工大生のメモ帳

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探偵はもう、死んでいる。 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

探偵はもう、死んでいる

情報

作者:二語十

イラスト:うみぼうず

試し読み:探偵はもう、死んでいる。

ざっくりあらすじ

ハイジャックされた飛行機の中で、天使のような名探偵・シエスタの助手に選ばれた君塚君彦は、三年にも渡る冒険譚を繰り広げた。が、死に別れた。その後、ぬるま湯の日常に浸かっている。

感想などなど

探偵には助手がつきものである。ホームズのワトソンしかり、ポワロのヘイスティングしかり、人格に難がある名探偵の制御役としての役割や、読者に事件の顛末を語って聞かせる語り手としての役割だったりとわりと忙しい。

それに名探偵の助手というのは、有能な人材であるというのがお約束である。ホームズが頭脳も体術もチートなので隠れがちだが、ワトソンは博士号を取得した元軍医である。灰色の脳細胞の持ち主であるポワロがチートすぎて隠れているが、ヘイスティングは退役軍人の階級・大尉である。弱いはずがない。

さて、本作においても名探偵が登場する。名はシエスタ。彼女曰く、それはコードネームという奴で本名は謎に包まれている。

名探偵というからには事件はセットで語られる。ホームズでいうところの「赤髪連盟」「まだらの紐」あたりが有名か。ポワロなら「アクロイド殺し」「オリエント急行の殺人」あたりが未だに語り継がれる作品だろうか。

だが、この作品にそういった本格ミステリを求めると、少しばかり拍子抜けを喰らうこととなる。どちらかといえば、「ミステリ色の強くなったブギーポップシリーズ」「ラノベ色を強くしたSPEC」といった辺りを連想して欲しい。

なにせこの作品における犯人――いわゆる敵は、特殊な改造を施された人造人間なのだ。

それに探偵はもう、死んでいる。

 

名探偵であるらしいシエスタという女性と、たまたま(実は違うのだが)ハイジャックされた飛行機で一緒に乗り合わせてしまった君塚君彦は、彼女に助手となるように命じられ、そのまま三年間もの長きに渡ってズルズルと助手として過ごすことになる。

この物語は、そんなシエスタという女性との死別により、助手という職業を離れて一年後、一般的な高校生として生きていこうとしている時から始まっていく。

それなのに、彼のことを名探偵と呼んで事件の解決を依頼しようとする輩がいるのだから困ったものだ。彼自身、あくまで名探偵の助手という立場に固執しているような印象すら受けるほどに拒絶しようとするも、依頼を持ち込んでくる女性陣の性格がアレだったりするのだから、さらに困ったこととなる。

まず一人目の依頼人・夏凪渚。一度見たら忘れないくらい印象に残る美人であるが、ちょっと変態だと思われる。きっとむっつりスケベという奴だ。

そんな彼女の依頼は「あたしが探している人を探して欲しい」という哲学じみた依頼である。どうやら彼女は心臓のドナー提供の手術を受け成功。しかし、それ以降どうしても会いたい人がいるが、その相手が誰なのか分からないという気持ちの悪い状況に苦しめられていたようだ。

ドナー提供者は状況にもよるだろうが教えられない。この調査は難航するかに思われたが、予想外な手段であっさりと解決することになり、そしてこの事件の終わりが、この作品の始まりといっても過言ではないだろう。

一言この事件の顛末を語るならば――名探偵の誕生――だろうか。

二人目の依頼人・斎川唯。現役で活躍する売れっ子アイドルであり、わりとちょろい女の子である。そんな彼女の持ち込んだ依頼は「サファイアをいただくという予告状が届いたので守って欲しい」というもの。

どうやら彼女の家はそれなりの金持ちであるらしい。それで家には時価三十億はくだらないサファイアが保管されており、それを守るだけという単純な依頼だ。これは探偵にお約束の怪盗の登場か⁉ とワクワクさせられた被害者は自分だけではないだろう。そしてそんな読者を罠にかけているのでは? と勝手に被害妄想を膨らませたのは自分だけではない……と思いたい。

この事件は単純ではない。表面上だけをなぞっていては、死体の山が築かれていたかもしれない。斎川唯のゆるふわな空気にあてられて、真相を見誤るでないぞ! と次の読者たちには助言を残しておこうと思う。

 

さて、そんな事件はとある一人の人物の死と最後には繋がっていく。その一人とは言わずもがなシエスタという名探偵のことだ。彼女が残していった意思が繋がって、事件が解決に向かって行く過程は、読んでいて心地が良いものだ。

ラノベらしい良いラノベであった。

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