※ネタバレをしないように書いています。
キリオドラッグ、開店です!
情報
作者:ケンノジ
イラスト:松うに
試し読み:チート薬師のスローライフ〜異世界に作ろうドラッグストア〜 6(ブレイブ文庫)
ざっくりあらすじ
町おこしもかねて冒険者が野宿するのに便利なキャンプセットの開発に携わったり、ビビの友人である風の精霊シルヴィーンを助けたり、慌ただしいキリオドラッグの日常。
感想などなど
皆さんは野宿をした経験はあるだろうか。
キャンプではそれなりの道具を準備し、野宿することを目的としている。準備を怠った場合の教訓は、「水曜どうでしょう」の「ヨーロッパ・リベンジ」企画にて、「ここをキャンプ地とする」と宣言してドイツの路上で寝泊まりする様子を見て学んだ。
タレント陣は車、ディレクター陣はテントという振り分けであった。車側の方は、車の鍵をディレクターが持っておりエンジンをかけることができず、さらに窓が少しだけ開いていたため、寒く辛い夜を過ごした。
テント側もテント側で、夏用シェラフ(夏用の寝袋。暖かくない)で寝ようとしたため、かなりつらい夜を過ごした模様。「これ以上北に行ったら僕は死にます」というディレクターの名言は心に刻んでおこう。
……「水曜どうでしょう」を知らない人を置いてけぼりにしてしまったが、言いたいことは、宿が充実した現代において、そんな野宿の経験は例外中の例外である。
しかし、キリオのいる異世界における野宿とは、ディレクター陣が経験するようなものよりも辛いものに違いない。
なにせ森には魔獣が跋扈している。常に警戒しなければ命とりとなる。魔獣コナーズがどれほどの大発明だったかは想像すれば分かることである。
そして何よりこの世界には、”テント” がなかった。
テント。
野宿において敵となる雨風を凌ぐことができる。これの有無で、野宿の快適性は天と地ほどの差がある。想像して欲しい。突発的な雨が降った場合を、風を遮る壁がない状態を、虫にたかられる惨状を。
そもそもこの世界の人たちにはテントのような、簡易的に建てることができて、持ち運びの楽なものを作る技術がなかったようだ。簡単に建てられるようにすれば、それだけ簡単に壊れるということを意味し、持ち運びが楽=軽いということにすれば、それだけ貧弱な素材となる。
それらを一気に解消してしまう【プロテクトキュア:塗った物の強度を上げられる。ツヤも出る】という薬の登場により、状況は一変。耐久性を向上させつつ、軽量性と簡易性を両立させることに成功。
薬一つとってしても、デメリットの一つもなく『塗っただけ』という労力に見合わない効果を発揮するということの恐ろしいと思う。こうして出来上がったテントは、コストもかなり抑えつつ、量産も問題ないという町おこしにぴったりな商品と仕上がった。
このテントは爆発的に冒険者の間で売れたことは言うまでもない。
この第六巻ではさらに新キャラが増える。風の精霊シルヴィーンという、恥ずかしがりやであまり姿を見せない精霊だ。ちなみにビビの友人らしい。
この世界において精霊というのは、かなり神に近しい存在であるらしく、その地域での信仰心の高さに応じて、持つ力の大きさが異なってくる。長らく人に信仰されていなかったビビの力はかなり弱く、湖周辺は魔獣が多いことからも分かっていただけるだろう。
精霊シルヴィーンも、信仰の力が弱まっていた。森や谷を抜けていく風により夏も涼しく過ごすことができていたのは、彼女のおかげだったのだが、その風が止んでしまった。それにより、森に住むエルフたちの間で熱中症が流行していたほどだ。
そんな危機的状況を脱するため、風の精霊を助けてあげたキリオドラッグ。こうして仲間が増えていくわけである。それにより頭を抱える問題も増えていくような気がするが、ブラック企業よりもは数千倍マシだと思う。
キリオのスローライフはまだまだ終わらない。