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世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻】

※ネタバレをしないように書いています。

勇者を殺せ――そのために転生を

情報

作者:月夜涙

イラスト:れい亜

試し読み:世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する 7

ざっくりあらすじ

世界宗教の教皇になりすましていた魔族を倒したルーグは、英雄として讃えられる。そんな中、蛇魔族ミーナが本格的に動き出し、ノイシュ・ゲフィスを利用して大虐殺させることで【生命の実】を作ろうとする。その計画を止めるため、ローマルング公爵家はルーグにノイシュ暗殺を依頼し、ルーグは親友であるノイシュ暗殺を受けることに。

感想などなど

(魔族がなりすました)教皇の殺害に成功したルーグ。教皇を教皇として殺すのではなく、きっちり魔族であるということを表に晒しつつ殺すという難易度SSSの任務であった。

これにより英雄として讃えられることとなった訳だ。この讃えられ方というのが、かなーり俗物的だ。

教会は魔族と教皇が入れ替わっているということに気付かず、ずっと騙され続けたという事実を、どうにかして美談にしようとする。その無理を通そうとした結果、教会はずっと教皇の正体に気付いていて騙された振りをしており、ルーグの協力もあってやっと倒すことに成功した! という話が世間に公表された事件の経緯となっている。

これが事実とは随分違うことを読者は知っている。

その結果、教会の権威は保たれ、ついでにルーグは超有名人となる。我々のような俗物にとって、地位と名誉はこの上ない喜びだが、ルーグに関してはあまり嬉しいこととは言い難い。

なにせ彼は暗殺貴族。暗殺者は顔を知られては仕事がやりにくくなる。

そんな暗殺者にとって追い風が吹いている今、厄介な仕事が舞い込む。

ノイシュ・ゲフィスの暗殺である。

 

ノイシュ・ゲフィスは学校で出来たルーグの数少ない友人である。そんな彼が嫉妬心をたぎらせ、その果てに魔族となったことは、ここまで読んだ読者ならばご存じだろう。桁違いの力を身につけた彼であるが、その力を隠して学校に通いつつ、ルーグの前にも平然と顔を出している。

何かを企んでいるようには見えない。

しかしその裏では、想像するよりも遙かにヤバいことをしていたことが、この第七巻で判明する。そのヤバいこととは、自分の領地の民を大虐殺する準備……これは勇者エポナが出てこなければならないほどの大事件へと発展する。

そもそも魔族は【生命の実】と呼ばれる実を三つ食べることで魔王となり、勇者に討たれるという歴史を繰り返してきた。【生命の実】というのは大量の人命を捧げることで作り出されるエネルギーの集合体のようなものだ。今回の場合、すでに一つ【生命の実】は作られてしまったが、それはルーグが回収し保管している。

魔族としてはルーグの実を回収しつつ、都市を二つほど滅ぼして【生命の実】を作りたいところ。そこで利用されたのが、ノイシュ・ゲフィスであり、彼に彼自身が治めている領地を滅ぼさせようとしているのだ。

それを止められる者は、ノイシュの友達であるルーグのみ……彼は友を殺すために計画を練り始める。

 

この第七巻ではノイシュを殺すために、色々なモノを利用する。それは人であったり、これまで培った技術であったり、ノイシュの感情であったりと多岐にわたる。このノイシュに対して、一読者としてはどのような感情を向けるべきなのか計りかねている。

嫉妬心にまみれた彼に対する同情か。

彼は優秀な人間であるが、彼より上の人間があまりに多すぎた。努力を怠っている様子もないのに、あと一歩勝てないことにより募っていく劣等感と嫉妬心はかなりのものであろう。さらに誰にも認められていないという苦しみが加わって、彼は魔族になった。

この第七巻でルーグはノイシュの実力を認めていたような発言を幾度となく繰り返す。それをもっと早く言ってあげれば、状況は変わっていたのではないかと考えずにはいられない。

魔族になった彼は、最終的に民衆の大虐殺を計画する。

彼は作中で大虐殺を肯定するような持論を展開し、自分こそが正義であるとルーグを責め立てる。それは全て、彼を利用しようとする魔族の言葉であり、真実であるという確証はどこにもない(嘘であると否定する根拠もまたないのだが)。

彼は魔族になって力を得て、それを利用する術を考えることを放棄したのだ。強くなったからといって、することが大虐殺である彼を肯定する気力は、少なくとも自分にはない。

この第七巻に対する評価はノイシュと、ノイシュに対するルーグの向き合い方に対する評価で変わってくると思う。ノイシュにどんな感情を抱くか、そしてルーグに対してどう感じるか。読みながら色々と考えてみてはいかがだろうか。

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