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探偵はもう、死んでいる。2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

探偵はもう、死んでいる

情報

作者:二語十

イラスト:うみぼうず

試し読み:探偵はもう、死んでいる。 2

ざっくりあらすじ

シエスタを失ってから一年後、彼女の心臓を移植されて生き延びた夏凪や、現役アイドル斎川、かつてシエスタとも行動していたシャルと共に《シエスタ》に誘拐されてしまう。集められた先では、君塚が忘れているという『シエスタ』の死の真相が語られた。

感想などなど

「ざっくりあらすじ」を記載する際、いつも公式のあらすじを参考にさせていただいている。公式のあらすじというものは良く出来ているもので、上手い具合にネタバレをしないラインを突いてまとめている。

だが今回のあらすじはどうだろう?

シエスタの死後と言っておきながら、シエスタに誘拐されるという意味不明な内容となっている。読者は、「誤記」もしくは「シエスタが実は生きていた説」を胸に抱き読み進めることとなる。

だがそんな期待は壊しておこう。シエスタは死んでいる。

彼女は魅力的な女性であり、事件を事前に解決してしまうような名探偵であった。そんな彼女は自分の死ぬ前に映像を撮影し、夏凪・斎川・シェラ・君塚の四人に見せるような段取りを組んでいたらしかった。

……あれ、つまり死ぬことが分かっていた?

『シエスタが死ぬことになった原因』にして『君塚が忘れていること』を、彼女が用意した映像を見ながら推理していく。この第二巻をまとめるとそんな感じだ。

 

第一巻のラスト、カメレオンとのバトルにて「あぁ、彼女はこいつに殺されたのか」と怒りや殺意を覚えた読者もいるのではないだろう。カメレオンを倒すために協力する展開に手に汗握った者もいたことだろう。ただ自分が抱いた感想は少しばかり違う。

シエスタはこんな奴に殺されるほど雑魚なのか? と。

第一巻のラストでシエスタと君塚の会話が感動的で許していたが、ラストバトルが透明になるだけのカメレオンということにブログ主は些か不満があった。シエスタがこんな奴に裏を掻かれた理由が分からなかったし、発言は小物臭が凄まじかった。エンタメのテンプレに乗っ取るなら、あっさりと負ける中ボス以下の立ち位置である。

第二巻を読み進め、シエスタが生前に用意した映像にもカメレオンが現れる。そして「やっぱり小物臭が凄まじい」ということを再認識。実際に彼は(シエスタに比べれば)雑魚だった。

人造人間にはカメレオン以上にヤバい奴がたくさんいるのだ。

例えば。

人造人間・ケルベロスはロンドンの街を賑わす連続殺人鬼――現代に蘇った切り裂きジャックの正体であった。彼は鼻が異常に発達しており、シエスタが近づこうにもすぐさま察知されて逃げられてしまう。そんな彼を捕まえるべく、君塚とシエスタでそれぞれ別行動し、一人きりになった君塚を囮にしようという作戦を立てたシエスタ。そんな彼女の思惑通り、君塚を強襲してきたケルベロスと君塚の一騎打ちという名の数少ない君塚の見せ場が始まっていく。

まぁ、良いところはシエスタがかっさらっていくんですがね。

人造人間・ヘルは言葉で相手を操ることができる。動くなとヘルが言えば、相手は文字通り動けなくなる。「〇〇を殺せ」と命じれば、その言葉通りの行動をする。かなりチート能力であり、君塚はその能力によって誘拐されてしまう。

まぁ、そんな彼をシエスタはかっこよく救出するんですがね。

 

この第二巻の魅力は、「シエスタと君塚のイチャイチャ」と「死ぬことが分かっているというミステリ要素」の融合だと思う。二人が仲良く事件を解決するために動いているが、その結末はシエスタの死によって結ばれるということを、読者は知っている。

その上で重要な要素は「君塚がシエスタの死の理由を忘れていること」「シエスタが死ぬことを予期して映像まで残していたこと」だろう。二人のいちゃいちゃを可愛いと思っているだけでは伏線を読み飛ばしてしまう。シエスタの戦いは、事件が起こる前から始まっているということが、後から読み返して分かる。

第一巻で触れられなかった違和感や、最後まで読んで抱く疑問が一気に解消されていく「探偵はもう、死んでいる。」シリーズの根幹に関わる、今後の未来に繋がっていく内容だった。

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