※ネタバレをしないように書いています。
バトルジャンキー召喚士
情報
作者:迷井豆腐
イラスト:黒銀
試し読み:黒の召喚士 9 真なる英雄
ざっくりあらすじ
神の使徒・エストリアを倒したケルヴィン一行の前に現れたのは、魔王グスタフを打倒した前勇者セルジュ・フロア。彼女もまた神の使途であった。
感想などなど
死者を蘇らせて使役する神の使徒・エストリアを倒したケルヴィン一行。実質的な不死の吸血鬼であるし、色々と聞き出したいこともあるので捕縛という形でとどめている。そんなケルヴィン達の前に現れたのが、セラの父にして、前魔王グスタフを討伐した勇者セルジュ・フロア。
当然のことながら彼女は死んでいる……が彼女は実体を持ってここにいる。
アンジェ曰く。この世で最も強い人物……あぁ、ケルヴィンが嬉しそうな表情をしているのが目に浮かぶ。
彼女の強い理由の一つに、『絶対福音』という固有スキルの存在が挙げられる。簡単に説明すると超幸運であり、創作物でいうところの主人公補正と言い換えてもいい。銃弾の雨あられを歩いて回避したり、敵の包囲網の穴を偶然掻い潜ったりといった「運が良かった」としか説明できない現象が度々起こる。
そんな最強勇者セルジュは、アンジェからの情報によると、『守護者』として召喚され、本拠地を守る護衛を担っているという話であった。しかしながら、その任務を放棄してまで彼女が出張ってきているのには何か理由があるのだろうか。そもそも今回の誘拐騒ぎの目的とは何なのか。
彼女――というよりは神の使途達の目的は、シスター・アトラだった。
いや、正確にいうならば教皇フィリップ・デラミリウスの正当なる血筋を引く者が欲しかったのだ。となると第一の候補は聖女コレットであるが、彼女の誘拐は断念。作戦遂行中にアトラがデラミリウスの娘だと気付き、コレットからアトラに対象を切り替えたという訳だ。
アトラを抱えて逃亡するアトラと、彼女と戦いたくて仕方がないケルヴィンとの鬼ごっこが始まる。
鬼ごっこは終始ケルヴィンが優位に進んでいた。『絶対福音』というスキルには限界があり、無効化される攻撃を上回る速度と量をたたき込めば良いという脳筋解決策を編みだした。その攻撃が有効ではない相手がいるんですかね……? と聞きたいところだが、まぁ、いい。
対するセルジュは死なせてはならないアトラを抱えつつの逃亡劇。世界最強と言われるだけあって、その防御力に身のこなしは伊達ではない。ケルヴィンパーティ総出の攻撃をかわせる人間は、最強と呼んでも差し支えないだろう。
そして鬼ごっこはセルジュの死亡という幕引きを迎えた。しかし、これはただの死ではない。自らの命と引き換えにアトラは本拠地に届けられ、彼女は固有スキルによって直に復活するようだ。
……何というか勇者ってチートなんだな、さすがは元主人公。
そんな戦いを経て、吸血鬼エストリアが仲間に加わった。戦いながらジェラールにベタ惚れ、過去に散々裏切られたことでやさぐれてしまったという悲しい過去、仲間になるフラグは立ちまくっていたが、そのフラグ通りに物語は展開する。
妖艶な雰囲気から一転して、弱々しい乙女となったエストリアは中々に破壊力がある。ジェラール大好き一途というのもポイントが高い。シスターの服装もなかなかに似合っている。
ただチート化が進んでいくケルヴィン一行の旅には同行しない。
ケルヴィン達が向かうのは敵の本拠地、場所は奈落の地と呼ばれる悪魔が跋扈する地獄だ。そこに向かうには東大陸トラージ領にある巨大な滝『天獄飛泉』から下るか、西大陸ファーにスト領の大火山の天辺『煉獄炎口』から下るかの二択だ。
ここで「ん?」となった方は、黒の召喚士を読み込んでいらっしゃる。
『煉獄炎口』はエフィルの母親を殺したという炎竜王が住んでいる場所である。恥ずかしながら、ケルヴィン達から指摘され「…………あぁ!」となったブログ主。そういえばエフィルの母親は、竜に連れて行かれて殺されたのだ。そのため「エフィルはいつ生まれたんだ?」という謎も出てきているのだが、それはいつか解決されることを信じている。
となるとケルヴィン達の旅路は決まった。本拠地がある奈落の地へ向かうため、『煉獄炎口』を目的地とする。ついでにそこにいる竜を倒す。その役目を担うのは、母親の敵であるエフィル。爆撃娘などと呼ばれる彼女の本気が見られることを期待しておいて欲しい。
ケルヴィンが楽しそうな第九巻であった。