※ネタバレをしないように書いています。
※一巻のネタバレを含みます。
決めねばならぬ時が来た
情報
作者:周藤蓮
イラスト:ニリツ
ざっくりあらすじ
バースまでの旅を終え、ようやく住み慣れた街ロンドンに帰還したラザルス。
エディス達との交流も相変わらず続き、リーラも大分表情豊かになって来て、平和な日々が過ぎていく。
しかし、ラザルスには一つの懸念があった。
感想などなど
三巻での死闘を死闘を終え、無事帰還して始まっていきます第四巻。今後どのような敵が現れて、物語が展開していくのか? 皆さんも気になって仕方がないだろうと思います。
冒頭はいきなりラザルスの一年ほど昔、リーラと出会う前から始まっていく。
さて、ここで一巻の内容を思い出していただきたい。ラザルスはリーラを救い出すために、とある女賭博師と対決し、ギリギリ勝利をもぎ取って、リーラを救い出した。
その女賭博師がラザルスの元恋人であり、過去同棲していて、名前をフランセスということを覚えていないならば、一巻を軽く読み直すことをお勧めしたい。
今回の話でフランセスは重要な立ち位置であり、今回の敵として再び立ちはだかるのだから。
今回は今までと大分目的が違う。これまでの話は、過去の因縁やら何やらで事件に巻き込まれていくリーラを、ツンデレのラザルスが「どうでもいい」と言いながら助けるというものだった。
しかし今回の事件の中心はリーラではなく、今まで散々暴れて名を上げてきたラザルスである。
賭博師としての腕は文句なしであって、リーラという弱点を持った彼を、「利用しよう」「仲間に引き込もう」とする人間が登場しても何らおかしくない。見るからに頭が切れそうな多くの人間が、彼に近づいてくる。
しかしラザルスも馬鹿ではない。相手の思惑をくみ取り、自分の立つべき位置を模索する。
そこで問題となってくるのがリーラの存在だ。「このまま一緒にいれば危険にさらされるかもしれない」「自分が賭博師としてやっていけなくなるかもしれない」彼は考える。
このままずっと一緒にいるのか? 彼女の幸せとは何なんだ?
……多分ずっと彼はそのことを考え続けるんでしょうね。結論がでることはなく、先送りされます。とりあえず現状、周囲のややこしく蠢く奴らをどうにかしなければいけません。リーラのために、彼は頑張ります。
まぁ、あまりリーラは登場しないんですけどね。
そんな頭を悩ます状況で、満を持して登場、元恋人フランセス。少し彼女について語らせていただきたい。
一巻にて敵として登場。元恋人で賭博師。今回も敵として登場する。
彼女は例え一度負けたとしても、賭博師としての腕は確かであって、一度負けた相手に隙を見せるほど愚か者ではない。緊迫した頭脳戦が繰り広げられていく。
……元恋人同士が賭博をする。しかもただの賭博ではない。
フランセスは負けたら奴隷になるという契約を結んでいた。つまり負けたら、彼女は人ではなくなって、リーラと同じ奴隷になってしまうのだ。いわゆる背水の陣というやつだろうか。
恋人関係になるほど互いを知っている二人。冒頭の過去話を見る限り、会話は少ないといえど、二人だけの独特な空気感や関係性が築かれている。
そんな彼女を再起不能になるまで打ち負かしてしまうのか。はたまた元恋人のために自分の身を削るのか。
舞台は賭博。「ちょっと待って」は通用しない。
彼は賭博に ”勝つ” のか。 ”負ける” のか。選択を迫られる。
オチが本当に秀逸だった。誰かが犠牲にならなければいけない状況を、これほど奇麗に覆したライトノベルが他にあるだろうか?
四巻と書いてはいるが、大きな物語の前編的立ち位置である。しかし、これでもかというくらい奇麗にオチがついているので、読んだ満足感は尋常じゃないほどある。
三巻ほどドロドロとしてないし、行っているゲームもかなりシンプルで理解もしやすい。五巻が待ちきれない。