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ログ・ホライズン7 供贄の黄金 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ゲームみたいな異世界

情報

作者:橙乃ままれ

イラスト:ハラカズヒロ

試し読み:ログ・ホライズン 7 供贄の黄金

ざっくりあらすじ

シロエは、八兆の金貨を求めて北の大地に旅立ったが、そこで大規模戦闘の予告を受ける。アキバには頼れない状況で、仲間を集め戦いに臨むが……

感想などなど

ゲームにはゲームだからこそ許されるお約束というものがある。

例えば「死んでもコンティニューがある」「家に入って棚を漁っても許される」などなど。現実に当てはめて考えればあり得ないが、ゲームとして遊ぶ上では許された設定の数々だと言える。

この作品ではそういった設定の数々にも、世界観や歴史というバックボーンが当てはめられている。

冒険者が金銭を預ける際に利用する銀行の管理を代々請け負っている供贄一族などが分かりやすい。そもそも冒険者の街であるアキバがモンスターの襲撃を受けないのは、この供贄一族のおかげだったり、冒険者が冒険者を傷つけた際に出動する兵士もこの供贄一族だったりと、まるでゲームを円滑に進めるためのシステムのような存在である。

他にもモンスターが無限リポップする理屈や、冒険者が死んでも復活する理屈の説明として使われる魂魄と呼ばれる設定もある。ゲームでありながらゲームでないような感じにさせられるのは、これらがきっちり説明されて「ゲームだから」という無理筋で押し込められないようになっているからだと感じる。

この第七巻ではゲームではあるけれどスルーされがちな設定「モンスターがお金をドロップする」という設定に説明をつけていく内容となっている。

 

ゲーム世界にもお金という概念があり、お金の稼ぎ方として最もポピュラーな手段はモンスター狩りであろう。金策として効率的に金を落としてくれるモンスターの狩り場がネット上に溢れ、プレイヤーは時間的効率を追い求める。

だが、そもそも考えて欲しい。何故モンスターがお金を落とすのか?

モンスター界隈にも金銭が流通しているとでもいうのだろうか。モンスター達の間に資本主義社会が築かれ、金を右から左へ流すだけで金を生み出す錬金術師の銀行や資本家がいるとでもいうのだろうか。

その答えは供贄一族が持っていた。

〈パルムの深き場所〉の元も深き底の底には、黄金の大渦がある――虚空から現れる金貨が虚空へと消える蛇行した河と忘れられた地下庭園。そこにあるシステムがモンスターやダンジョンの宝箱に金貨を配備している。かつてはそのシステムを狙って、“死霊王”が大軍勢を作ったという伝承まで残っている。

それをシロエは欲した。なんと強欲なのだろう。

もしも話が真実だとすれば手に入れられる金貨の数は想像を絶する。手に入れた暁にシロエが何をしようというのか。仲間にさえ固く口を閉ざした彼の目的は、最後の最後にならないと明かされない。

供贄一族としてはあっさりとそのシステムを渡す訳にはいかない。そもそもこれまで秘匿し続けた事実。公にされるのだって困る。金銭的援助を要求してきたシロエを突っぱねた一族の判断は当然だと言える。

だがそれはシロエとしては、拒絶されることも織り込み済み。あとは力業で『〈パルムの深き場所〉の元も深き底の底』に挑んでいく。

 

挑むためには大規模戦闘ができるだけの人数を集める必要があった。その数二十四名。多すぎても中に入れず、少なすぎても攻略できない。そこでかつては酷い環境であったが、今は冒険者と大地人が共存している街〈ススキノ〉にて、仲間を募った。

まず最初に頼ったのは〈シルバーソード〉と呼ばれる大規模戦闘を主に行っていたギルドだ。頼ったというよりは、こちらの情報はほぼ明かさずに、といってもシロエは有名人なので比較的すんなりと話は進んでいく。

さらにたまたま出会った自称アイドルの職業〈施療神官〉てとらちゃんが仲間に加わり、さらにさらに、かつて敵対した〈ブリガンディア〉のリーダーだったデミクァスが仲間(?)に加わった。

色々と不安も覚えるが、それぞれの実力は相当なもの。シロエの心配性も発動し、準備は余裕があるくらい丁寧に整えられて挑む大規模戦闘。しかし思い出して欲しい。第六巻、アカツキが死んだとき、シロエも一緒に死んでいたことを。

シロエが死ぬほどの戦闘が、そこでは繰り広げられたのだ。

一度死を経験したことにより、シロエは何を思うのか? シロエだけでなく、共に挑む仲間達の成長にも必見である。

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