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世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻

※ネタバレをしないように書いています。

勇者を殺せ――そのために転生を

情報

作者:月夜涙

イラスト:れい亜

試し読み:世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する 6

ざっくりあらすじ

魔族ミーナの招待を受け、命がけの交渉をすることとなったルーグ一行。それを切り抜けて学園に戻った後も、世界を敵に回るほどに危険な任務を依頼される。暗殺対象は世界最大の宗教・アラム教の教皇であった。なんと教皇に魔族がなりすましているのだという。

感想などなど

勇者の正体や、魔族が作ろうとしていた実の正体が分かった第五巻。二つとも、大勢の人間の魂を凝縮した存在であるということが分かり、ついでにルーグは魔族が完成させた実を回収することに成功した。この世界におけるルールという奴の、核心に迫った回だったように思う。

といっても、まだまだ分からないことは多い。その鍵を握っているのは、この世界にルールを送り込んだ女神、そして魔族……それにしても勇者は全くといって言いくらいでてこない。てっきりヒロインの一人になると思ったのだが。

そんな勇者の動向が気になるという方。この第六巻では少しだけ活躍の場がある。

そんな第六巻はルーグとミーナの命がけの交渉から始まっていく。交渉のテーブルに載せられるは、ルーグが回収した実と、この世界と魔族の秘密について。そんな話し合いが執り行われる場は、ミーナの邸宅である。

いつ戦闘が起きてもおかしくない緊張感。互いに腹を探り合う舌戦。相手がどこまで情報を握っているのかを探りながら、交渉を進めていく。

結局、出した結論は現状維持。もはや関係性は決裂しているようなものだと思うが、表面上は協力するという体で情報を提供し合うということになった。まぁ、殺し合いをしたところで互いに無傷ではいられないだろうし、これが最善なのかもしれない。

 

さて、そんなやり取りをしている間に、学園が再開しようとしていた。第二巻でボロボロにされた学園が、もう元に戻って生徒が通えるまでになったらしい。きっとややこしい政治的な話が、裏ではもたれていたのだろう。

そういえば、ルーグは学生だったんだなと思い出される。これから学園生活が始まっていくのかな? と思った方は甘い。この世界においては、青臭い学園生活を送る時間よりも、監禁されたり、誘拐されたり、魔物に襲われる時間の方が長い。

四大公爵家の令嬢にしてルーグ大好き娘ネヴァンから、口頭で依頼を伝えられる。その依頼というのが、『世界最大の宗教・アラム教の教皇の暗殺』である。その暗殺理由は、『教皇が魔族だから』。

『アラム教において女神からの神託を受ける巫女アラム・カラム』からのタレコミにより発覚した衝撃の事実。このままでは教会が魔族に牛耳られてしまう。そんな最悪の事態を防ぐために、ルーグに依頼が回ってきたのだ。

しかし相手が教皇となると、暗殺も楽ではない。教会というのは本来、魔族を入れないために厳重な警備や、魔術的な結界が施されている。そのため、教皇が魔族であるという証言も信頼されるものではない。また、魔族の侵入などとは関係なく、教皇が暗殺されることなど防ぐための警備・結界も尋常ではないのだ。

さらに殺したとしても、教会の信者は世界各地に大勢いる。いわば世界を相手取った暗殺と言っても良いだろう。そんな依頼を「前世を含めて生涯最高難易度の殺し」と評したルーグは、一体どんな手を使って殺しを遂行するのか。

魔族を相手取り、世界中にいる信者を敵に回すかもしれない暗殺が始まる。

 

今回、ルーグが戦うこととなる魔族は、書物においてもあまり情報が載っていない。ネヴァンからの数少ない情報「人形遣い」から、死体を操る能力を持っているのではないかと推察する。

この第六巻の醍醐味は、そんな感じで暗殺に向けての準備にあると思う。そして暗殺事態はルーグの想定した通りに進んでいくのだから、そこが快感となるのではないだろか?

その辺りを薄味だと思ってしまうと、どうにも「生涯最高難易度の殺し」感がない。それぐらいあっさりとした終幕であった。

ルーグにしかできない、ルーグだからこその暗殺であった。

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