工大生のメモ帳

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ログ・ホライズン4 ゲームの終わり(下) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 4 ゲームの終わり(下)

ざっくりあらすじ

突如として現れた一万五千はいるかと思われるゴブリンの軍勢が、大陸を横断し侵略を開始した。城壁を持たない弱い街や村から襲われると思われ、領主会議では責任の押し付け合いが行われていた。

感想などなど

世界共通の敵が現れた時、きっと世界が一致団結して戦うことができる。そんな希望はこの作品には当てはまらないらしい。惚れ惚れするような美しい良心を持った者もいるが、そういった者が世界を動かす力を持っているとは限らない。

ゴブリン。レベルは低く、新人でも倒すことができる。だがゴブリン上位種が現れたり、膨大とも思える数を相手取った時、倒される可能性だってある。それにこの世界は、冒険者のように戦闘力を持ちつつ、死なず、義務教育という大層な制度もない。

冒険者を基準に物事を考えてはいけない。

おそらくだが冒険者達が手を取り合って戦えば、一万という数に加え、上位種の存在も確認されている軍勢でさえ討ち滅ぼせる。領主会議の面々も、それを期待していたようだ。

冒険者に適当な報償でも渡せばいい。騎士の位でも上げてはどうか? と。

だが冒険者だって死ぬことに関してリスクがない訳ではない。第三巻で明かされた記憶の消失の可能性。「間違いであって欲しい」というシロエの予想はあえなく裏切られ、二回死を経験した者が、飼っていたはずの猫の名前と姿がどうしても思い出せないという実例が報告されてしまった。

失う記憶はどうやらランダムであるらしい。もしこのまま死を三回、四回と繰り返した時、果たしてどれほどの記憶が残っているのだろうか? そのようなリスクを抱えた状態で、適当な責任転嫁によってゴブリン退治を依頼されたのでは、たまったものではない。

そもそも冒険者は自由だ。〈円卓会議〉という組織はできたかもしれないが、アキバの街に住む冒険者達を束縛や命令することなどできない。まして国が持っているような軍隊など持ち合わせていないのだ。

それだというのに、領主達は自分達にとって不利な情報はひた隠しにしつつ、冒険者達は戦うべきだと声を荒げた。なぜ人々のために戦わないのか? 大地を救うための責務を放棄するのか? と。

【海洋機構】ミチタカは思わず声を荒げる。

「ふざけるなっ」

一方的に扱われるだけの存在になり下がることだけは避けたかった。冒険者達に全てを任せるというのは、〈円卓会議〉の面々を省いた者達で話し合い、示し合わせた内容であるという事実を、シロエ達は知っている。

大地人との関係性を決定づける舌戦が始まる。

といってもそんな戦いは一人の姫の登場により、あっさりと幕を閉じた。クラスティと仲良くティータイムを嗜み、素晴らしく美しい容姿でありつつ、怠惰をこよなく愛するレイネシア姫である。

彼女は会議に颯爽と割って入り、恐怖と緊張で声と肩を震わせつつ、「自らアキバの街へと赴き協力を仰ぐ」と宣言したのだ。一国の姫が他国の領地に赴き、直接協力を仰ぐという行動の重さが、冒険者と大地人との関係を決定づけたと言っていいだろう。

 

そんなことは露知らず、前線では新人達が戦っていた。戦闘訓練を積んだとは言え、尽きぬことのない数の多い敵からの攻撃に、気力と体力、集中力にMPが尽きていく。いつでも帰還魔法でアキバの街に戻ることはできる……それでも戦場に立ち続けたのは、お世話になった大地人を守りたいというだけのものだった。

もはや助けることに利益や理屈など存在しない。ただただ自由に生きることの許された冒険者にとって、助けるという選択肢を選ぶことも自由なのだ。

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