工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中Ⅱ 感想

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻

※ネタバレをしないように書いています。

無自覚世直しファンタジー

情報

作者:秤猿鬼

イラスト:KeG

試し読み:骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 II

ざっくりあらすじ

MMORPGプレイ中に寝落ちしてしまい、目が覚めるとゲームキャラである骸骨騎士の姿で異世界に放り出されていた「アーク」。知らぬ間に王女様を助けたり、蘇生魔法を使ってしまったりと、波乱に満ちた平穏とは真逆の生活へと向かっていく。

感想などなど

「アーク」の旅の目的は、自身にかけられた骸骨の姿になる呪いを解呪する……ということになっている。あながち間違いではないのだが、その実態は遊んでいたゲームで作った設定を持ち込んだに過ぎないということ。

ただ骸骨の姿のままでは人前で食事を取ることもままならず、もしも姿を見られでもしたら討伐対象になってしまう。骸骨の姿を見ても攻撃してこなかったダークエルフの女騎士・アリアンは、ある意味で異端なのだろう。

しかもエルフの長老に話を通して、彼の旅の手助けをしてくれるというのだからありがたい。その一環として教えて貰った呪いを解呪できるかもしれない泉の場所を教えてくれた。

アリアンのエルフ解放の旅に協力すると共に、骸骨姿から人型へと戻る旅も着実な成果を上げている。第一巻とはいえ、なかなかにテンポ良く物語が進行している。

ただ注目すべきはアークとアリアンの旅路だけではないというのが、本シリーズの頭の痛いところだ。主に東側と西側の国々の思惑が交互に描かれ、それぞれの悪事が語られていく。

まぁ、その悪事はことごとくアークが(無意識に)潰して回っている。運が悪いというべきか、間が悪いというべきか。悪はこうして討たれると相場が決まっているのかは定かではない。

姫の山賊襲撃も仕組まれたものだったし、ジャイアントバジリスク二体が暴れていた事件も仕組まれていたもの。大抵の普通じゃない事件は、その裏に陰謀があると考えるべきなのだろう。

とにかく、アークの無自覚な世直し旅は続いていく。今回も勝手に悪巧みが目の前で起きて、適当にぶった切って終わっていくことは言うまでもない。

 

これまでのアークの行動は目の前の悪事を放っておけないという人間らしさが、事件に首を突っ込んでいく内容であった。まぁ、見るからに野蛮そうな男達が女性達をなぶっていたら女性を普通ならば助ける。ジャイアントバジリスクが目の前に出てきたら狩る。

巻き込まれたアークに同情すらするくらい、向こうから悪事が舞い込んできていた。

ただアリアンとの出会いから自ら厄介事に首を突っ込んでいった。今回も自らやばくなると分かるような状況を引き起こしていく。

例えば。

とある移動中の女王達一行が山賊達の襲撃を受けて全滅した。当然、女王も死に、目的を達した者達は颯爽と撤収。その襲撃後の惨状にやって来たのが、我らがアークである。

目の前に広がる惨状はそれはそれは酷い者である。女王達一行の騎士達は抵抗した跡が見える。しかし敵の方が地の利的にも、強さ的にも上手だったらしい。双方で相応のダメージを負っては居るが、最終的に女王を守ることができなかった騎士達の敗北は目に見えている。

そこでアークが取った行動は、なんと「死者蘇生魔法」である。

この世界には死者蘇生の魔法など存在しない。正確には存在はするのだろうが、おそらくアーク以外の者には使えない禁術であり秘術。それを女王に試しで使ってみてしまったのだ。

使った後で自分のやったことのヤバさに気付いたアーク。「まぁ、いいか」の精神でいるが、それがこれからどのような事態を引き起こすか分かっているのだろうか。

まず目を覚ました女王は殺されたはずなのに自分が生きている現状に困惑する。ついでに周辺の騎士達も復活させていたので、一緒になって目的地へと向かっていく。敵達はそれを阻止するために襲撃し、目的を達成して意気揚々と依頼人に報告……しかしながら女王は目的地に着いているので困惑する。

それが結果として巡り巡って世直しに繋がっていくので、アークと同じく「まぁ、いいか」の精神で読者も読み進めることになる。

アークとアリアンの仲も深まっていくし、世直しもされていくし、エルフの解放の時も近いし、ストレスフリーな旅であった。

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