※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
一緒にこの地球を侵略しましょう
情報
作者:小川麻衣子
出版:小学館
試し読み:ひとりぼっちの地球侵略 (6)
ざっくりあらすじ
体育祭を前にして、凪は唐突に岬一へと宣戦布告し、負けた方は勝った方の言うことを一つ聞くということに。そして大鳥希によく似た小さな女の子も行動を開始する。
感想などなど
「決まってるだろ、宇宙人は全部ブッ倒して、俺が地球を守ってやるんだ」
第五巻、最後のページにて、「これからどうするの?」という謎の小さな女の子の問いに対する凪の答えだ。無関係な一般人を傷つけるなと、相方であると思われる少女には釘を刺し、『地球を守ってやる』という一見すると正義の味方と思えなくもない発言……しかし、影刺す彼の表情は印象深い。
彼の心に宿るは正義感か? はたまた別種の感情か?
とりあえず変化していく人間関係を見ていきたい。
第三巻は文化祭、第五巻は夏休み、この第六巻では体育祭が物語の舞台となる。白と赤に別れてスポーツで争う一大イベントを目前にして、それぞれ複雑な思いを胸に抱え、闘志に燃えているらしい。
例えば。
アイラ先輩は、岬一の兄が来ると聞き、隠しているつもりなのだろうが浮き足立っている。希にそそのかされ(煽られたとも言う)、彼女自ら弁当を作ってくることなってしまった。彼女が体育祭前日にどんな感じで慌てふためく姿が容易に想像できよう。
希先輩は人間離れした身体能力を期待される。実際、彼女が本気を出して勝てる人類は地球上にいないであろう。そのため、全力を出しすぎず、適度に勝てるよう力の調整が必要になってくる。それで楽しめるのか? という疑問が出てこないこともないが、彼女は彼女なりの体育祭の楽しみ方があるらしい。
何も知らないみたいな顔をしている凪は、岬一に勝負を仕掛ける。対決方法は、『出場した競技の成績が良い方が勝ち』というシンプルなもの。そして負けた方は勝った方の言うことを一つ何でも聞く。岬一としては身体が弱い凪のことを心配し、無理のない範囲で付き合おうと考える。
だが読者は、凪が ”何か” を抱えていることを知っている。平和な一風景が不穏に見えてしまうのは正しい見え方だと思うのだ。
そんな凪と岬一の勝負の行方は、どちらが勝っても何も変わらなかったと思う。
みなさんは第六巻を読んで、どう思うだろうか?
そんな裏で希先輩によく似た少女は計画を推し進めていた。それが第六巻の後半になって発動されていく。
希先輩は小さな少女の前に降り立つ。
岬一とリコとアイラは、これまで出会った宇宙人とは比べものにならないくらい強い相手と戦うことになる。
それぞれが守りたいもののために戦っている。
さて、「地球を守ってやる」と言った凪はどこにいるか?
守りたいものができた者達と、守りたいものを見失った者達の周囲の環境が、劇的に変わっていく第六巻であった。