※ネタバレをしないように書いています。
無自覚世直しファンタジー
情報
作者:秤猿鬼
イラスト:KeG
試し読み:骸骨騎士様、只今異世界へお出掛け中 VI
ざっくりあらすじ
『教会に気をつけろ』という言葉を残して消滅したチヨメの兄弟子サスケ。彼の言葉の真意を探るべく、彼の辿ってきた経路を追跡していくことにしたアーク達一行。その道中、謎の不死者軍端に襲撃されているノーザン王国の姫君と遭遇し、彼女らのを助けることになるが――。
感想などなど
巨人をけしかけ人族の街・タジエントを襲撃させたのは、まさかのチヨメの兄弟子サスケであって、しかしそのサスケは死んだ後に何者かに操られているらしかった。そんな彼が最後に残した言葉が『教会に気をつけろ。
アークが最後にぶっ倒した気持ち悪い生物は、ヒルク教の枢機卿の一人・インダストリアが変異した姿であるということ。インダストリアの一人称はボクちんで、威厳の欠片もないこと。教皇に貰ったサスケを使って、自分が治めていたタジエントを潰させようとしていたこと……などなど読者視点では黒幕は丸わかりである。
しかし、ヒルク教が何を思ってこのようなことをしているのかまでは分からない。
とにかく悪いことをしようとしていることは分かるが、それらがことごとくアークによって潰されている。これは神に止めておけと言われているのではないか? と疑いたくなるような間の悪さであるが、彼らは作戦を強行させようとしているようだ。
さて、そんなヒルク教の次の標的は『ノーザン王国』。謎の不死者の軍勢の襲撃を受け、援軍要請をディモ伯爵に届けるように命を受けたリィル王女の視点で、この第六巻は始まっていく。アークよりも彼女の方が主人公っぽい活躍と使命感に燃えている。
しかし主人公は骸骨騎士アーク。彼は彼なりにチヨメとサスケのことを気にし、サスケのこれまでの行動を調べようとする彼女に協力することを誓った。これにより巨悪であるヒルク教の幹部連中に目に物見せることができるかもしれない。
これまでトマトを取りに行ったり、唐辛子を取りに行ったり、アリアンに雇われてついて行く形であったりと、どこか受け身なことが多かったアーク。当初は「目立たない平穏な生活」を、という考えだったためにそうならざるを得なかった側面もあった。
しかし、隠すべきだった骸骨の姿を気にしないアリアンという存在の出現や、解呪の泉の水を飲めばエルフの身体ではあるにせよ、姿を取り戻すことができることにより、その目的も消失しつつある。
ここからは大分自分から進んで首を突っ込んでいく。
サスケの痕跡を追うために海を渡り、帝国のある大陸へと戻ってきた一行。ひとまず向かうは帝国方面……明確な目的地はない状況だった彼らの前に、人の面影が残った腕が四本ある蜘蛛のような不死者に襲撃されるリィル王女御一行と遭遇した。
まぁ、流れるように不死者を倒して彼女たちを助けるアーク達。勧善懲悪、心地よいくらいにあっさりと打ち倒される敵と、腕がちぎれていた騎士を魔法で治すアーク。いやはや見慣れているので誤解してしまうが、ちぎれた腕を繋げる治癒魔法を使える者は大神官くらい……つまり一介の騎士では扱えない奇跡である。
リィル王女はそんな彼らに護衛を申し出る。今の彼女にとって、今は国の命運を左右する一大事。ディモ伯爵の領地にまで辿り着くことができなければ、援軍を要請することができず、不死者の軍勢によって国は滅びる。まだ幼い彼女の肩に乗っかる重圧は、かなりのものであろう。
ヒルク教にとって、エルフとは神の技術を盗んだずる賢い種族とされている。今は条約によってエルフを奴隷化することは禁止されているとはいえ、根強くエルフを奴隷として捕らえる者が後を絶たないことは、ここまでシリーズを読んできた方ならばご存じのはず。
そんなヒルク教を進行する国の王女が、エルフであるアークやアリアンに協力を要請したことの重みを、重々理解しなければいけない(気に食わない護衛もいるようだが、負傷した彼・彼女らを治癒したのはアークである)。
そんな状況を利用し、アークは彼女らに取引を持ちかける。自分たちが護衛を引き受け、ついでに国のために不死者の軍勢と戦う代わりに、サスケの痕跡があると思われる『ノーザン王国』の宝物庫を見学させて欲しいと申し出たのだ。
まぁ、リィル王女は断れない。この取引が気に食わない護衛がいるようだが……こいつらじゃリィル王女を守り切れないんだよなぁ……。
ここから始まるアークの活躍は、歴史書に刻まれることだろう。おそらく今後の歴史において、大きなターニングポイントとなる。それくらいに派手で、目立つ活躍をしてくれるのだ。
本作は他の人の視点も挟まるのだが、それを見るとアークの神々しさ(?)、荘厳さ(?)が凄まじい。ヒルク教? いやいや、見たこともない神よりも、目の前にいる奇跡の方が、人々を動かすには大きな影響力を持つこともあるかもしれない。
ないのかもしれない。
アークの強さを改めて認識させられる第六巻であった。