※ネタバレをしないように書いています。
終わりから始まる物語
情報
原作:山田鐘人
作画:アベツカサ
試し読み:葬送のフリーレン (5)
ざっくりあらすじ
魂の眠る地を目指すフリーレン一行。北部高原を抜けるために同行が義務化されている一級魔法使いになるため、フリーレンとフェルンはともに試験を受けることに。第一次試験の内容は、試験区域に生息している隕鉄鳥を捕まえることで――。
感想などなど
北部高原に入るためには一級魔法使いの資格を取る必要がある。
北部高原には狡猾な魔法を使う魔物が多く、優秀な僧侶と魔法使いがいなければ超えられない難所であるため、一級魔法使いの同行が義務づけられているらしい。そういった資格を提供する機関は、定期的(といっても百年とかそういった単位だが)で変わるらしく、フリーレンはめんどくさくて取っていない。
北部高原に進むため、フェルンとフリーレンは資格を取るための試験へと臨むことに。
この試験が滅茶苦茶むずい。この第五巻では第一次試験に挑む話が描かれるのだが、普通に死人が出ている。死に方もえげつない。鳥に啄まれ、他の人を誘い込む餌として木の枝に突き刺されている。
そんな超危険な第一次試験の内容は『隕鉄鳥を捕まえる』というシンプルな内容だ。「簡単じゃん」と思った方は死ぬので覚悟しておこう。なにせこの鳥、見た目はカワセミみたいな感じでありながら最高速度は音速を超え、生半可な捕縛では破壊される。
しかも警戒心が強く、見つけようにも魔力を察して逃げてしまう。そもそも見つけようにも魔力探知にこの鳥は引っかからない。危険な魔物も空を飛んでおり、最初に書いたように殺される。
三人一組というグループ分けがなされていることが不幸中の幸いか。
ちなみにフリーレンのチームは、氷結魔法の使い手、三級魔法使い・ラヴィーネと、水操作の使い手、三級魔法使い・カンネを含めた三人。この二人は同じ魔法学校の出身で幼なじみ。喧嘩するほど仲が良いを体現する仲良し二人組である。
この二人のコンビネーションが、中々に恐ろしい。カンネが水を操作し相手を囲い、ラヴィーネが凍らせる。これから逃げられるものはいな……いや、めっちゃいた。一級魔法使いの試験というだけあって、コンビネーションが良い程度では乗り越えられないのがこの試験だ。
上で長々と書いたように、見つからない・捕まらない厄介な隕鉄鳥。これを捕まえたら終わりではない。
捕まえられない受験者達は考える。「捕まえた奴から奪えばいいじゃん」と。
こうして始まるのが対人戦である。三人一組のルール……その中でも、時間までにメンバーが書けたら失格というルールがここで効いてくる。フリーレンが負けることはないが、ラヴィーネがカンネのどちらかが殺されでもした場合、フリーレンも失格となってしまう。
ラヴィーネとカンネは三級。お世辞にも強いとは言い難い。第一級の試験には、彼女らよりも遙かに強い実力者が名を連ねている。そういった者達でも隕鉄鳥を捕まえることには難儀し、早々に奪う方向にシフト。狙われたのはフリーレン達のチームだった。
……まぁ、フリーレンの強さは見れば分かるらしい。それでも戦ってみたいという魔法使いとしての矜持か、二人は雑魚だからという消去法か。
こういう書き方をすると狙った者達は命知らずな馬鹿と思われるかもしれない。だが個人的にこの第五巻を通して一番好きになったキャラは、フリーレンチームに泥くさく戦いを挑んで負けた男・デンケンという魔法使いだったりする。
このデンケン、本当に良いおっさんなのである。フリーレンの作戦を理解し、的確に指示を出し、確かにフリーレンのチームを追い詰めた。フリーレンが規格外過ぎて負けたが、最善手を打ち続けたと評価していいだろう。
第一次試験が終わった後は、チームメンバーである少女ラオフォンを孫のように可愛がっている辺り、人間味があって好き。
試験というだけあって、この第五巻で増えたキャラクターは多い。フリーレンと一緒に試験を受けたフェルンと、同じチームになったラント、ユーベルの二人も良いキャラをしている。
ラントについては多くを語らず静かなキャラクターを貫いているが、ユーベルなんかは ”物を切り裂く魔法” というシンプルな魔法でかなーーり強い。殺人を厭わないサイコっぽい口調でありながら、フェルンが使える魔法を聞かれて「服が透けて見える魔法」と言った時、身体を隠して逃げようとしたところで、「そういえば女の子だった」と思わせてくれるところが好き。共感できる相手の魔法は、真似して自分も使えるようになる……という理屈ではない天才っぷりを発揮するところも好き。
そんな良い子達と第二次試験では争うことになるかもしれないと思うと……みんな合格にしてくれませんかね。できれば死人は見たくない……けど六巻が気になっちゃう第五巻であった。