※ネタバレをしないように書いています。
石造りの海
情報
作者:荒木飛呂彦
ざっくりあらすじ
恋人とドライブ中、交通事故に遭遇した空条徐倫は、弁護士と恋人にはめられて十五年の刑務所暮らしが確定してしまう。そんな彼女の元に、長らく会っていない父親・空条承太郎からペンダントを託される。その中には小さな石が入っていて……
感想などなど
ジョジョシリーズの第六部。そもそもジョジョというのは、ジョースター家の血を引き継ぐ者達による吸血鬼や柱の男や殺人鬼といった輩と戦う話となっている。そもそも部によって大きく雰囲気や舞台が変わる本シリーズ。
そもそも第一部にスタンドなんてなかったし。第三部は世界の命運を賭けてDIOを倒すために、日本からエジプトまで旅をする話だし、第四部は杜王町を舞台にして殺人鬼と戦う話だし(最初はスタンドを使った日常のような感じだったし)。だからこそ第五部の舞台がアメリカの刑務所になったとしても、不思議はない……よね。
ということで舞台は刑務所。主人公のジョジョのフルネームは空条徐倫、そう女性である。かなり異色とも呼べる第六部。始まり方もかなり変化球で、投獄されていた徐倫がマスターベーションしていたところを留置係に見られてしまったことを「死にたい」と後悔するシーンから始まっていく。
まさか、この気が強そうで、鉄格子にムラムラしてしまう女性が主人公か? という疑惑を抱きつつ読み進めると、彼女の肩にはジョースター家特有の星形の痣があって、彼女がジョジョであることが確定する。
そしてそして、彼女はまだ刑が確定した訳ではなく起訴された段階であるらしい。犯した罪の内容は轢き逃げ。結構な重罪である。だが、実のところ彼女は、彼氏が運転する車に乗っていただけで運転などしていない。しかも轢き逃げというよりは、上から死体が降ってきたという説明の方が状況としては相応しい。
つまりは無実の罪で起訴されている。だが状況は最悪だ。車を運転していたはずの彼氏は、その事故が起こる数日前から車を盗まれていたということになっていた。その車を盗んだ犯人が徐倫ということにされ、しかも轢き逃げをしたということに、いつの間にかなっていたのだ。
これからそんな轢き逃げに関する裁判を経て、有罪無罪の罪が確定してからようやく刑務所入りとなる。そんな人生が懸かった裁判を前にして、マスターベーションをする精神的余裕があったということなのだろうか。
だがその余裕にも裏があった。どうやら弁護士との話し合いにより、司法取引が持ちかけられ、罪を認める代わりに刑務所には入らなくて良くなっているようだ。なるほど、罪の重さは金で決まるんだなぁ……。
そうして迎えた裁判。徐倫としては無実で日常に戻りたかったが、それは諦めての罪を認めて刑務所行きを免れるという選択肢を取った。裁判は順調に進んだ……かに見えたが最後の最後でひっくり返る。
徐倫に下された判決は有罪。車の窃盗に殺人の罪により十五年の求刑が下された。
こうして始まる刑務所での脱獄を目指して奮闘する日々。それに父親である承太郎から送られてきたお守りに入っていた石――どうみてもスタンドの矢の切っ先――によりスタンドを発現したことによる数々のバトルの幕開けでもあった。
刑務所という閉鎖空間であるが故、周囲には仲間などいない。例え女性刑務所だと言えども、流血沙汰は日常茶飯事。どいつもこいつも一癖も二癖もある犯罪者達であり、そんな環境で生き残るために他人を蹴落とすことも厭わない精神が構築されていく。
そんな場所で同室となったのはグェスというインコを飼っている女囚人。殺人未遂と放火と仮釈放中の逃走により十二年の刑である。
スタンド使いは惹かれ合うというが、何の因果か、彼女もまたスタンド使いである。
スタンドの名は『グーグー・ドールズ』。対象者を小さくするというもの。シンプルであるがゆえに強力。まだ自身のスタンドを理解できていない徐倫にとって、この戦いは決して楽なものではない。
それでも勝たなければいけない。この刑務所から脱獄するために。