※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
肩に星形の痣と、噛まれたような傷を持つ記憶喪失の男が、壁の目と呼ばれる不自然に隆起した壁の傍に倒れていた。それを偶然にも発見した広瀬康穂は、彼の記憶を辿る手助けをしていく。彼が被っていた帽子から、吉良吉影という名前の男にたどり着くが……。
感想などなど
ジョジョは一応、このジョジョリオンを除いて漫画やアニメで全て見たことがある。ジョジョリオンは完結してからいずれ手を出そうと思っていた訳だが、たまたま読む機会に恵まれた。となると感想を書かずにはいられない。
一応、ジョジョというシリーズについて簡単に説明すると『ジョースター家という一族の物語』であり、それぞれ世代が変わっていくごとに部が切り替わっていく。例えば第一部ではジョナサン・ジョースターが主人公で、第二部ではジョナサンの孫であるジョセフ・ジョースターが、第三部ではジョセフの息子である空条承太郎……というように。第七部からはパラレルワールド(この表現は不適切かもしれないが)ということでややこしくなるが、どちらにせよジョースター家が登場し活躍するということに変わりない。
そんなジョースター家は代々、星形の痣を持つという身体的特徴を引き継いでおり、ジョジョリオンの主人公と思われる記憶喪失の男にも、この特徴が見受けられることから、おそらくジョースター家の関係者なのだろう。
また、ジョジョを最も特徴付けているものとして、幽波紋(=スタンド)と呼ばれる超能力設定がある。それぞれ個人が固有のスタンドを持ち、能力もまた、それぞれで固有のものを要し、能力を駆使して戦っていく。スタンド名は洋楽の楽曲名から取っていたり、能力によっては進化するものがあったりと、語りたいことは山ほどあるが、それらは置いておこう。
とりあえず、この第八部「ジョジョリオン」も例外ではなく、スタンド同士のバトルが繰り広げられていく。
となると気になるのは主人公の男が持っているスタンドであるはずだ。スタンド名は『ソフト&ウェット』……柔らかくて、そして濡れている。アメリカのミュージシャンであるプリンスがデビューアルバムで発表した楽曲(Wikiより)。
肝心の能力は、『自身が飛ばした「シャボン玉」が触れた場所から「何か」を奪う』というもの。第一話では勘違いにより襲ってきた東方常秀に「シャボン玉」を触れさせ、「視力」を奪うことで逃げ延びている。また、第二話にて病院から抜け出す際に、監視する警官の「水分」を奪い水飲み場に移動させることで、監視の目を外し、病院から抜け出したり……というように能力を利用している。
肝心の戦闘においても、この能力を駆使してピンチを切り抜けていくことになる。いつも通りのジョジョだ。
ストーリーに関しては残念ながら、何も語ることができない。なにせこの第一巻において判明した事実が皆無だからである。とりあえず記憶喪失の男は、吉良吉影という名前で帽子を買ったらしい。しかし、その吉良吉影の住所に向かってみれば、意味の分からないスタンド攻撃を食らってしまったではないか。
しかも吉良吉影は、女性を縛ったり拘束した画像を収拾して保管しているらしく、第四部を読んでいた人間などは「パラレルでも変われないんやな……」とか思ってしまう。だが主人公にはそんな記憶などない。「俺は本当に吉良吉影なのか?」と考える。しかし考える暇もなくスタンド攻撃は絶え間なく行われていく。
敵の能力は、対象者の腕や脚に傷をつけると、傷ついた箇所に付随した手や脚の甲に印を浮かび上がらせ、印が浮かんだ手足の自由を奪うというもの。例えば、右脚に傷をつけたとすると、右脚の甲の部分に奇妙な印が浮かび上がる。そうなると、この右脚の自由は利かなくなり、敵が制御することができるようになる。
最初はただ意味不明だった敵の能力が分かっていく過程というのは、やはりジョジョの醍醐味であろう。「いや、上で説明してしまってるやん」と言われるかもしれないが、これが全てな訳がないのだ。それぞれのスタンドには発動させるための条件などがあり、それを徐々に理解していくことが重要になっていく。
しかもそこから勝たなければいけない。負けは死を意味する。
絶望的な状況も、とっさの機転で乗り越えていく過程は先が読めない。それに加えて、これまでのシリーズを読んでいた者なら気になるであろう『吉良吉影』という名前や、『東方』という名字、冒頭で記載された「呪い」を解く物語という文言の意味など、否が応でも期待せずにはいられない設定が数多描かれていく。
第一巻の盛り上がりという意味では最高なのではないだろうか?