工大生のメモ帳

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魔女の旅々8 感想

【前:第七巻】【第一巻】【次:第九巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

魔女。そう、私です。

情報

作者:白石定規

イラスト:あずーる

ざっくりあらすじ

灰の魔女・イレイナが世界を旅する物語。

「大切な人のための大切な日」「不死の病」「よそはよそ」「悪の組織へようこそ」「猫耳喫茶へようこそ」「フレデリカ」「星屑が降る夜」

感想などなど

「大切な人のための大切な日」

さて、問題です。この話は誰の視点でしょーか?

ヒント1。彼女はとある女性に会うために、今日という日を待ちわびていました。

ヒント2。今日は二十二年に一度の、ほうき星が空に現れる日です。

 

「不死の病」

イレイナが箒で旅をしていると、首吊り死体に遭遇しました。その死体の本人こそが、今回共に旅をすることとなるマトリシカちゃんです。どうやら百年もの間、死のうにも死ぬこともできず、歳をとろうにもとることができなかったため、一日中死ぬことばかり考えるようになってしまったようでした。そんな彼女の自殺未遂に遭遇してしまったようです。

そんなマトリシカちゃんと向かった国では、とある疫病が流行っていました。その疫病を治すための薬を届ける仕事を請け負っていたイレイナは、役所へと赴き薬を手渡します。

しかし、その薬は全くその疫病に効きませんでした。薬に関しては専門ではないイレイナではありますが、国を歩き回っていると、どうやら国民全員が使っている泉が原因であると分かりました。

……まぁ、原因が分かったら即解決ともならないのですが。ここで百年を生きたマトリシカちゃんの叡智が役に立つ……ということもない訳で。全く予想外の形でマトリシカちゃんが活躍することになります。

 

「よそはよそ」

 うちはうち。他の場所と比較しても仕方ありませんよ、ということです。文化圏も歴史も考え方も違う他国と自国を比較して、優劣をつけるのは意味があることなのでしょうか?

ここでは互いに全く違う成長を遂げた二国を、旅人だからこそ見ることのできたイレイナ視点の物語となります。

 

「悪の組織へようこそ」

 悪の組織撲滅キャンペーンが開催されました。

内容は名前の通り、悪の組織撲滅したらそれに応じた報奨金がでるイベントになります。それに参加することとなってしまったイレイナの現地妻たち。ストーカー女サヤに、コーヒーを飲むと吐いてしまうハードボイルドのユーリィに、イレイナに救われた騎士アムネシア、魔法使いの格好をしているだけのシャロン……という豪華メンバーが参加し、何もかもを滅茶苦茶にしていきます。

悪の組織と巻き込まれてしまった人々には同情します。なにせ彼女たちはイレイナも認める変人たちなのですから。

 

「猫耳喫茶へようこそ」

 こちらも悪の組織撲滅キャンペーンにイレイナ参戦エピソード。

最初は猫に触れる喫茶と勘違いして、猫耳喫茶に来たら猫耳の猫人族が働いているだけの喫茶で、落ち込んでいるイレイナに、たまたま今いる猫耳喫茶でマタタビという危険薬物が横行しているという話を聞いて調査に乗り出すことで、猫耳を付けてイレイナが働きだします。可愛い。

性格の悪さによりツンデレのデレが消え失せてしまいましたが、まぁ、いいでしょう。そういうのが癖になる変態が、この国には多いようですから。

 

「フレデリカ」

 とある国に、とある双子が生まれました。その国において双子は忌み嫌われる存在であったため、双子が全く違う性格と容姿になることを願った両親は、徹底的に二人を区別した育て方をしました。

何でもできる優秀な姉は放置。

あまり優秀ではなかった妹は、たくさん褒めて、たくさん買い与えて……大切に育てました。

結果として両親の思惑通り、全く違う姉妹になりました。それはまるで光と影のように。誰からの愛も貰えなかった姉は捻くれて引き籠りがちになり、愛をたくさん受けた妹は心優しく育ちました。

両親にとっては素晴らしい結末でした……だと思っていました。双子が十五歳になった時、姉が妹の殺害未遂をしてしまうまでは。妹を殺そうとしたことで家を追い出された姉と、旅先で出会ったイレイナが聞いたすべての真実と双子が辿る結末の物語。

 

「星屑が降る夜」

 イレイナがその国に訪れると、とっくの昔に滅びていました。

しかし、国の奥地の祠にて、たった一人生き残った少女がいました。国に残された幻影のようなものを辿ってみるに、彼女は毎年捧げられる生贄に選ばれ、祠に閉じ込められてしまったようでした。しかし、それはなんと二十年前。少女の様子を見るに十一歳といったところでしょうか?

どうやら不思議な力により、生贄とされた瞬間から二十年後の現在に時間移動してしまったということのようです。とりあえず戻り方や、国が滅びてしまった原因を調査しつつ、その少女の願いにこたえる形で魔法を教えてあげました。

この物語は何より結末が綺麗です。星屑が降る夜空を背景に、第八巻のイレイナとはお別れです。きっと彼女たちはこれからも楽しい未来が待っています。

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