工大生のメモ帳

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転生したら剣でした1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 1

ざっくりあらすじ

気がつくと剣の姿で異世界に転生していた。意思はあるし、魔法も使える。魔獣を倒すことで手に入る魔石を吸収することで、次々とスキルを手に入れることを楽しんでいたのだが――。

感想などなど

剣には男のロマンが詰まっている。

勇者の武器といえば剣と相場が決まっている。侍は刀、海賊はサーベルというように存在を特徴付ける意味合いも強く、その姿形は様々だ。ただ人語を理解し、コミュニケーションを取ってくる剣はそうそうないであろう。

物語としては剣の視点で進行する。そこだけ見ればラグナロクのような感じだが、世界観としては王道ファンタジーというよりはゲームが近しい。

戦闘経験を積むことでレベルが上がり、スキルポイントが貰える。それを割り振っていくことで新たなスキルを入手することができる。取得できるスキルは、一定の条件を満たすことで増えていく。剣を扱っていれば剣技といったスキルが、弓を使っていれば弓のスキルが……といった具合だ。

剣である主人公もそういった設定は同じである。人と違う部分といえば、取得できるスキルは、魔獣を倒すことで手に入れることができる魔石を吸収することで、魔獣が持っていたスキルを取得可能となる点だ。

つまり、超強い魔獣が使うスキルも、倒して魔石を手に入れることができさえすれば使うことができるようになる。普通の人間であれば手に入れる機会すら訪れない、魔獣の能力を、剣であれば手に入れることができる訳だ。

このスキル集めが超楽しい。

転生してきて早々、草原のど真ん中に突き刺さっていた主人公。そんな剣に興味津々といった様子で近づいてきたゴブリンを、最初から持っていた『念動』を使って浮遊し攻撃。するとゴブリンが持っていた『混紡術1』と『穴掘り2』が取得可能となっていた。

まぁ、いらないスキルではあるが。

こんな感じで魔獣を討伐しまくって強化されていく。

そうやって調子に乗り、敵を倒しまくりながら、とある洞窟に辿り着く。そこでも魔獣を倒していた訳だが、休憩にと突き刺さった地面がたまたま『魔力を吸収する』特性を持っていたのが運の尽き……いや、後の展開を考えると運命だったのか? とにかく主人公は魔法が一切使えなくなり、そこに突き刺さったまま長い時間を過ごすこととなってしまう。

その洞窟にたまたま通りかかり、剣を引き抜いたのが黒猫族の奴隷・フランであった。

 

黒猫族というのは不遇な種族だ。

名前の通り、黒い猫耳を持つ獣人族である。しかしながら最弱種族とまで言われており、その戦闘力は皆無に等しい。「奴隷としてでしか使い道がない」とまで言う者がいる始末。そんな言葉を受け入れ、奴隷としての生活を受け入れていたといえば、黒猫族の扱いの酷さは理解していただけるのではないか。

そんな黒猫族のフランは、勝手に魔石を回収して強くなっていく剣を手に入れた。しかも『念話』というスキルで話しかけてくるそれを、師匠と名付け、黒猫族の悲願「進化をするため」に師匠の力を借りて旅をすることになった。

この世界で生活する種族には、それぞれレベルが上限まで上がった場合など、一定の条件が揃うと『覚醒』というスキルを入手可能となる。これを使用すると、それぞれの種族は「進化」し、超強化される。

不遇とされている黒猫族は、これまで「進化」した者が一人もいないとされてきた。その理由は最弱とされる戦闘力も理由の一つだろうが、それ以上に、過去に神罰を受けたことで『覚醒』スキルが手に入りにくいように妨害がなされているという理由が大きい。

奴隷の身となりながら、黒猫族として『覚醒』スキルを入手したいフラン。世界を見て回りたい師匠。二人の利害が一致し、試行錯誤の戦いがこれから先繰り広げられていく。

 

最弱種族かつ奴隷というスタートラインは下の下から始まった。しかし、この第一巻だけでも破竹の勢いで、強さと地位を手に入れる。

強さは単純な師匠の力だけではなく、フラン自身の元々持っていた俊敏性や、「進化したい」という夢のためにひたむきに努力する姿勢、周囲の人の手助けがあってこそ。地位は冒険者として登録してから、強くなるためにこなし続けた依頼の数に由来する。

最弱族しかも子供というだけで、彼女を馬鹿にし舐めてかかる者も多い。そっちの方が多数派だ。そいつらを見返してやりたいと、いつしか読者も感情移入し、二人(一人と一本?)の戦いに入れ込んでしまう。

これから先、進化までの道のりは遠いであろう。どうにか頑張って欲しい、応援したくなるような物語であった。

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