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【漫画】よふかしのうた14 感想

【前:第十三巻】【第一巻】【次:第十五巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた(14)

ざっくりあらすじ

マヒルの行き先が北海道だと分かった夜守は、修学旅行の行き先が北海道だったことを思い出し、久しぶりに通学することにするが……。

感想などなど

修学旅行。

父親に「学問を修める旅行だから遊び感覚で行くな」と言われたが、どう考えても思い出作りの一環だろと思う。実際、修学旅行での経験は未だに忘れていないし、自分の人間性を培う一端を担っている。

学校に行く意味なんてないという人もいるが、意味なんてものは後から着いてくるように感じる。そもそも何かをするにあたって、意味を見いださなければならないという考え自体がどうなのだろうか。

……とまぁ、ブログ主の思想をぶちまけても仕方がない。ここで考えるべきは、本作における主人公・夜守やマヒル達の思想である。

第一巻から長らく昼夜逆転&不登校生活を過ごしてきた夜守。彼はそのきっかけを、同級生に告白されて振った後の対応が面倒くさくなったと語っている。顔も良いし、頭も良い。しかも明るく気遣いもできるクラスの人気者として立ち回っていたところから一転、全てが嫌になってしまった彼は、夜に居場所を見いだした。

そんな彼の数少ない友人・マヒルとの関係が拗れてしまったのは、吸血鬼との恋愛模様によるものなのだが、この一連の状況に関して夜守は面倒くさいと感じていないようだ。彼にとってマヒルとの関係は、何を差し置いてでも優先したい大事なものということなのだろう。

そんな大事なもののため、夜守は学校へ再び通い始めることを決意することとなる。

第十四巻の冒頭は、これまで登場してこなかった夜守と母親との会話が描かれていく。「最近学校に行ってないんだってね」という母親の質問に対し、「面倒くさくなって」と言い訳すらしない息子。それを笑い飛ばす母親。

この環境が今の夜守を作り出したのかと思うと、色々と感慨深いものがある一幕ではないだろうか。大人としては学校に行かせるべきなのだろうが、夜守という個人と向き合った結果がこの選択ならば、それを部外者が責め立てるべきではないだろう。

 

ちょっと状況を整理しよう。

そもそもマヒルが人間として拗れたのは、誰からも愛された兄が事故死し、その死を受け入れられなかった母親が、マヒルを兄であるかのように扱ったことが原因である。それ以来、自分の心を殺して兄として振る舞った彼の心労は計り知れない。

そんな彼の苦しみを理解し、優しく受け入れたのが星見キクである。そんな彼女の呪縛からマヒルを解放しろと迫ったのが第十三巻で、それらは全てのらりくらりとかわされた。吸血鬼同士の戦いにおいて重要になる透過能力について、色々と説明がされたのも同じく十三巻である。

さて、そんな大事な夜を経て、何も手がかりが得られなかったと落胆した次の日、マヒルは学校にやって来て、アキラに向かって修学旅行に行く宣言をした。その情報を聞いたため、夜守は学校に通って修学旅行に行くことを決意することとなる。

ここで考えなければならないのは、『どうしてマヒルはわざわざ修学旅行に行く』と宣言したのか。まさか学校に戻ってきて修学旅行に行くという話ではないだろう。この宣言の真意を知るためには、夜守とマヒルの過去を知る必要があった。

二人の回想を読んでいくと、二人は友達になるべくしてなったと理解できるし、互いに失ってはいけない重要な関係性であったことが突きつけられる。夜守とマヒルは是が非でも仲直りして欲しい……そう思える内容であった。

 

第十三巻までを読んで星見キクとマヒルについて、かなり解像度が上がったと思われるかもしれない。しかしそれは誤解だ。我々は彼と彼女のことを何一つとして理解できていない。

理解できたという慢心は、人との関係性を大きくこじらせることとなる。他人を理解できたと思うべきではない。歩み寄りたいと思い続けることが大事なのではないだろうか。

色々と難しい第十四巻であった。

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