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アサシンズプライド9 暗殺教師と真陽戴冠 感想

【前:第八巻】【第一巻】【次:第十巻
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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

神の御子

情報

作者:天城ケイ

イラスト:ニノモトニノ

ざっくりあらすじ 

王爵セルジュの結婚式を間近に控え、聖王区に夜界からの使者が次々と訪れる中、クーファはヴァンパイアの姿でこの集いの中に紛れ込む。そこで協力を仰いだ相手が、まさかのワーウルフ族のボス、マッド・ゴールドで――。

感想などなど

第八巻にて、ワーウルフが闊歩し、人類とランカンスロープとの融和が進んでいる……かのように見えていたが、実際は血を流さずにフランドールを夜界に変えて、乗っ取ってしまおうという計画が実行されつつあるということが判明。

そんな計画を阻止すべく、学院長や聖都親衛隊に名を連ねるような強者達による戦闘シーンは圧巻の一言。特に学院長が学院を守るために出した切り札はかっこよかったですね。多くの登場人物達に見せ場が用意されており、目の離せない展開が第九巻でも続いていきます。

さて、少し状況を整理しておきましょう。

現在のフランドールは、《神の御子》を筆頭にフランドールを救済すべく動く陣営と、フランドールを乗っ取ろうとするランカンスロープ陣営の計二つに分断されています。ここではそれぞれ『救済陣営』と『夜界陣営』とでも名付けておきましょうか。

理解すべきは『夜界陣営』がフランドールを乗っ取るためにとる『作戦』であり、それを知ることができなければ『救済陣営』がフランドールを救うことなど出来るはずがありません。

第八巻にて、『夜界陣営』がネクタルの光を奪うことで、フランドールそのものを夜界にされてしまうということが判明し、それを防ぐための戦いだった訳です。しかし、『夜界陣営』の作戦をそれで完全に防いでしまえたという訳ではありませんでした。

どうやら『夜界陣営』というのも一枚岩ではなく、様々な思惑が入り乱れていることが分かっていくのです。

 

通信が奪われつつある『救済陣営』。そこで新たな通信手段を手に入れるために、クーファとメリダの二人で行動した矢先、大量のワーウルフに囲まれてしまう。そこから脱出する手段として、あらすじでも示した通り、ヴァンパイアの姿でその『夜界陣営』であるかのように装うことで切り抜けることにしました。

そして次いでのように、マッド・ゴールドと顔合わせ。

夜界の王として扱われるヴァンパイアは、どうやら特別扱いされている模様。

「丁度いいや、というか逃げ出せなくなっちゃったし」ということで、メリダを人質として明け渡しつつ(というか彼女が自ら名乗り上げた)、クーファがセルジュを暗殺する代わりにフランドールを諦めるように話を進めていくことに。

この辺りの内容がかなりややこしい。ここで大切になってくるのが、『夜界陣営』も一枚岩ではないという情報。

どうにもマッド・ゴールドの目的はフランドールを乗っ取るということよりも、燃料もなくエネルギーを生み出し続ける永久機関にあるようであった。話を読み進めていくと、永久機関の作り方や夜界におけるカーストや紛争の説明が行われていく。

それらを超簡単に要約すると、マッド・ゴールドの目的は『夜界の統一』であるらしかった。

さて、ここで察していただける方もいるのではなかろうか。

『夜界の統一』? 皆が喜び勇んで統一されるはずがあるだろうか……と。

 

ここまで読み進めてセルジュ=シグザールの存在を忘れていた人もいるのではなかろうか。彼も無論、ストーリーに深く関わってくる。

……いや、正確に言うならば、シグザール家にかけられた呪いと言うべきだろうか。

第九巻の冒頭にて、シグザール家やその他の貴族達が、海にて大量のランカンスロープ達と戦っている姿が描かれていく。それにより多くの命が奪われたが、ランカンスロープは救われた。そこでの生き残りの一人こそが、セルジュ=シグザールであった。

物語を読み進めていくものの、中盤までその冒頭の意味は良く分からない。しかし、後半になるにつれて、その冒頭が全て――いや、悪夢の始まりだったということが明らかになっていく。

そして、これまで明かされてきた情報や謎。

セルジュ=シグザールがプロサム=プリケットを支援して、ランカンスロープの研究をさせていたこと。

書庫で見つけた文献に書かれた、神の御子という言葉。

一連の革命を起こした理由。

などが一気に解明されていく。

アサシンズプライドはまだまだ続いてくものの、二年生編としての一区切りが綺麗についた巻であった。

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