※ネタバレをしないように書いています。
釣りで繋がる姉妹
情報
作者:うちのまいこ
試し読み:スローループ 6巻
ざっくりあらすじ
シーズンオフになっても釣りはやめられない。鯉釣りにカマス釣り、小春の地元での屋内釣りなど、いくらでも釣りはできる! 新米姉妹の釣り日常も第六巻。
感想などなど
冬。
アウトドア系の趣味はシーズンオフということで、夏には賑わっていた海は、どこも閑散としている。その理由は挙げていけばきりがない。冬の凍てつく寒さの中、長い時間待っていることが多い釣りは辛いということ。海は冷たく、落ちてしまえばすぐさま命の危険に直結すること……などなど。
第一巻、まだ冷たい海にスクール水着で飛び込もうとした小春の行動は、ギャグ風に描かれているとはいえ、超絶危険行為であるということを肝に銘じておく必要がある(良い子は真似しないように)。
冬は釣り人にとって厳しい季節、ということは伝わっただろうか。となると冬に釣り人は何をするのか?
釣りである。
作中。冬はあまり釣れやすい魚がないという話題から、「じゃあ釣り人って冬になにやってるの?」と小春に聞かれたひよりは、死んだ目で「釣りかな」と答えている。釣れないからといって、釣りをやめるような人は、釣りなんてとうにやめているのかもしれない。
冬は釣り人に厳しい季節だと知っていながら、釣りをするしかない釣り人達。冬とはいえど釣ることのできる魚は存在する。例えば、四巻最初の釣りは、初めて小春が釣りに挑戦し見事に坊主だった管理釣り場での一幕となっている。
管理釣り場ではペレットで魚が育てられているため、ペレットと似たような色をしたオリーブやブラウンが釣れやすいという学びを得つつ、しかしながらそんな固定観念が良くない場合もあるという知見も得つつ、小春のリベンジを見届けた。
そんな釣り日常の最中、やってくるのはひよりの誕生日。管理釣り場で大量につり上げたニジマスのお刺身による手巻き寿司が振る舞われ、ついでにひよりが誕生日に釣り上げたカマスが炙られていく。
これがまた美味そうなのである。小春とひより、後で合流する恋ちゃんの三人での誕生日パーティの幸せな光景は、何となく想像できるのではないだろうか。
この第六巻において、小春の過去にも焦点が当てられていく。ひよりとは違い、再婚のために地元を離れて引っ越してきた小春にとって、唯一といってもいい友人・土屋さんとの想い出や、今とは違い寂しげな小春の表情……この再婚を経て、小春の心境が大きく変わっていることが良く分かる内容となっている。
あらすじとしては、川での鯉釣りをすることになった小春、ひより、恋先生といったいつものメンバー。「生臭い」「泥臭い」といった理由で、釣った鯉を逃がすという彼女らに対し、ただ一人「鯉は美味しい」と語る小春が、地元にある鯉料理店を紹介するという流れだ。
ただ小春の地元の鯉料理を食べに行くというのでは面白くない。せっかくなので、小春の旧友・土屋さんも誘い、釣り堀での釣りに勤しもうということになった。土屋さんは古くからの小春の友達であり、身体が弱い頃から、母親と弟を亡くした時も知っている。
彼女が抱えていた心の闇、寂しさをどうにかしたいと思いながら、どうすることもできなかったという想いが渦巻いている彼女にとって、「釣り」という趣味に興じる小春が不思議で、「無理をしているのではないか?」「無理矢理付き合わされているのではないか?」という疑念を抱いていたようだ。
だからこそ、初対面のひよりに対して、直球に「あんたに合わせて無理してるんじゃないの?」と質問をぶつける土屋さん。彼女がこれまで見てきた小春は、他人から嫌われたくないがために、内心を悟られないように笑っている子……遠く離れた地でも、そのように無理をしているのであれば、どうにかしてあげたいという彼女なりの優しさだ。
そんな土屋さんの心配を露知らず、ただ楽しそうに幸せそうに釣りに興じる小春の笑顔は、無理をしている笑顔に見えるだろうか。少なくともブログ主には見えない。その笑顔が土屋さんの心配を、少しでも和らげてくれれば良い。
小春には笑顔が似合う。スローループで見ている小春は、いつも笑顔で、それはきっとこれからもそうだろう。
いい話だった。どうかまだまだ連載が続いて欲しい。