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【漫画】その着せ替え人形は恋をする3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

コスプレ・スクールライフ

情報

作者:福田晋一

試し読み:その着せ替え人形は恋をする 3巻

ざっくりあらすじ

初のコスプレイベントを乗り越えて、若菜のことが好きになってしまった海夢。その想いを自覚しつつ、次のコスプレイベントへ向けて準備を進める。そんな中、新たな美少女コスプレイヤー、ジュジュが新菜の家を訪れて……。

感想などなど

これまで海夢が若菜を振り回すような内容であり、その構図はこれから先も変化することはない。しかしながら、海夢が若菜への恋心を強く自覚するというイベントが加わることで、本作はラブコメへと昇華された。

ただの好きではなくベタ惚れとなった海夢の破壊力は絶大であり、読者はとてつもないダメージを受ける。滅茶苦茶甘い砂糖菓子を口に突っ込まれたような、とにかく甘い物語ができあがる。

ラブコメにはライバルキャラが付きものだが(最近はあまりいない気もする)、この作品にはいない。一応この第三巻で、美少女コスプレイヤー・ジュジュ様が若菜のコスプレを着るレイヤーに名を連ね、フラグも立っていながら、この後、第九巻に至るまで登場しないという徹底ぶりである。

ジュジュ様の美少女っぷり、夢やコスプレに対する向き合い方や考え方、若菜や海夢に対する気の使い方など、ジュジュ様を好きになる要素をふんだんに詰め込んでいながら、これから先の物語に長らく絡んでこないのは新手の拷問かと思う。

……とにかく。第三巻では新たな先輩コスプレイヤー・ジュジュ様に、コスプレに関して色々と教わりながら成長しつていくラブコメとなっている。

 

今回、喜多川海夢(とジュジュ様)がするコスプレは、『フラワープリンセス烈‼』という女児向けアニメのキャラクターだ。前回のエロゲ同様、オリジナル作品ではあるのだが、どこか既視感のある……女児向けアニメとは思えないような設定の作品である。

ジュジュ様はそんな ”烈‼” の主人公のライバルキャラ・二階堂シオンのコスプレ衣装の作成を若菜に依頼する。その気合いの入れようはかなりのものだ。「絶対に手を抜きたくない」「妥協したくない」という彼女の熱量に、若菜はしっかりと答える。

ジュジュ様の大ファンである海夢は、彼女と合わせ(同じアニメキャラのコスプレをし一緒に撮影をすること)をしたいがために、二階堂シオンの姉・二階堂ネオンのコスプレ衣装作成を若菜に依頼する。

二人の衣装を同時に作成するというのは、かなーーーり大変だと思うのだが、そこは一度の作成で手慣れた若菜。上手にこなしてしまう。やはりこいつ天才である。

その過程で描かれるは、ジュジュ様のコスプレに対する向き合い方であったり、コスプレ撮影の手法である。撮影をしているジュジュ様の妹・心寿が語るカメラの技は、とても勉強になる。

背景をぼかすことでレイヤーを引き立たせる背景ボケ。レイヤーより前にあるものをぼかせることで優しい雰囲気を演出する前ボケ。シャッタースピードを操作することで散る花びらをブレずに写す手法。

作中で説明される技術以外にも、おそらくもっと多くの技が撮影にはあるのだろう。それらを駆使し、可愛いレイヤーをより可愛く。かっこいい姿をよりかっこよく。アニメや漫画の中にしかいないような夢の存在を、現実にいるように錯覚させる技がコスプレをより楽しいものへと昇華させているのだ。

そのことが良く分かる内容となっている。

 

創作を一度でもしたことがある者にとって、自分の作品を見て感想を述べてくれる人は神に等しい。感想をくれる人がこの世界でたった一人だったとしても、その一人のために作品を書き続けることができるくらいには、大きな意味がある。

若菜にとって、その一人が海夢だった。自分の力を求めてくれること、そして、作り出したものを褒めてくれること。一緒に涙を流してくれること……その全てが彼にとっては救いであり、コスプレ衣装を作り出す原動力になっている。

この作品で描かれるのは、創作を志す者にとっては夢のような世界だと思う。自分にこんな言葉を投げかけてくれる人がいたら……と妄想を広げてしまった自分を、どうか許して欲しい。

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