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ログ・ホライズン5 アキバの街の日曜日 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻】

※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 5 アキバの街の日曜日

ざっくりあらすじ

ゴブリンの襲来を跳ね返したアキバの街の冒険者達は、戦いの疲れを癒し休日を過ごしていた。ただ〈円卓会議〉の参謀であるシロエに休日などはなく、天秤祭が開催されることが決まったことで忙しさは苛烈を極めていた。

感想などなど

平和は戦争と戦争の間に過ぎず、裏では次の戦争に備えて静かな戦争が繰り広げられているそうな。まぁ、そんなこと言われても、一般人には気づきようがない。この第五巻はそういう話であり、シロエのどこか賑やかな休日の話でもある。

第四巻は壮絶だが、圧倒的な力でゴブリンの集団を蹴散らした。大地人達との関係性も当初の予定よりも良好に築けたと言っていいのではないだろうか。姫がアキバの街で住むようになり、遠方から商売の匂いを嗅ぎつけた商人も多数訪れるようになり、かなり活気づくようになっている。

しかし、それは良い面ばかりではない。人が増えるということは、それほど面倒なことも起こりやすい。

例えば。

大地人には厳しい身分制度というものが存在する。貴族が頂点に立ち、平民は識字率も低くまともな教育も受けられていない。まぁ、日本人の教育の水準が高すぎるということもあるが、それにしたってこの世界は、身分により生まれながらに存在する格差社会というものが色濃い。

だからこそ貴族たちはアキバに来て困惑する。貴族だからという理由で特別扱いなどされず、皆が平等に接してくる。距離感も妙に近い。そのことが気に障る貴族というのも中にはいるのだ。

それにより起こる小さな問題の数々。それだけならばまだ可愛らしいもので、人々の中には悪いことを考える人だっていて、このアキバという街によからぬ感情を抱いている者だっているということを理解すべきであろう。

 

そんな状況ではあるが、冒険者たちは割と楽しく過ごしていた。そのためか『天秤祭』なる祭の開催もすんなりと決まった。大災害が起きてすぐの頃とは比べものにならないレベルの賑わいを見せる人々の熱量は留まることを知らず、自らで商品を作って販売するような商売も盛んにおこなわれるようになった現在、それぞれが自らの宣伝したい商品というものを抱えており、その宣伝の場として祭りが開催されることとなったらしい。

例えば作った服を魅せる場としてのファッションショー、試作品のような数のあまりないものも並べて売ることができるような市場、各国のお偉い方を集めた晩餐会……やると決まれば次々に決まっていく展示やイベントの数々。

そのために動きだす〈円卓会議〉。やるべき仕事は多い。祭りということは警備も決めなければいけない。遠くから来た商人が荷物を置いたりする倉庫の準備だって必要となる。露店やイベントをする者達の承認、時間や場所の管理などしっかりとした体制を設けなければ混乱の元となりそうな箇所は、システムを構築しスムーズに回るようにする工夫を凝らす。

全てシロエ……という訳ではなく、他ギルドのリーダーなどが手分けして作業を行い、皆目に疲労が見え始めた。

だが、祭当日となれば話は変わる。これまでの疲労が嘘のように、皆がどんちゃん騒ぎ、物欲に身を任せた買い物に精を出した。当日の見回りなどの仕事はあるが、それも楽しい仕事となる。

シロエへの好意が隠しきれていないアカツキや、まだ自身の想いにすら気付けていないミノリなど可愛らしいヒロイン達との絡みしかり、その他成立しそうなカップル達の動向も目が離せない。

 

……となって欲しかった。

敵は祭りだからという理由で攻撃をやめることはない。むしろ祭の季節はチャンスであると言わんばかりに、しかも巧妙な形で攻撃をしてきた。

想像して欲しい。あなたの許容量を超える仕事が持ち込まれた時、あなたはどうなるか? きっと壊れる。ブラック企業が人を壊す時に使う手口である。

それを敵が使ってきた。祭に際して、許容量を超えるようなハプニングを各地で偶発させることで、祭そのものの失敗を目論む者が現れたのだ。

え? その程度? と侮ることなかれ。冒険者として大地人と良好な関係を築けたとは言ってもまだそれは序の口。関係性の浅さは疑いようもなく、商人との関係もまだまだ未発達。これからという矢先に出鼻をくじかれてはアキバの街の将来は危うい。

地味だがとても効率的な攻撃である。しかも攻撃が攻撃と分かりにくいのが特にいい。全体の状況を把握しているような者にしか気づくことは叶わない。正しく普通に生きている一般人には気づくことのできないような戦争である。

その戦争の行方はいかに、そして顔を出す黒幕とは。平和と危険が表裏一体の第五巻であった。

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