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異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

魔王(演技)

情報

作者:むらさきゆきや

イラスト:鶴崎貴大

試し読み:異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術

ざっくりあらすじ

MMORPGクロスレヴェリにおいて魔王〈ディアヴロ〉と称されたプレイヤー、坂本拓真は、ある日、ゲーム内の姿で異世界へ召喚されてしまう。そこには召喚主を名乗る美少女が二人いて召喚獣用の奴隷化魔術をかけられる。しかし、固有魔法により魔術を反射してしまい、奴隷と化したのは少女達の方であって……

感想などなど

ネット上でのキャラと、リアルでのキャラが違うというのは珍しくない。自分だってネット上でラノベの感想ばかり書きまくっているが、リアルでは親にすら隠して生きている。書き言葉と話し言葉では比較しにくいが、ネットとリアルでの自分の雰囲気は大分違うのではないだろうか。

MMORPGクロスレヴェリにおいて魔王〈ディアヴロ〉と称されたプレイヤー、坂本拓真はネットとリアルの差が大きな人間であった。ゲーム上では魔王っぽく演じていたが、リアルでは人とのコミュニケーションがまともに取れないコミュ障という感じだ。「差が大きい」というよりは、どっちも人らしくないという意味では差がないといえるかもしれない。

そんな彼が魔王の姿で、奴隷として二人の美少女に召喚された。

 

この世界では、召喚した生物に奴隷の首輪を付けて使役し戦うようだ。その際に使われるのが奴隷魔術であり、かなり強力な拘束力を持つ魔法であるらしい。つまり魔王もこれから召喚した少女の奴隷となり、こき使われることになるであろう。

……とはならなかった。

魔王の装備しているアクセサリーにより、奴隷魔術を反射。奴隷にされるはずだった魔王が主となり、逆に美少女達を奴隷として引き連れることとなってしまった。極悪非道、残虐性の塊である魔王ならば、その後の展開もお約束というもの。奴隷の辿る末路はどれも悲惨で。

……とはならなかった。

なにせ魔王の中身は奴隷制度など知ったことではない現代社会を生きる日本人。彼女らを虐げるような趣味はない。しかもコミュ障。そもそものコミュニケーションすらままならない。

これでは不味い。そう考えた拓真は、今後この世界を生きていくことになるだろうことを考えて、魔王っぽい演技で乗り切ることを決意する。こうして魔王っぽい台詞で、魔王っぽく頑張る男の物語が始まった。

 

魔王を召喚した二人の召喚士。

一人目はレム・ガレウ。豹人族(スレンダー)。

二人目はシェラ・L・グリーンウッド。エルフ族(であるが、珍しく胸が大きい)。

そんな二人に奴隷の首輪を付けてしまったのだから、行動を共にすることとなる。すると出てくるわ、出てくるわ、二人の裏の設定がわんさかと。

まずレム・ガレウは、その身体にクレブスクルムという最強の魔王を封印されている(ディアヴロはあくまで魔王のように強いとして魔王と称されただけである)。もしも彼女が悪魔に連れ去られでもしたら、魔王を蘇らせてしまうかもしれない。そんな危険を産まれながらにして抱えて生きている彼女の支えとなってあげられる人間が、この世界にいるだろうか……。

次にシエラ・L・グリーンウッドはエルフの国・グリーンウッドの王族の娘である。つまり次期女王。そんな大物が奴隷にされたとなれば、国のお偉いさんが黙っていられるはずもない。だが、そんなことをシエラは望んでいないようだ。国を抜け出して、こんな場所にいるのが良い証拠である。

この第一巻では二人の抱える闇を知り。魔王っぽい台詞でしか他人とコミュニケーションが取れない男が不器用ながらに支えていこうと奮起する物語だ。その不器用さと、はったりだって、ゲームで培った戦闘の経験値も全て注ぎ込んで救おうとする必死さは愛着が沸く。

いうしかキャラクター達が好きになっていくラノベであった。

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