工大生のメモ帳

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【漫画】違国日記4 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

不器用な二人の共同生活

情報

作者:ヤマシタトモコ

試し読み:違国日記 (4)

ざっくりあらすじ

姪との奇妙な共同生活を綴った槙生のエッセイを見つけた朝。そこでは自分のことが犬と例えられ、不思議な感覚として描かれていた。

感想などなど

「――わけあって犬のようなものと同居することとなった」

という一文で始まる槙生のエッセイを見つけた朝。朝のことを犬のようだと表現しつつ、自分が感じている息苦しさや犬(=朝)と接する難しさを赤裸々に語っている。おそらく朝に見られることは想定していないのだろうが、朝は槙生のTwitterをしっかりとフォローし監視している。

まぁ、見られないことを想定しているとはいっても、ネット上に公開しているという時点で、見られたとしても文句は言えまい。自分もこんなブログを作成して公開している時点で、知り合いに見られる覚悟はしているつもりだが、できるだけ見られたくないという心情はよく理解できる。

書いてるくせに見られたくない。矛盾しているが共存している。

だからこそ文章を書くということは面白く、そして難しい。友人でブログを始めて一週間でやめた人がいる。アフィリエイトのやり方などを聞いてきたことから察するに、金稼ぎの目的だったのだろう。

一週間でやめた理由について、友人はこう語る。

「書くことがない、相手が見えないのは辛い」と。どうにも相手が見えないというのは、文章を書く上で大きな障害となるらしい。大学のレポートは課題に沿った文章をまとめ、教授に提出する。ブログやエッセイには、課題も提出相手もいない。なんとも実態がない虚無な作業ではないか。

朝の母にして槙生の姉・実里は、文章を書くことは嫌っていたようだ。小説を書いてばかりいた槙生を、大人になれないとまで言い切った辺り、小説を書くことを下に見ているように感じられる。

そんな朝の母親が、娘に向けての日記を書き残していた。あれほど文章を書くことを忌み嫌っていたように描かれていたというのに。朝が二十歳になったら読ませる、というような書き出しとなっており、ただの書き殴りではなく、娘に向けた手紙ということだ。

何を思ってその日記を書いていたのか?

この日記を朝に見せていいのか?

槙生は悩みながら、その日記を戸棚の奥に隠した。この日記が開かれるのはいつになるのだろうか。

 

ある日、朝と槙生はおばあちゃん宅へと行くことになった。理由としては「朝と実里はよく行っていたから」という目的もない漠然とした理由だ。槙生としては五年ぶりの実家となる。

ブログ主は大人になってから、実家に帰る機会は少なくなった。理由を聞かれても困ってしまうが、金銭的・時間的・心理的余裕が重なった結果のように思う。槙生の場合も大差ないようだが、もう少し複雑な理由があるようだ。

第一巻、実里の死体確認を断ったおばあちゃん。「親より先に死ぬ子がありますか」と言いながら、朝に死体を確認するようにお願いしている。中学生の娘に母親の亡骸の確認をさせるとは……そのことがどうにも許せないでいるようだ。

家に行ってみれば、効果のあるか分からない水素水の段ボールが山積みになっている。本人は真面目に水素水の効果を信じ、そこそこ金を費やしているらしい。若い頃はもう少し賢かったと語る槙生の表情は寂しげだ。

ただどんなに歳をとって会わなくなっても、たとえ死んだとしても、両親の存在というのは大きいのだということが分かる内容だった。

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