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ワールドエンドの探索指南 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

終末世界の歩き方

情報

作者:夏海公司

イラスト:ぼや野

ざっくりあらすじ

丘の上に建つ謎の〈学園〉で目覚めたボクは、六人の仲間達でチームを組み、無人の街を探索し、力を合わせてミサキを倒しながらながら地図を作っていく。貢献に応じて支払われるポイントで装備を新調しつつ、更なる奥地を目指していく。それがボクらの毎日。

感想などなど

本作の一番の特徴は、読者の抱くであろう予測の全てを裏切っていくことだ。

あらすじを読んだ時点で、多くの読者が抱くであろう感想は「ゲームっぽい」ということではないだろうか。ダンジョンを探索し、地図を作っていくという要素は、「世界樹の迷宮」や「ウィザードリィ」を連想する。貢献度によって振り分けられるポイントを集めて装備を新調していくという要素は、「モンスターハンター」や「ゴッドイーター」などを思わせる。

六人の仲間達でチームを組むというのも、少しゲームじみた印象を与える。六人といわず十人……いや、千人くらいで攻めちゃえよ! と思ってしまうことがゲームをしていると多々あるのはブログ主だけだろうか。作中の設定では、六人でチームを作るということが絶対のルールであるかのように描かれている。

もっというのであれば、仲間達の本拠地が〈学園〉とされているのもゲームっぽい印象を受ける。〈学園〉と名乗っていながら、教師となるべき大人の存在が見受けられないというのもゲームのようなイメージを色濃くさせる。

つまり一言でまとめると、あまりに都合が良すぎる設定なのである。

ゲームをしていると「突っ込んだら野暮だよね」という疑念を抱いたことがあるはずだ。例えば、「ボス前にセーブポイントがあったらおかしいよね?」とか、「イベントで死んだけど、教会に連れて行けば生き返るよね?」とか。本作を読み進めていると、似たような突っ込みポイントが脳裏をよぎる。

まぁ、突っ込まないで最後まで読み進めて欲しい。野暮なので。

 

主人公である乙丸タイキは、ある日目覚めると〈学園〉にいた。そこで『この世界のルール』というものを聞かされる。あらすじにて、ざっくりとはまとめているが、改めて説明をしていこう。

大勢の子供達が、冷凍睡眠のような形で〈学園〉内に眠らされていて、目を覚ますと過去に関する記憶がなくなっていた。しかし、世界は崩壊してしまっているという状況だけは漠然と理解していた。

外に出ると人はおらず『ミサキ』と呼ばれる凶暴な生物が闊歩していた。そんな奴らを退けつつ、生活範囲を広げるための地図製作を行うため、〈学園〉内の幹部達は多数のルールを作り上げた。

あまりにも数多くあるので詳細は避けるが、『六人の仲間でチームを作ること』『ミサキの討伐数や、地図の進捗状況などの貢献に応じてポイントが支給される』ことなどである。

また、『ミサキ』というのは既存の生物を巨大にし、武器――ウサギであれば脚力、亀であれば甲羅など――が人一人を容易く殺せるほどに強化された存在であると想像して貰いたい。その強さに応じてレベルが振り分けられており、数が大きければ大きいほど脅威となる。

読んでいった印象としては、レベル1程度ならば一人でも何とか対処できる。レベル2から厳しくなり、レベル7ともなれば逃げ出すことができればラッキーというような感じである。

 

本作は難易度がぶっ壊れのゲームに挑むような感覚と、そのゲームの裏にある設定を解き明かしていくようなストーリーを楽しむ作品である。「ダンジョンを潜っていくと、実はそこは昔の日本だった!」という某ダンジョンRPGや、「食べてたものが人肉だった」という某RPGのような展開を想像していただけると分かりやすい。

しかし、本作はゲームではない。ライトノベルである。

セーブポイントなど存在しない。人が死ねば死んだままだし、四肢欠損など当たり前。裏切りや憎しみの感情をぶつけられるということも珍しくない。ゲームでは描ききれない心情の変化やぶつかり合い、誰が死んでもおかしくないという緊張感。

そして――これが一番の問題なのだが、読者も主人公一行も世界のことを本当の意味で理解できていないということに気付かされていくこと。

第一巻はこのままネタバレを検索することなく読み進めることをおすすめしたい。せっかくネタバレをしないという本ブログに辿り付いてくれたのだから、その機会を生かして欲しい。健闘を祈る。

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