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賢者の弟子を名乗る賢者1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

賢者の弟子=賢者

情報

作者:りゅうせんひろつぐ

イラスト:藤ちょこ

試し読み:賢者の弟子を名乗る賢者 1

ざっくりあらすじ

VRMMO『アーク・アース オンライン』で九賢者の一人として数えられていた渋いおっさん召喚士「ダンブルフ」……の中の人・咲森鑑は、寝落ちした際にゲームが現実になった世界に、可憐な少女の姿で転移してしまった。

感想などなど

受肉という言葉を知ったのはベルセルクだった。詳しくはないのだが、神が人間として世界に降臨することを、元々は指す言葉だったはずだ。だが昨今のネットにおいては、受肉=おじさんが美少女の皮を得ることを指すらしい。

バ美肉とも呼ばれ、可愛らしい女性の姿をした絵が、男の声を発する動画というのも珍しくなく、VRチャットなどではそういった光景が良く目にできるのかもしれない。

また、オンラインゲームでは女性のアバターで、中身は男性というのも珍しくないようだ。それに騙されたという被害者は後を絶たない。漫画やラノベでも、そういったネット社会の闇(と言って良いだろう)をモチーフにしているものもよく見かける。

さて、本作の主人公である咲森鑑は男である。歳は大学を卒業してから六年後、およそ二十代後半といったところか。彼はVRMMO『アーク・アース オンライン』にド嵌まりしていた。

このゲームの特徴は圧倒的自由度の高さだろう。代表的なシステムとして、国を支配することができたり、モンスターを倒すという一般的なゲームの楽しみ方意外にも、商売を通して金儲けができることなどができる。また公式HPがなく、公式から出される情報が一切無い状態で、手探りで世界を探索し、スキルなどを入手していくという、ある種の不自由さが売りにもなっているようだ。

そんな自由度の高い世界において、咲森鑑は、召喚士「ダンブルフ」というキャラクターで九賢者の一人として力をふるっていた。このダンブルフは顎髭を蓄えた、ダンディなおっさんである。ハリーポッターのダンブルドア的な容姿が近しいのではないだろうか。名前もそんな感じだ。

つまり咲森鑑に女性の皮を被ってゲームをするような趣味はなかった。

しかし、ゲーム内にある課金アイテムで容姿を変えることができるものがある。それがたまたま余っていた咲森鑑は、ダンブルフを自分好みの女の子に変えて遊んでいた。そうして出来上がった少女は、かなり可愛らしい容姿となって、ダンブルフの面影はすっかり消えていた。

まぁ、そこまでは趣味の範疇。良くある話。問題になるようなことではない。

そんなタイミングで咲森鑑が、ダンブルフ(少女の姿)として、ゲームの世界に転移してしまったのだから、物語がややこしくなるのである。

 

ダンブルフ(少女の姿)が「私はダンブルフだ」と名乗ったところで信じられるはずもない。「この娘は何を言っているのかな?」で終わりである。なにせ見た目は少女の姿なのだから。

だからこそ、少女はダンブルフの弟子を名乗り、ダンブルフとして作った施設を利用したりすることに。中身はダンブルフなのだから、ダンブルフと同じことができるのは当たり前なのだが、周囲の者達は驚く。「流石はダンブルフ様の弟子だ」といった感じで。

それに対するダンブルフ(少女の姿)の反応は冷めたものだ。ダンブルフ(少女の姿)

にとって、そんなことは問題ではない。中身が男で、体は少女だと困ることが別にあるのだ。

風呂にトイレ、着替えといった当たり前のことが、一大イベントになるTS系の定番である。

……まぁ、この作品でそれらTS系の定番は比較的さらりと流されている。ちょっと寂しい。

 

残念なことに、この第一巻はかなーり中途半端な場所で終わっている。読み終えた後、どうにも読み終えた感がしなかった。

ゲーム世界の時間軸が、かなーりズレており、自分が知っていたゲーム世界の歴史とは違っていること。ゲームシステムの都合上、起きるはずのなかった国家間の戦争が発生していたこと。謎の儀式を行うモンスターの出現、他の九賢者の人達も同様に転移してきている可能性があるということ……などなど気になる要素を散りばめ、「はい! これからそれらを調査しましょうね!」という感じで終わっている。

ふむ、つまりは第二巻を買えということである。ネット小説を書籍化した際には、こういったことも珍しくないのだが、もうちょっと工夫できたのではと思わなくもない。

色々と不完全燃焼で終わった第一巻であった。気になる方は第二巻までを購入することをおすすめしたい。

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