工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【アニメ】「アサシンズプライド」第十二話【感想・解説】

【前:第十一話】【第一話】【次:な し】
2019秋アニメ化リスト

 

まず最初に

アニメ「アサシンズプライド」の記事もいよいよ最終話に突入致しました。遅れに遅れてしまった感想記事でしたが、無事に最後まで書き上げることができてホッと胸をなで下ろしております。

おそらくですが、大半の視聴者が登場人物の名前ですら覚えていないのではないでしょうか。設定をアニメだけで理解できて人もいないでしょう。なにせ提示されている情報がかなり制限されています。まぁ、アニメなので仕方がありませんが。

用語・人物解説

クーファ=ヴァンピール

f:id:TOkuro:20200322003449j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 学院長達と別れた後、メリダを探してビブリアゴート内を彷徨っていた。〈侍〉による探知は強力であるし、逃げ出す人々もいたため辿り付くことができた。
  • この第三巻の戦いを経て、侯爵であるセルジュ=シグザールに目を付けられて様々な騒動に目を付けられることになる。
  • 第四巻ではセルジュの替え玉として、とある儀式に参加して相同に巻き込まれていく。 第六巻ではセルジュと喧嘩しながら、不死身の敵との戦うことになる。第七巻では何だかんだセルジュと仲良く(?)なって、協力体制を張ったりすることになる。
メリダ=アンジェル

f:id:TOkuro:20200322010434j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 〈侍〉のマナを発現させたことを知った父親は、メリダのことを否定しようとはしなかった。父親に拒絶されるのでは、と不安でしかたなかった彼女にとって救いだったことだろう。
  • 試験に合格したご褒美として、彼女はクーファに対して「これからも見守って欲しい」とお願いした。
  • 第四巻ではセルジュの替え玉をしているクーファと共に旅をすることになる。第六巻では攫われたエリーゼ達の救出へ向かい、第七巻にて人々を守るためにランカンスロープと戦うことに。今後も彼女は苦労することに。
エリーゼ=アンジェル

f:id:TOkuro:20200322012204j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • メリダを守るために力を振るう。初期でメリダの背に隠れていたことが嘘の様。
  • ロゼッティの訓練により戦闘力はかなり上がっている。しかし殺し屋としての技能を学ぶメリダとは、強くなる方向性がかなり違っているように思う。
  • 第四巻ではメリダと共に行動し、第六巻では攫われてクーファに胸をまさぐられる。第七巻ではメリダと共に共闘。
ミュール=ラ・モール

f:id:TOkuro:20200322013119j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 基本的にセルジュ側について行動し、イマイチ立場が分かりにくい謎に包まれた存在。彼女の裏側についているのが誰なのかは、第八・九巻で判明する。
  • 戦闘力に関してはサラシャと同じくらいだと彼女は語っている。しかし攻撃力に関しては圧倒的である。
  • 第六ではメリダと共闘し、第七巻ではクーファと既成事実を作ろうと画策した。いつの間にかクーファのことが大好き少女になっている。
サラシャ=シグザール

f:id:TOkuro:20200322013725j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 兄であるセルジュを信じて行動する健気な妹。しかし兄の行動の真意が分からず思い悩むシーンも多数描かれている。
  • サラシャと同等の戦闘力であるとされているが、空を自由に滑空することができる機動力は油断ならない。
  • 第六巻ではクーファに胸をまさぐられる。ついでにクーファに対して淡い恋心を抱いていることもバレる。散々である。
セルジュ=シグザール

f:id:TOkuro:20200322014241j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • この変装は隠しているつもりなのだろうか。 どっからどうみてもセルジュ=シグザールである。しかし、メリダには藁人形に見えている。詳しくは後述。
  • 次期王爵候補。第四巻では王爵の位を引き継ぐための試練(通過儀礼)を受けることになるが、クーファに替え玉として参加させている。
  • 彼の目的や行動原理は第八・九巻で描かれていく。アニメ化は……難しいか。
ウォールターの幻想譚

f:id:TOkuro:20200322015035j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 第十一話の最後にミュールが使った魔法書。効果は《物語の世界に閉じ込める》。
  • この魔法書に囚われた物はそこに記された物語の配役となり、エンディングを迎えるかそれを見つけるまで、外の世界に戻ることはできない。従来は友達と一緒に遊ぶための魔法である。
  • ルイス・キャロル著『不思議の国のアリス』の世界に取り込まれたということになる。メリダは穴に落ちてしまった少女アリス、ミュールはずっとにやけているチェシャ猫、エリーゼは少女が追いかけていたウサギ、サラシャはトランプ兵。みんな可愛い。
オルタナイトの万年筆

f:id:TOkuro:20200322033658j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
  • 《魔法書の効果を書き換える》という超希少アイテム。
  • 第十話にてセルジュがサラシャに与えたお守り。
  • 物語を書き換えて暴走させたり、使用者に望通りの役割を与えたりすることが可能。

