※ネタバレをしないように書いています。
コスプレ・スクールライフ
情報
作者:福田晋一
試し読み:その着せ替え人形は恋をする 4巻
ざっくりあらすじ
ついに衣装を完成させ、あとは残されるは撮影だけ。しかし、若菜には海夢やジュジュにも内緒で推し進めていた計画があった。
感想などなど
「自分の好きなものややりたい事を人に言うのって勇気が必要なんです」
作中の若菜の台詞である。思い出されるのは第一巻にて、自分が頭師であることを隠している若菜の姿だ。学校に人形の頭を持って行き語りかけるシーンは、何も知らない者からしてみればホラーなのかもしれない。だがそれが彼にとっての好きの表れであり、それを否定されることが怖かったからこそ、その好きを隠し続けてきた。
そんなやりたいことを他の人に打ち明けることの難しさを、彼は良く知っていた。
その難しさの壁を易々と打ち壊し、好きを宣言し続ける海夢の姿は、きっと若菜の目からはまぶしく見えていたのだろう。そんな彼女に憧れて、彼は彼女のためにコスプレ衣装を作った。
その縁は一度では終わらず、ジュジュ様の衣装も作るにまで至った。この第四巻では衣装が完成し、あとはジュジュ様が怖がっていた廃病院での撮影のみとなった。廃病院の薄暗さを生かしたり、逆光を取り入れた撮影方式などは勉強になる。
ただ注目すべき点はそれだけではない。撮影を前にして、ジュジュ様と海夢に隠れて若菜が推し進めていた計画がお披露目となる。
第三巻の感想では登場しなかったが、ジュジュ様には撮影係を担っている妹・心寿がいる。撮影技法に関しては、彼女から学んでいる。中学生でありながら、これまで培ってきた撮影技法はかなりのものであるし、中学生とは思えないスタイルは若菜をドギマギさせる。
そんな彼女には大好きな姉にすら言えない秘密があった。
それは……『コスプレがしたい』というもの。
このように文章で書いてみると、それほど大した秘密ではないように思えてしまう。しかしながら心寿は、「自分は姉のようにスタイルが良くない」「自分がしたいコスプレは自分に似合わない」と悩み、「そんな自分がコスプレをしても姉に否定される」ことを恐怖した。
その悩みは若菜にも共通する。自分のしたいことをして、それが他人に否定されることが怖いのだ。誰もが抱くであろう共通の悩みを、若菜は解消してあげたいと思った。そのために海夢やジュジュ様には黙って、彼女にコスプレをさせてあげるべく行動を開始する。
問題はいくつかある。
まずは金。コスプレ衣装を作るにしても金がかかる。その費用はジュジュ様や海夢が出してくれていた。しかし心寿はバイトをしておらず、あまり費用を出すことができない。これはゆゆしき事態である。
次に心寿がしたいコスプレしたいキャラクターが問題であった。彼女は『フラワープリンセス烈‼』の颯馬お兄ちゃんになりたいと言い出したのだ。これは非常に難易度が高い。
男装自体は検索すればそれなりに技術が検索すれば出てくる。衣装の作成自体も ”金さえあれば” それほど問題ではないだろう。しかしながら先ほども書いた通り金がない。
さらに心寿はめちゃくちゃスタイルが良い。直接的な表現をすれば(作中、若菜は必死に直接的な表現を避け続けているが)、胸がめちゃくちゃでかい。男装をするにしてもこの胸を何とかしなければいけない。
こうして心寿の男装計画が進行していく。
若菜の心寿の好きを叶えてあげたいという意地が、素晴らしいコスプレを生み出していく。このエピソードは好きを押し通せない人達に希望を与えつつ、金がなくてコスプレができるという人達にも希望を与えたのではないだろうか。
最高のコスプレ撮影会であった。