハイド」と「チェック」は一ラウンドごとに交代し、どちらかの資金が尽きるか、六ラウンド終了まで続いていく。

ただの運ゲーのように思われるが、それを心理戦に昇華させるために、二つの箱はそれぞれ ”堅実のつづら” と ”強欲のつづら” と役割が与えられている。

”堅実のつづら” を「チェック」側が選択した場合は賭け金の半額が加減される。つまり賭け金が百万円だった場合、この ”堅実のつづら” を選択して「宝石」を当てても五十万円しか得られない。逆に外した場合も五十万円しか失わない。

逆に ”強欲のつづら” を「チェック」側が選択した場合は賭け金の全額が加減される。つまり賭け金が百万円だった場合、この ”堅実のつづら” を選択して「宝石」を当てても百万円も得られない。逆に外した場合も百万円も得ることができる。

このゲームで三十九連勝をあげている男・関谷仁に、真経津晨という男が挑んでいく。

強欲のつづらと堅実のつづらという要素により心理戦があるとされてはいるが、結局のところ運の要素が強いのではという気がするブログ主は、ド三流のギャンブラーだった。このゲームにおいて重要なのは、相手に ”強欲のつづら” をここぞという時に選択させること。

三十九連勝もしていながら、そのことが分かっていなかった関谷仁。だから貴様は負けたのだ。

 

まぁ、雑魚戦は置いておこう。

次のゲームは『気分屋ルーシー』

各プレイヤーには五つの面に五つの鍵穴が付いた金庫が配布され、その中にはそれぞれの本人の名前が入った「ハート」が入っている。ゲーム開始前にその金庫を交換し、相手の金庫の各面に最低一箇所の「当たり鍵穴」を設定して返却する。受け取った金庫の当たりを一面ずつ交互に探していく。『相手より先に自分の名前入りハートを金庫の外に出すこと』が勝利条件となっている。

さて、このゲームの面白いポイントは「当たり」を間違えた場合だ。

その場合、金庫を開けるために必要な鍵をルーシーに返して貰う必要がある。その際、ルーシーは少々乱暴に鍵を返却してくることで、手の平に一つ穴が空くこととなるのだ。

……大金を得るためには、それくらいの傷は覚悟してきている変態ばかりの賭場である。そんな説明を受けてもなお、笑顔で振る舞う余裕のある面々ばかりだ。みな狂ってる。先ほどの雑魚とは比べものにならない。

第一巻はそんなゲームの途中――といってもかなり終盤――で終わることになるが、何を考えているか分からない真経津晨に相手取って、振り回されながらも奮闘する獅子神敬一の視点で描かれていく。

相手の性格を利用して、真経津晨に自分の心理を重ね合わさせることで相手の心を打ち砕いていく勝ち確定シーンは快感が大きい。ゲームのテンポもよく、一対一ということもあってか、まだまだ始まったばかりということもあってか、かなりシンプルな内容が多い。これから先の戦いに期待が高まるばかりだ。

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