用語・人物解説

運命法廷

f:id:TOkuro:20200322023447j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

f:id:TOkuro:20200322023631j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

 《ウォールターの幻想譚》により『不思議の国のアリス』の世界にやって来てしまったメリダ達とセルジュ達率いる面々。ここでは少し『不思議の国のアリス』について説明し、《ウォールターの幻想譚》による効果の捕捉を行っておく。

『不思議の国のアリス』は1865年にイギリスで刊行され、世界中で親しまれているファンタジーである。

庭で姉と共に遊んでいたアリスは、「たいへんだ、遅刻しそうだ」と呟くウサギを追いかけてウサギ穴に落ちてしまう。その先に広がる世界で、チェシャ猫やトランプやウサギなどの不思議な存在達と戯れる。少女であるアリスの素直な台詞回しや、不思議な世界観が魅力と言えよう。

原作における法廷のシーンというものは最終章に当たる。ハートの女王が作ったパイを、ハートのジャックがくすねてしまったことに関する裁判を行い、アリスはその証人の一人として登場する。

その法廷というものが、それはそれは滅茶苦茶である。裁判官は法律をその場の思いつきで言い、ハートの女王はすぐに首を切りたがり、陪審員は証人の発言をすぐに忘れてしまう。忘れないためにメモをしようとするのだが、文字を書けなかったりする(動物だから仕方ない)。しかもアリスは体が段々と大きくなっていく。面白いので是非とも原作を読んで欲しい。

《ウォルターの幻想譚》ではそれぞれに配役が与えられ演じることになる。それによる弊害として、認識が歪められてしまう。例えばメリダからセルジュの演じている裁判官は藁人形に見えている(原作基準)。周囲を取り囲む陪審員達も、メリダから見ると人間ではない動物に見えているということである。アニメではその設定が分からなくなっている。

良く見知った顔であれば《ウォールターの幻想譚》による認識の歪みは発生しない。エリーゼやミュール、サラシャは顔を露わにしている上、互いに見知った仲であるため配役ではない元の姿を見ているということである。

事件内容

f:id:TOkuro:20200322031057j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

事件の概要は『メリダの身分詐称疑惑』である。『メリダは、自身がアンジェル家の娘ではないのに、アンジェル家の娘として生きているのでは?』という疑惑である。

その証拠として提示されたのが、ビブリアゴート司書官認定試験の証である。そこにはメリダのマナの位階が《侍》であるという情報がはっきりと記されていた。

しかし、それだけでは彼女が身分を詐称した証拠には足りない。なぜなら、上位位階でありながら別の位階を発現させるということ自体は、あり得ない話ではないからだ。

問題は『彼女がマナを発現させていなかったにも関わらず、急にマナを発現させ、しかもそのマナが《侍》だった』という事実だ。

メリダの体では『上位位階の娘でありながらマナを発現できなかった』『持っていなかったはずのマナを急に発現させた』『持っていたマナが《聖騎士》ではなく《侍》だった』という三つの奇跡を起こしたということになる。そこに作為的なものを感じるのは自然な発想だと言えよう。

事実、メリダはクーファの作った薬によって無理矢理マナを発現させた。

そんなメリダは自身の疑惑を払拭するために、誰よりも強くなって実力を周囲に示すと証言する。その証言を証明するために、サラシャと戦闘することとなった。

証言証明

f:id:TOkuro:20200322032203j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

上位位階《竜騎士》であるサラシャとの戦闘。彼女のスキル《飛翔》は非常に強力であり、戦闘ではサラシャが有利のように見えた。しかし、クーファにより殺しの技術を学んでいたメリダは狡猾に勝ちを掴もうとしていた。

サラシャは空中を自在に滑空することができる。頭上から攻撃される限り、メリダからサラシャを攻撃することはできない。反撃するためには、サラシャに地面に降り立って貰わなければいけない。

