工大生のメモ帳

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賭博師は祈らない5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:な し】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※一巻のネタバレを含みます。

終わらせ方を決める時

情報

作者:周藤蓮

イラスト:ニリツ

ざっくりあらすじ

ロンドンの裏社会を牛耳るジョナサンと対立し、一度は全てを失ったラザルス。賭博師としての矜持を奪われたその先で、自らが進むべき新たな境地へとたどり着く。再起したラザルスはフランセスに勝利し、ジョナサンとの全面対決を掲げた。

感想などなど

第四巻にてジョナサンと対立しボコボコにされたラザルスであるが、リーラ達の協力により再起し、フランセスと婚約することで勝利した。こうして(細かな点を省略して)前巻の内容をまとめてみた。何ということだろう、残念なことに肝心の賭博の方をまったく覚えていないが許して欲しい。

しかし、本シリーズにおいて重きをおかれているのは、賭博に至るまでの準備であるように思う。賭博最中で起きたハプニングも実際はハプニングなどではなく、それも含めて全て演技だったり計算だったりするのであった。準備段階で勝敗は決しているというのは誰の言葉だったか。

最終巻も例外ではない。最後の最後のバトルも、戦う以前に勝敗は決していたのである。というか賭博本編よりも、そこに至るまでの過程の方が面白い。これまでの色々あっていつの間にか増えていた愉快な仲間達との会話の中から、「この展開の伏線はあそこか?」「ここであいつが出てくるんか!」と推察を深めながら読み進めていくことになる。

そのような楽しみ方をできるようにするため、理解しなければならないのは『立場』と『勝利条件』の二つに分類できる。

 

まずはラザルスの『立場』は……ふむ、これが一番難しい。ある意味、『立場』がどことも言えないからこそ、ボウ・ストリーズ・ランナーズと協力体制を築けたし、ジョナサンの正体が女性であるということも知り得た。強いて言うならば『悪い賭博師』だろうか。

そんな彼の『勝利条件』は、喫茶店は喫茶店、賭博場は賭博場として働く整理整頓をされると、かつての約束を守れないというため、『ジョナサンに整理整頓させない』ことだと言えよう。

そんな彼と協力体制を敷くこととなったボウ・ストリーズ・ランナーズの『立場』はロンドンの『治安部隊』である。そのため、犯罪者である『ジョナサンを逮捕する』ことが『勝利条件』であろう。

そして肝心要のジョナサンの『立場』は、『裏社会のボス』である。目的は……最終巻を通して説き明かすことになるので、ここでは割愛しておこう。

『ジョナサンを逮捕する』ことと、『ジョナサンに整理整頓をさせない』ことの二つの目的が被っているからこそ、ボウ・ストリート・ランナーズが協力体制を敷くことになった。

ということでラザルスも『ジョナサンを逮捕する』という目的のために奮闘することになる訳だが、これがまた厄介な問題なのである。冤罪でもふっかけて逮捕すれば? いや、それこそ犯罪なので言い咎められようものならただではすまない。

ジョナサンが裏社会に立ち続ける限り、何かしらの犯罪に加担しているということは間違いない。その加担しているという証拠を手に入れる必要があるが、ジョナサンはなかなか尻尾を出さないのである。

物語の前半部分、ジョナサンが『死体の損壊』をしているのではという容疑をかけるラザルス達。なんとジョナサンが大事にしているカップは、おじさんの死体の骨から作り出したかもしれないと言い出したのだ。

はっきり言って正気を疑うような犯罪だが、ジョナサンがそのカップを後生大事にし誰にも触れさせないようにしていることや、というかジョナサンは正気ではなく狂っているということから、おそらくやったに違いないということになった。

結論から言うと、彼女はやっていた。骨からカップを作り出していたのである。

となるとそれを証明し犯罪として立証することは簡単だ。そのカップを奪ってしまえば良い。

さらに結論を言ってしまおう。その作戦は失敗した。ラザルス達の作戦を、ジョナサンの覚悟が越えていったのである。

ジョナサンはおじさんの骨をカップにして利用するほどの狂った女だ。ただ狂っているというのは失礼か、『目的』のためならば手段を選ばないと言うべきだろう。

そんな彼女の狂気と戦うことになるラザルス。そのためには彼自身も手段を選んでいられる余裕などない。

 

ラザルスの話ばかりしていたが、思い出して欲しいのはリーラの存在である。第四巻にてリーラが祖国へと戻ることができるチケットを入手していた。それを第五巻の序盤で渡すことになる。てっきり最後の最後で渡すものかと思っていたが。

リーラはこれまでの賭博ではあまり活躍していない。まぁ、ラザルスが立てた作戦の内では例外だが、人の心を読んで作戦を考える賭博では経験がものをいうので役に立ちようがない。

しかし、第五巻ではリーラがリーラ自身の力でジョナサンに勝つための賭場に立つ。

何故そのようなことになったのか? どのような作戦を立てるのか? 様々な点にアンテナを張り巡らせながら読み進めることをおすすめしたい。

物語として綺麗に迎えた終幕だったと思う。賭博師ラザルスとしての生き方をようやく見つけられたのだろう。一人としての賭博師として覚悟を見て欲しい。

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