※ネタバレをしないように書いています。
メイドさんの食事風景
情報
作者:前屋進
試し読み:メイドさんは食べるだけ (4)
ざっくりあらすじ
英国でお屋敷のメイドとして働いていたスズメは、倒壊したお屋敷が直るまでの約一年間を日本で過ごすことになる。そんな彼女の日本でのおいしい日常。
感想などなど
「白湯」
朝起きて白湯を飲むだけの回。
ちなみに白湯とは、お水を温めたものである。「たゆ」「とここ」「ほや」といった擬音が印象的だ。体温に近いので一日の始まりに飲むと血の巡りが良くなって目が覚めるという学びを得つつ、第四巻は始まっていく。
「新米」
実家の近くに精米所がある。糠漬けをしたりしていたので糠を買いに行ったり、玄米も売っていたりしたので、母親の健康志向が著しく高くなっていた期間には玄米を食べていたりする。
近所の田んぼには、重く垂れさがった稲が風に揺られる様を見た。大人になって地元を出てしまった今、そのような光景は久しく見ていない。精米所ってどこにあるのかを調べようとしたこともない。
そんな稲を始めてみたというスズメのために、土鍋で新米を炊いて見せるおばあ様。家庭科で習い役に立ったことのない「はじめちょろちょろ中ぱっぱ赤子泣いてもふた取るな」というお米を炊くときのコツを再履修しつつ、炊飯器ではお目にかかれないオコゲに舌鼓を打つスズメ。
そういえばオコゲを食べたことがない。いずれは食べたいものだ。
「カップラーメン」
台風がやって来た。
日本で生まれ育ったので、台風に対して感じるのは恐怖よりも面倒くささである。近所の川が増水しないかを気にしつつ、食料をある程度備蓄しておき、停電になったとしても死なない程度の準備と覚悟をもって台風を待つ。
スズメも例外ではない。
停電をはじめとした災害に備えて色々と準備していたのだが、一人で部屋の隅で丸まっていた。それでもやはり怖くなって、逃げ込んだ先は隣の隣の部屋に住む杏さんのところであった。
そんな彼女を温かく迎え入れ、カップラーメンをご馳走してくれた杏さん。お湯を注いで三分でできる手軽さ、たまに食いたくなる謎肉。ちなみに自分が一番好きなのはシーフードだ。
「カレー」
「夏はもう……いないんでしょうか……?」というスズメの表現が好きだ。
つまり夏は過ぎ去り秋となったという訳で、リコッタと小松さんを呼び集め、「夏さよならカレーを作る」というイベントを始めたスズメ。この何事も楽しむ生き方と行動力は見習うべきかもしれない。
夏さよならカレーの具材は、トマトにオクラ、茄子にトウモロコシにズッキーニに枝豆と具沢山。なるほど、とにかく夏野菜がいっぱいという訳だ。これはビールが欲しくなる。
オシャレな回であった。
「焼き芋」
夏にはさよならをしたので、秋の料理にご挨拶としゃれこもう。
というわけで頂くのは焼き芋。「いしやぁぁきぃぃもぉぉ」と唄いながら移動する屋台で、出来立てをかじりつくのは秋が来たという感じがして好きだ。実家で良く買っていた。
漫画で白黒ではあるが、蜜色の光輝く焼き芋の断面が描かれている。これが実に美味そうである。こういう彼女の表情を見るために、この漫画を買っているのだろう。
「ぶどう」
近所の庭でなっているブドウを眺めていると、その家の住民に分けてもらえることに。害虫を避けたり、日焼けしないようにするためにブドウにかけられた紙袋を見て、「お洋服みたいでかわいい」というスズメの感性が好きだ。そして食べる時も、ブドウの皮をお洋服と表現するのが好きだ。
久しくブドウは食べていないが、食べたくなってくる回であった。
「銀杏」
金色のイチョウの中を、二人のメイドが歩いている。絵になるなぁと思いつつ、リコッタが語る「イチョウの木は恐竜時代から生えていた」という話を楽しむ。そのついでに知った「イチョウの種(銀杏)は食べられる」という話から、スーパーで買った銀杏を食べる二人。
そういえば銀杏を食べたことがない。調理の仕方も知らなかったので、この漫画で学んでおこう。調理方法は「封筒に入れてレンジでチン」という嘘みたいなものらしい。知らなかった……これなら酔っぱらってても作れる。
ついでに銀杏はモチモチらしい。銀杏の知識ゼロの状態から、一気に百くらい学んだ気がする。
「ハロウィン」
イギリスのハロウィンでは、家の外にかぼちゃを置いておくと、それを目印に子供がお菓子を貰いに来るというシステムであるらしい。そのためスズメもばっちり用意していた訳だが、残念なことに日本にはそこまで浸透していないのが現実……やって来たのは台風の時にお世話になった杏さんのみ。
杏さんは大学で魔女のコスプレをしたらしく、その延長でスズメさんにも色々とお裾分け。その一環で猫耳メイド・スズメが爆誕。可愛いんだわこれが。
「味噌汁」
味噌汁は禿に効く……かもしれない。正確には「ワカメを食べると髪が伸びる」という科学的な根拠のない言い伝えがあるということらしい。自分で散髪しようとして失敗したスズメが、早く髪を伸ばすためにワカメを食べる姿は可愛らしい。
しかし、髪はすぐに生えるものではない。
変な髪型になったスズメを助けるべく、参上したリコッタ。彼女の技術によりいつものような可愛いスズメに戻ってくれた。ついでにいろんな髪型のスズメが見られたので、満足度の高い回となっている。
「コーンスープ」
自販機でたまに見かけるあったかいコーンスープの缶を飲むスズメ。あれ、手に持っているだけでもあったかいし、飲めば体の中から温まるから寒い冬にはぴったりなのだ。
……第四巻の始まりは秋、もう冬の寒さが近づきつつあるのだなぁ……と時の流れる速さを痛感させられる。あらすじにも書いてある通り、屋敷が直るまでの一年間でスズメの日本生活は終わりを告げる。
もしや終わりが近いのか……寒さと同時に寂しさも押し寄せる回であった。
「山登り」
秋の山を楽しむには登るのが一番。苦労して登った先で見る景色と、そこで食べるお弁当は、きっと最高に美味しいことだろう。幸せな一幕であった。