※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
妖精密度
情報
作者:田中ロミオ
イラスト:山崎透
ざっくりあらすじ
わたしたち人類が緩やかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は妖精さんのものだったりします。妖精さんと人間との間を取り持つのが調停官としてのお仕事です。
そんな私たちに一大プロジェクトが舞い込みます。
絶賛衰退中の人類の全ての記憶を目指した、ヒト・モニュメント企画……
その企画の影響で”夏の電気まつり”が開催されることに。一方妖精さんは、里帰り!?
妖精さんとの絶妙なお別れの後、私たちは都市遺跡の調査に向かったのですが、
エネルギーの供給は計画的に。
感想などなど
今回の話も相変わらずのブラックユーモア、社会風刺もりもりでした。わたしちゃんの毒舌も顕在です。
物語は前回のように中編二編ではなく、長編一本でした。
舞台は人類が衰退する前に栄えていた都市。所謂遺跡と呼ばれる場所です。
そこにはわたしちゃんの住む現代にはないような昇降機やパソコン? のようなものなど、呼んでいる自分たちにとってはなじみ深い物が数多くありました。
今までは本の向こうのファンタジー色が強かったのですが、急に ”人類が衰退した” という感じが強まってきました。
そして、妖精さんという存在の生態も幾らか分かってきました。
それが妖精密度という概念。妖精さんがどれぐらい自分たちの周りにいるのかを示すものとなっており、それによって自分の環境が大きく変わってしまいます。
それも自分の生命に関わるほどに……。
簡単に言っちゃえば妖精さんが多ければ死ぬような目に遭ったとしても死ぬことはなく、逆に少なければ死ぬような目に遭えば普通に死ぬというもの。
さて、これを理解した上であらすじを見ていただきたい。
『妖精さんは里帰り!?』
……里帰りというからには、どこか遠くへ行ってしまって、わたしちゃんの前からはいなくなってしまうのでしょう。『絶妙なお別れ』とも書いてありますし。
ここでわたしちゃんがどこへも行かず、家でじっとしていればまぁ、まだ何とかなったかも知れません。しかし、彼女たち一行は謎に包まれた古い遺跡へと向かいます。
果たして無事に帰ることができるのでしょうか。
妖精密度。上でざっくりと示した内容ではよく分かってもらえないことでしょう。まぁ、本買って読めと言いたいところですが、もう少し突き詰めてみます。
まず、妖精さんがかなり多い状況。
『高層ビルから落下する』→ヒーローに助けられます。
『至近からの銃撃を受ける』→形見のペンダントが銃弾から守ってくれます。
所謂主人公補正、ヒロイン補正がかかるということですね。
さて一方、今回わたしちゃんが置かれる状況である妖精さんが0人の状況はどうなるのか。
『高層ビルから落下する』→死にます。
『至近からの銃撃を受ける』→死にます。
……普通ですね。これは冷たく冷酷な現実というやつです。
冒頭で助手が描いた絵本が登場します。
前巻で個性を手に入れたらしい彼は、大量に本を読み学習し、さらなる個性を手に入れつつありました。そんな彼の微笑ましい(?)成長をにやにやしながら楽しめます。