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【漫画】STARTING GATE! ―ウマ娘プリティーダービー― (6) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ウマ娘達の物語

情報

原作:Cygames

漫画:S. 濃すぎ

試し読み:【新装版】STARTING GATE! ―ウマ娘プリティーダービー― (6)

ざっくりあらすじ

自身が企画した「トレセン学園1周マラソン」で、一着を取ってシンボリルドルフに見てもらいたかったトウカイテイオーだったが、足を痛めて一着を逃してしまう。そのことに対して、叱る訳でもなく、ただ淡々と安静にするように告げたシンボリルドルフ。彼女の真意とは――。

感想などなど

悪いことをしたら叱られる。そんな当たり前と笑うかもしれないが、大人になって悪いことをした場合、即刻逮捕の社会的死が待っているということを、よくよく心に刻んで欲しい。

それに悪いことをしても、叱られもせずに無視されるというのは、辛いことである。「この人は自分のことを見ていない」「興味がない」と分かる瞬間というのは、なかなかに心に来るのだ。

トウカイテイオーは自身が企画した「トレセン学園1週マラソン」で、かなり無茶な走りをしたようだ。史実では異常な足の柔らかさで、いつ壊れてもおかしくない走り方をして、何度も骨折を繰り返した名馬。そのことがどうにも頭をよぎる(アニメseason2で主に描かれている)。

そんな無茶をしたのだから、どんなに怒られたって怒られたりないくらいだと思うのだが、意気消沈するトウカイテイオーに対するシンボリルドルフの対応は冷めたものであった。安静にしているように、とだけ告げて病室を後にした彼女の真意を、その場で理解できる者はいなかった。

渦中にいるトウカイテイオーは、「見放された」と更なる意気消沈。いつもは明るすぎるくらいなのに、ここぞとばかりに暗い顔を晒す。そんな彼女を励ましたのは、シンボリルドルフではなく、テイオーに憧れ続けてマラソンでは一着に輝いたナイスネイチャであって、シンボリルドルフの真意に気付いたのは、トウカイテイオーではなく、彼女に憧れを抱いていたメジロマックイーンなのだから面白い。

外から俯瞰してみている方が、気づくことは多いのかもしれない。

 

そんな中、迎えるは競技大会。学校で言うところの体育祭である。

様々な競技が催される中、それぞれが立候補した競技で競い合う。トウカイテイオーはメジロマックイーンと同じ3200メートルを選択した。

3200というのは、いわゆる長距離に分類され、競馬においては花形とも呼べる。ただスピードだけでなく、最後まで走りきることのできるスタミナや、カーブや坂が増えることによる戦略性がものをいう。

ちなみにメジロマックイーンは長距離にはかなり自信があるらしく、経験は豊富だと語る。一方のトウカイテイオーは、3200という長い距離を走ったことはない。どちらかといえば、マックイーンがかなり優位だといえる。しかし、これまでのテイオーの圧倒的で天才的な走りを見てきた者達からしてみれば、彼女の自信満々の笑みと余裕を見れば、彼女を応援したくなる気持ちもよく分かる。

「今日も楽しく走って一番になるぞ!」と威勢よく言ってのける姿は、正しく主人公と呼ぶべき貫禄であろう。

しかし、その勝負は2バ身差でメジロマックイーンの勝利であった。

周囲はその勝負を接戦だと称え、二人の関係を好敵手だと評した。その声を受けて、「ボクたちライバルとして頑張っていこうね!」とマックイーンに伝えたテイオー。それを聞いたマックイーンの答えはとても冷たい。

「私はあなたのことをライバルとしては見ていません」

「見ている世界が違いますので」

 

トウカイテイオーはメジロマックイーンとの勝負中、観客席にいたシンボリルドルフを見ていた。レースの進行はテイオー目線で描かれるため、そのことがとても分かりやすい。彼女は目の前にいるマックイーンではなく、ルドルフに見てもらうことだけを考えていたのだ。

そして、結果として負けた。それでも彼女は悔しいの言葉一つ零さなかった。彼女にとっては勝負の結果よりも、走ったことによる楽しさばかりを優先していた。ライバル相手のことも、走って楽しい相手としか認識していない彼女に対し、メジロマックイーンから見える世界は確かに違っていた。

今回の3200mのレースも、メジロ家としてのプライドも乗っていた。ライバルとして負けたくないという思いもあった。誰かがライバルとして二人を評した言葉を聞かない限り、マックイーンのことをそんな風に感じたことのなかったテイオーとの間に、大きな溝があるということが良く分かる。

テイオーはルドルフのことを見ていたが、それ以外のウマ娘たちのことは全く見ていなかった。それなのにライバルが欲しいと言っているなんて、ちゃんちゃらおかしいことであろう。

そんなテイオーがライバルと出会い、走る楽しさのその先を見ることができるのか。

アニメとはまた違った学園ものとしてのウマ娘世界を、一度は打ち切りになってしまったにも関わらず、完結まで書いてくれたすべての関係者に感謝を述べたい。

良い作品でした。

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【新装版】STARTING GATE! ―ウマ娘プリティーダービー― (6)