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ダブルブリッドⅡ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

死の恐怖を忘れるなかれ

情報

作者:中村恵里加

イラスト:藤倉和音

ざっくりあらすじ

”怪” と人、二つの血を持つダブルブリッドである片倉優樹は、事件から三週間が経過して、ようやく平穏な日々を取り戻しつつあった。そんなある日、部下である山崎太一朗との飲み会に行った帰り、血を吸われた女性を見かける。

どうやらオーストリアから ”怪” の吸血鬼がやって来ているらしい。国から捕縛の命令は受けていないが……。

感想などなど

さて、優樹はただの ”怪” という訳ではなく、人と怪との子供であるらしい。そういった怪と人の混血をダブルブリッドと言い、世界で確認されているのは優樹と高倉の二人のみ。

怪について研究したいアメリカや科学者が口から手が出るほど欲している存在であるが故、第一巻のような事件が起きたわけです。とりあえず狂った科学者はどこぞの怪が皆殺しにしたため、優樹が望んだ方法ではないものの、当面の間、危険は去ったと言って良いでしょう。

というわけで。優樹と太一朗は第六課に戻り、平凡で退屈な時間へと戻っていく……と良かったんだけどなぁ。

 

とりあえず読み終えた感想を一言で言うと、『進展があまりないな……』というものです。何か新しいことが分かったかと聞かれれば分からず、何か知り合いが増えたなという話です。といっても面白くない訳ではないので御安心を。

まず物語の始まりは優樹と太一朗の飲み会から始まっていきます。毎日酒を飲まないと死ぬと自称している優樹が酒に酔うはずもなく、一方普通の人間である太一朗は酒に飲まれて千鳥足の酔っ払いオジサンへ……。

その様子を外から見ると、十四歳の少女が大人を介抱しているかのよう。実年齢二十四歳の優樹は、そう見られることに慣れていますし、上司として後輩を助ける様は頼れる素晴らしい上司です。

そんな帰り道、公園で倒れて寝ている女性を助けます。優樹は首筋が渇いて固まった血で汚れており、その血や倒れていた理由に関する前後の記憶がない。

……事件の香りが。

 

そんな次の日に『オーストリアから日本にやって来た吸血鬼』の話を聞きます。読者も優樹もそこで察します。

あぁ、今回の敵はこいつだな……と。

しかし、どうやら捕縛や捕殺の命令は出ないようです。怪の人権(?)が法律上は保証されている日本では、ただそこにいるというだけですぐ殺すことはできません。この辺り、法治国家で死刑制度のある日本らしい考え方です。

オーストリアでは怪というだけで殺戮対象らしいので。

「いや、血が吸われた奴おるやん」と思われた方、ここで大切なのは被害者が生きており、その上、被害を受けたという記憶がない事実です。犯罪というのはバレなければ犯罪ではないのでした。

まぁ、オーストリアの ”怪” 絶対殺す集団が日本にやって来たり、吸血鬼が仲間の匂いを嗅ぎつけて優樹に話しかけたりしますが、基本的に平和……あれ、平和って何だっけ?

第一巻のような血の飛び散る戦闘は最終版にしか行われません。序盤で血の出るシーンがあるにはあるのですが、ちょっと耳に銃弾を撃ち込まれた事故のようなものですし、 ”怪” からしてみれば一晩もせずに治るもの。負傷が負傷として機能していない気がします。

 

今回の物語で注目すべきは優樹の過去と、世界における怪の扱いでしょうか。

第一巻ではオーストラリアから密輸される怪が登場しました。また、優樹は実験素材としてアメリカに引き渡される寸前でした。日本にやって来た吸血鬼を殺すために、わざわざやって来た人もいます。

これが世界における怪の扱いです。嫌われているとは言え、公職に就き働いている優樹は世界的に見れば以上で異端な存在と言えるでしょう。そのギャップを改めて認識させられました。

そして、優樹の過去というワードが本作では度々登場します。太一朗に触れられそうになったとき、吸血鬼に触れられそうになったとき、先生(と優樹が読んでいる男)の手紙を読んでいるとき、血を吸われているとき……何度も何度もフラッシュバックする。

人間でいうところのトラウマという奴です。例え怪の血が混じっているとは言え、彼女は人間なんだなぁと感じさせてくれる。そして、そのトラウマを乗り越えるために……太一朗に何ができる?

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