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【漫画】海色のアルトサックス(1) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

艦娘がジャズに挑戦

情報

原作:柚木ガオ

試し読み:艦隊これくしょん -艦これ- 海色のアルトサックス (1)

ざっくりあらすじ

倉庫の大掃除中にアルトサックスを見つけた敷浪。「おめでとう」も素直に言えないことに思い悩む彼女は、ジャズを通じて言葉では表現できない想いを伝えるため、アルトサックスに挑戦してみることに――。

感想などなど

音楽を聴いて感動したことはあるだろうか。

子供の頃、オーケストラの演奏を聴きに行ったことがある。オーケストラの何たるかも知らず、ましてや曲名なんてもってのほかで、アルトサックスという楽器すらも知らないくらいに幼かった。それでも、大人になった今になっても、「聴きに行った」ということを覚えている。

たとえ知識がなかったとしても、たしかに心は揺さぶられた。だからこそ覚えているのだろうと思う。さすがは巨大なホールで演奏するプロといったところか。

ただ、だからといって素人の演奏に価値がないかと問われれば、答えは否だ。そこに伝えたい想いが乗っかれば、それは立派な音楽であり、その想いはきっと伝わる。……最低限度の技術というものは必要かもしれないが。どんなに優れた楽器でも、そもそも音がでなければ音楽をする以前の話である。

そんな音楽に挑戦する駆逐艦がいた。

最初に書くべきだったかもしれないが、本作は実在した艦隊を美少女化したコンテンツ『艦隊これくしょん』――通称・艦これの世界を舞台にしている。

主人公は駆逐艦・敷浪で、ジャズを通じて仲間が増えたり技術が向上していく様子がメインではあるが、ゲームにおける敵として登場する深海棲艦との戦いに備えて、座学や演習に取り組む様子も描かれている。

駆逐艦・敷浪は綾波型2番艦として、数々の歴戦を乗り越えてきた。

ゲームでは綾波型1番艦にして鬼神と呼ばれた武勲艦・綾波を姉に持つ次女として描かれ(ゲームをプレイしている方からしてみれば常識かもしれないが)、照れ隠し的な台詞が実に可愛らしい、大人しめな子として描かれている。

漫画でもその性格は引き継がれ、素直になりたいけどなれない自分を変えたいと頑張る少女として、魅力的な主人公となっている。

 

先ほども書いた通り、敷浪の姉・綾波は史実上では「鬼神」と呼ばれるほどの武勲艦だ。漫画では戦果や演習での活躍が評価され、長期護衛作戦の旗艦として選ばれている。そんな姉の功績に対し、敷浪は素直に「おめでとう」が言えずに後悔を積み重ねていた。

その悩みと向き合い、想いを伝える手段を提示してくれたのが、倉庫に残されていたアルトサックスと、映写機で見るフィルムに残された過去の演奏達である。フィルムに残されていたジャズ演奏の数々が、音楽によって強く心を揺さぶることができるということを教えてくれた訳だ。

こんな演奏がしたい。これならば言葉にして口にすることが苦手な自分にも、綾波に「おめでとう」を伝えることができるかもしれない。長期任務で鎮守府を離れてしまう前に、何とかして形にしようと練習に励む様子は微笑ましい。

隙間時間を見つけては、綾波に見つからないように練習する日々。

最初はそんな目的から始まった練習だったが、アルトサックスが吹けるようになっていくことを楽しんでいるように感じたのは決して気のせいではないだろう。まだまだ技術的には未熟かもしれないが、綾波に想いを伝えたいという気持ちだけは立派なものだ。

 

最初は敷浪一人だけの練習だったが、提督の協力もありつつ、部活のような形でジャズに打ち込むことになる。そこには敷浪のように「音楽を通じて気持ちを伝えたい艦娘」や、「ジャズが好きな艦娘」が集まってきた。

例えば。

敷浪と一緒に部活を立ち上げることになったメンバーが、駆逐艦・磯波である。彼女は遠目から一人でアルトサックスを練習する敷浪を眺めていて、ジャズに対する憧れを募らせつつ、あと一歩が踏み出せずにいた。その一歩を後押ししたのが、敷浪だった。

朝霜と岸波は、自分たちの姉である浜波を元気づけるためにジャズの演奏することにした。元気になって欲しい、という想いを伝えたい一心で、音楽を一から練習し始めた彼女たちの覚悟は本物だろう。

そうして広がっていくジャズの輪。音楽という手段で想いが伝わって、リレーのように連なっていく過程が、微笑ましく、可愛らしく、かっこよく描かれている。

敷波の成長が楽しめる漫画であった。

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