工大生のメモ帳

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はたらく魔王さま!3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻】

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

人の心の天使と悪魔

情報

作者:和ヶ原聡司

イラスト:029

ざっくりあらすじ

真奥のいるボロアパート前に突如としてゲートが現れ、リンゴの実が変化した赤ん坊が現れた。それだけで異常な事態であるというのに、さらに魔王・サタンのことをパパと呼び、勇者であるエミリアのことをママと呼んだ。そのまま赤ん坊を放って置くわけにもいかず、世話をすることになるが……

感想などなど

どんな鬼の子であろうとも、可愛らしい幼少期というものが存在した。純真無垢で、汚れを知らなかったというのに、いつの間にか汚れきった大人になってしまった。悲しいが受け入れなければならない現実である。

勇者として魔王討伐に命を賭けていた……あ、そういえば今も一応賭けているエミリアにも幼く、武器の握り方も知らない時代があったのだ。今となってはその見る影もない……と言ったら斬り殺されそうなので辞めておこう。

法の番人にして異端審問会のヤベー奴だった鎌月だって例外ではない。人の裁き方なんて考えようともしない子供だった時期もあるはずだ。

では、魔王はどうなのだろう? 魔王というからには、血筋により受け継いだ何かが存在するのだろうか。魔王は魔王としての矜持を、生まれたその瞬間から持ち合わせているのだろうか。

いや、待て。よく考えてみると、悪魔という存在についてどれほどの知識を有しているだろうか。我々、人間が抱く尺度と常識に則って考えていいのだろうか。ただでさえ、魔王がバイトに汗水たらしている状況を「おかしい」と突っ込んでいる状況である。まずは悪魔に対して抱いている常識というものを取っ払うべきではないだろうか。

 

まぁ、これまで散々な目に遭ってきたことにより、「天使の方がヤバくね?」という疑念が脳裏に渦巻き、「悪魔ってこんなに律儀なんか?」と首を傾げてしまっている。ふと死神は誰にでも平等に死を与えるが、神は平等に富を与えるようなことはしないという有名な話が思い浮かんだ。

今回も本人が望む望まないに関係なく事件に巻き込まれていく。

概要はざっくりあらすじで示した通りであるが、改めて説明すると、親も身元も正体も何も分からない赤ん坊を育てることになってしまったよ、という内容だ。ちなみに育てる場所はむさ苦しい魔王城、子育ての子の字も知らないような魔王がそんな芸当できるはずもなく、バイトにも明け暮れながらの子育てというのは苛烈を極めた。

まずは夜泣き。魔王城に寝泊まりする訳にもいかないためエミリアは夜になるといなくなる。それに気付いた赤ん坊は、「ママー!」と泣き叫ぶ。パパも頑張る。でも時間が経てばバイトに消える。ママもバイトでいなくなる。すると残されるのは優秀な部下(?)である芦屋と漆原の二人。

想像しよう、男二人の中心には泣き叫ぶ赤ん坊。おむつを替える技能が身につくのは、思ったよりも早かった。

 

赤ん坊は疑問符で構成されていると言っても比喩としては悪くないように思う。まず誰が送ってきたのか、分からない。 親は誰だ? リンゴから手足が生えて赤ん坊になったので、少なくとも人間ではないだろうが、その正体とは一体何だ? 敵か? 味方か?

無茶苦茶である。しかし、それでも魔王達の生活の一部に赤ん坊はなっていた。まるでずっと一緒にいたかのような、これから先も当たり前のようにそこにいてくれるような安心感。最初はおっかなびっくりだったかもしれないが、親としての顔をするようになった魔王の姿は悪くない。

そしてふと思うのだ。魔王にも親がいたのだろうか? と。

第三巻では赤ん坊の正体に関する話もそうであるが、魔王の過去についても言及されていく。明かされていく衝撃の真実と、魔王が流した一筋の涙。心ざわめく感動を、どうか味わって欲しい。

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