※ネタバレをしないように書いています。
消えぬ炎を宿して
情報
作者:藤本タツキ
試し読み:ファイアパンチ 2
ざっくりあらすじ
敵であるドマと会敵するも、他の祝福者達の介入もあり、拘束されてしまったアグニ。死なないアグニを処分すべく海へ運ぶが、道中で謎の女・トガタに助けられる。
感想などなど
この世界では正気を保っている者から死んでいく。死が本当の意味で救いになる世界が救われるには、もう滅びるしかない気がする。
村を焼き滅ぼしたアグニの敵・ドマは、世にも珍しい正気を保った英雄だった。世間的には正義に生きる男だったらしい。
そもそも村を焼いたのは野蛮な食人村だと思ったからだったことが思い出される。村を焼いた裏では、学校を作って勉強を教えたりしていたようだ。
そんな彼にとってこの世界はクソ過ぎる。
アグニと会敵したドマは、「どうしたら私を許す」「私が死ぬ以外ならなんでもする」と泣きそうな顔で言うのだ。
それは悪役の顔ではない。悩み苦しむ救われたい人間の顔であった。さて、アグニはどうするか?
結論から言うと、アグニはドマを殺さなかった。アグニの再生能力の高さがバレていなかった警戒の薄い今が、最高のチャンスだったというのに。
周囲にいた祝福者達の猛攻もあり、頭を落とされ耐火布でくるまれたアグニ。再生能力が強いといえど、不死ではないらしく、海に沈めれば酸素がないとかで再生能力が弱まって死ぬらしい。というわけで海という処刑場に向かう列車に連れ込まれたアグニであった……。
話は変わるが、漫画とかで列車でのバトルが個人的には好きだ。最近だと『ゴールデンカムイ』の最終章とか、映画が大流行した『鬼滅の刃』における無限列車編とか。『ワンピース』でもロビンを助けるために乗り込んでCPと戦っている。
この『ファイアパンチ』でも、列車バトルはあった。ただ戦うのはアグニではない。一巻のラストで映画愛を語った謎の人物・トガタである。
「映画を撮る」と息巻いて、カメラを片手に無双するトガタ。何度撃たれても立ち上がる泥臭いアグニとは違い、画が映えるスタリッシュな動きで葬っていく。アグニをあっさりと無力化した面々が、しかも再生能力だった面々が、あっさりと殺されていくのは衝撃的である。
そんな超強い彼女の目的は、映画の主人公であるアグニを助けること。はっきり言って意味が分からない。やっぱり正気を保った者ほど死んでいくのは正しい、狂った人間が一番強いということが証明された。
ここから先はドグマによる演出が盛り込まれたアグニをエンタメ化した映画……のドキュメンタリーである。
悪だと思っていたドマの裏の顔を知り、復讐の炎は消えたアグニ。そんな彼の復讐心を煽って煽って煽って、映える戦闘シーンが撮れるように演技指導も欠かさない。さらにドマを殺せるように訓練し、ただ燃えるだけの再生能力者が、ベヘムドルクという一国を潰せる可能性が出てきてしまった。
ベヘムドルク……電気を出せる祝福者は発電機として拘束されるなど、有益な能力者は一人残らず薪として使われる。危険な能力者は処刑される。そこに生きる人々のためだけに、数多くの犠牲が積み重なったユートピアにアグニが侵攻を開始する。
復習に燃えるアグニは、彼らを救う神になるのか。
本編は第三巻からスタート。上映をお楽しみに。