その隙を誘うための演技……そのことに気がついていたのは、セルジュ=シグザールただ一人だった。結果としてメリダの勝利。自身の証言を証明した訳だ。

法廷崩壊

f:id:TOkuro:20200322033240j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

オルタナイトの万年筆によって《ウォールターの幻想譚》が書き換えられ、物語が暴走してしまった。アニメで描かれている竜のようなものは、第十一話にて登場した虫喰いである。どうやら虫喰いの中にもランクがあるらしい。

慌てふためく大人達、彼・彼女達の避難を促すメリダ達。

ちなみに、目隠しが取れたことでメリダがミセス=オセローを認識できたのは、顔を見たことで認識の歪みが消えたためである。あそこで目隠しが取れなければ、ミセス=オセローは別の何かに見えたままだっただろう。

崩壊した物語

f:id:TOkuro:20200322035031j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

崩壊した物語の世界で相対することになる敵は、かつて学院にやって来た偽りの父であった。セルジュではない。

原作ではオルタナイトの万年筆を使うことで、数多く存在する悪役――例えば人魚姫に登場する《海の魔女》や《鉤の手船長》《影法師の男》などの悪役達が駆使していた力の全てを利用することができ、かなり厄介な敵であった。原作を読んでいて、「一番アニメ映えするだろうな」と思っていたシーンなのだがほぼ描写されておらず少し寂しかったりする。

颯爽と助けに現れたクーファ、そして共に戦うことを選んだメリダ。原作ではクーファ一人の戦いだった。この二人の共闘はアニメオリジナルであろう。OP曲が流れるなど、かなり良い演出だったと思う。

f:id:TOkuro:20200322040915j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員
物語の終わり

f:id:TOkuro:20200322040959j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

メリダとアンジェルは終わりの余韻を噛みしめる。エリーゼは嫉妬、サラシャはそんな様子を眺めながら微笑み、ミュールは裁判を保存したアンデルスの写本を破棄。今回のことをなかったことにした訳だ。

その後

f:id:TOkuro:20200322041646j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

《ウォールターの幻想譚》内で死んだ偽の父親を演じた男。どうやら物語内で死んだとしても外ですぐざま死んだことにはならないようだ。全てはフィクションです、ということなのだろうか。

ちなみに彼は聖都親衛隊の隊員であるビジューという男である。彼の最期の役割は、全ての犯罪の罪を背負うことだった。セルジュの手段を選ばない、ある種の残忍さが良く分かっていただけるだろう。

ちなみに黒幕であるセルジュは、騒動を鎮めた英雄として語られることになる。巻き込まれたサラシャも、兄を強く責めることはできない。ミュールもただ傍観を決め込んでいるようだ。

これまで干渉することを避け続けたメリダの父であるフェルグスも、娘の成長を認め向き合うことを決めた。ずっと妻との間に授かった娘を愛していながら、疑っていた彼の複雑な心情も、どうか理解してあげて欲しい。

ウィリアム・ジンは無事に《白夜騎兵隊》にてスパイとして活動することが認められた。今後の彼の活躍に期待したい。
騒動の中心にいたメリダは、ビブリアゴート司書官認定試験に合格したということで、クーファに御褒美を貰う。といっても、贅沢品の類いではなく、自分の今後の成長を見て欲しいという切なる願いだった。

その後も、二人は様々な騒動に巻き込まれ戦っていく。

f:id:TOkuro:20200322042619j:plain

©2019 天城ケイ・ニノモトニノ/株式会社KADOKAWA/アサシンズプライド 製作委員

最後に

終わってしまいました。

膨大な設定が存在する作品であり、戦闘シーンでもかなりの補足説明が行われる作品であるため、アニメ化は難しいと思っていました。それをどのようにアニメーションで表現するのだろう? と楽しみにしていました。

原作を知らない方には、本作がどのように見えていたのでしょう。

ちなみに原作には割と際どいシーンが多いです。水着回や温泉回、デレッデレなミュールやサラシャ、嫉妬で頬を膨らませるヒロイン達、みんな可愛くて良い娘です。巻をまたいでの伏線回収も見事です。時間を空けて読むと忘れていたりして苦労しますが、読み返して見ると新たな発見があります。

【前:第十一話】【第一話】【次:な し】
2019秋アニメ化リスト

アニメを見るなら

自分が書いた一巻の感想はこちら

天城ケイ作品まとめリストはこちら