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【漫画】よふかしのうた13 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

今日に満足できるまで夜ふかししてみろよ

情報

作者:コトヤマ

試し読み:よふかしのうた(13)

ざっくりあらすじ

鶯アンコと一緒に、マヒルを連れていった星見キクの調査を開始した。しかし、それを妨害するかのように吸血鬼の襲撃を受ける。彼、彼女らの目的は一体……?

感想などなど

イケメン吸血鬼・アザミさんと、目隠れ美女吸血鬼・ススキさんの襲撃を受けてボロボロになった夜守(とナズナの住んでいる家)。壁をすり抜けることができる能力を最大限利用する戦闘は見応えがあるものであった。これまでバカ力で殴るか蹴るしかなかった戦いに深みが出たとでも言っておこう。

これによりただの人間から半吸血鬼へと無事にジョブチェンジできた感じがある夜守くん。「夜守くんがどんどん人間じゃなくなっていく……」という探偵さんの言葉が、この状況を端的に説明している。

改めて思う。夜守君は立派な夜の住人になってしまった、と。

それは悲しむことではなく、むしろ彼が生き生きとできていることを鑑みれば喜ぶべきなのだろう。さらに喜ぶべきことに、夜の住人であるからこそ友達であるマヒルを救える可能性がある。昼の住人であれば、誰に対しても心を閉ざし続けたマヒルの現状に気付くことはなかったのだから。

読者は察しているであろう星見キクの目的は、恋した相手の血を吸うと死んでしまうという吸血鬼の噂を確かめて、同時に自分の愛を証明するため。マヒルの血を吸って自分が死ねば、命と引き換えに自分の愛が証明できるという寸法である。

ただ「恋した相手の血を吸うと死んでしまう」というのは、あくまで噂に過ぎない。誰かがついた素敵で残酷な嘘であれば、マヒルが吸血鬼となって自分も生きながらえる。これまで数多くの眷属を作ってきたのは、これが繰り返されてきたためのようだ。

今度こそ本気で愛することができたと思い、相手の血を吸う。自分は何も変わらぬまま、相手だけが吸血鬼となり地獄を見る。悪意のない負の連鎖が繰り返され、「今度こそは……!」という思いに囚われた彼女を止めるには、本気で恋をするしかないのかもしれない。

果たして、星見キクは恋ができるのか。

生死を賭けた恋が、終わろうとしていた。

 

愛を証明しようとした時、色々な方法がある。それらが歪んでしまったとき、ストーカーだとか、まぁ、色々な犯罪が起きたりもする。恋愛感情を自覚したとして、それを伝えることの難しさ、その関係性を次に持っていくことの難しさはご存じのことだろう。

恋をしたことがない夜守にとっての初恋は、血を吸ってもらって吸血鬼になれた時に成就する。人から吸血鬼への恋の矢印は、眷属になるという形で現れるのだから、当然の帰結だ。分かりやすくて助かる。

しかし吸血鬼から人への恋愛感情は、どのように自覚することができるのか。ナズナの母親は、愛する男との間に子供をもうけた。カブラは愛する女性の子供を、母親代わりに育て上げた。ナズナは普通の中学生みたいに恋を自覚し、惚れさせることを目指し頑張っている。

さて、星見キクはどのように愛を証明しようとしたか。

先ほども書いたように、自らの死を持って証明することにした。文章として書くことで改めて思うが、自己中心的な愛である。自分が死ぬことで、残される相手のことを全く考えていない。

自分が死ぬため……つまりは愛するために、相手からの愛を必要以上に求めている。だからこそ、男に必要以上の選択を要求する。大切な家族を捨ててでも自分を選ばせることで、「愛されている!」ということを強く理解し、自分の愛を強化する。生贄を捧げて強くなるモンスターカードでもあるまいし、

その狂気が強く発揮される第十三巻であった。

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