まず最初に
さて、問題の第二話。ブギーポップが出てくる原因となった ”世界の危機” とは何なのか? その原因や首謀者が、およそ三人の視点で描かれています。
第一話を見ただけでは全く分からなかった物語の背景が分かっていきます。原作ではもっと分かりにくくなっていたように思いますが、原作未読者は理解ができたのでしょうか。まぁ、まだ明かされていない話や物語の終わりが見えないのは事実です。
そんな第二話に関して、原作既読者らしい視点で、解説と感想を書いていこう。
用語・人物解説
霧間凪
- 見返りを求めず、 ”正義” の行動を取る。霧間凪曰く、メサイアコンプレックス。
- 身体能力は常人の遙か上を行く。まぁ、父親死んだり、信頼していた人が死んだり、注射で何か打ち込まれたりしたからね……(「夜明けのブギーポップ」より)
- 父親は数多くの本を執筆した霧間誠一。ある能力のせいで、とある機関によって消された。結果、大量の資産だけが残された。
霧間誠一
- 哲学っぽい作品を数多く書いた。一般文芸も書いたらしいが、そっちは全く売れなかった。
- 彼は「読者の能力を開花させる」という能力の持ち主であり、その能力の危険性の高さから殺されている。
- 彼の死亡した事件は「夜明けのブギーポップ」にて描かれている。かなりもの悲しい雰囲気であり、ブギーポップシリーズにおいて重要な物語だと、個人的に思っている。
谷口正樹
- ポッとでのキャラかと思いきや、次作「VSイマジネーター」では大活躍してくれます。
- 帰国子女。つい最近、日本に帰国した。
- 喧嘩に関してはめちゃくちゃ強い。
早乙女正美
- マンティコアと協力を約束し、彼女が生きていくための作戦を立案した。
- 冷静を装っているが、かなり頭にきているシーンが度々描かれている。
- 霧間凪が好き(?)であることは変わりないようで、彼女を殺すことだけはためらい続ける。
マンティコア
- とある機関によって、エコーズのコピーとして作られた。
- 変な能力(人を絶対服従の人形にして、脳内麻薬を生成できるようになる)が使えるようになっちゃったし、その能力が完璧に使いこなせるならまだしも、全くもってダメダメなウッカリさん。
- 機関への復讐は考えておらず、普通に生きることを望んでいたはずなのに……悲しいなぁ。
エコーズ
- 人類を試すために、宇宙からやって来た。
- 普通の人間として社会に溶け込むはずが、人として進化しすぎたために、とある機関に捕まった。
- 言葉を話すことができず、オウム返ししかできない。そんな彼と話すことができた紙木城直子……は何かしらの能力者だったのかも知れない。
紙木城直子
- 街を彷徨う傷ついた男(エコーズ)に優しく声をかけ、詳しい事情を聞き出そうともせず、警察官にも通報しなかった。
- 会話ができないはずのエコーズと会話ができる唯一の人間。
- エコーズの食事や場所の確保をしていたのは彼女。
とある機関(=統和機構)
- 散々「とある機関」と呼ばれ、名前が出てこない機関。実際、原作第一巻では名前が登場しない。
- 進化しすぎた人類(機関内ではMPLS能力者と読んでいる)を倒すことを目的としており、対抗策として合成人間を作り出している。
- 幹部の名前は一人として明かされておらず、その全貌は謎に包まれている。
注目すべきポイント
殺されるかもしれないと、霧間凪を恐れている女子高生
「殺される」と恐れている女子高生は、末真知子に相談を持ちかける。彼女が言うには草津秋子が変な薬を配り始め、もらった娘が立て続けに失踪し始めた。しかも失踪前の娘の周りに、霧間凪が現れ「忘れなさい」と言ってきたのだという。……。
第一話にて四人が失踪したという話を覚えていますでしょうか。これがその事件の真相のあらましです。
どうやら草津秋子という女子高生が薬を配り、受け取った女子高生が失踪しているようです。
では黒幕は草津秋子なのでしょうか? 霧間凪と事件の関係性は?
まだ謎は深まるばかりです……。それにしても末真知子が「良くあること」と言ってるのが怖いですね。まぁ、実際「ブギーポップは笑わない」の世界では良くあることですが。
マンティコアが化けている?
人肉を貪る ”マンティコア” と呼ばれる何かと、冷静にそんな光景を眺める早乙女正美。食事を終えたマンティコアは百合原奈美子の容姿をしていた。……。
ここではマンティコアは自分が食べた相手に変身する能力があることと、マンティコアが百合原美奈子として深陽学園の生徒として潜入していることが分かります。第一話でブギーポップが学園を見張っているという選択は正しかったということですね。
霧間凪は彼女たちを助けていた?
霧間凪は薬を受け取った女子高生達を助けようとしていたのではないか? そんな末真知子の考えは正しかったことが、霧間凪の口から語られる。しかし、彼女は意味深な自身の発言――エコーズ、マンティコアなど……について説明することはなかった。……。
ここでエコーズやマンティコアについて言及され、霧間凪が事件を追っていることが判明します。しかし、あくまで無関係である末真知子には詳細を語ろうとしません。
秋子と関わりを持つ早乙女正美
早乙女正美は秋子と共にカラオケに行き、マンティコアに何やら怪しげなこと能力をかけさせる。するとスレイブ化した秋子は脳内で麻薬を生成し、自分の仲間を増やしていくようになった。……。
マンティコアの能力をまとめると、
- 食べた人間に変身する能力
- 自分の奴隷とし、脳内麻薬を生成させる能力
という二つ。あくまで不完全であり、欠点が数多くあります。スレイブ化しようとして死亡してしまったのが、校内で発生した ”四人の失踪事件” の真相です。本来ならば四人も脳内麻薬を生成し、配ることで配下を増やしてきたかったのでしょう。最後には草津秋子も麻薬中毒者のように涎を垂らし、作戦を進めさせることはできなくなっていることからも、彼女の能力の不完全さが伺えます。
そんなマンティコアと早乙女正美が遂行したかったことは、
- マンティコアの食糧確保
- マンティコアを消すためにやって来た統和機構を、返り討ちにするための仲間を作る
ことの二つ。一つ目についてはマンティコアが生きていくために必要なことは明らかです。そしてマンティコアが本当に今後も生きていくためには、機関との戦いは避けては通れません。なにせ人を食い続けていればいずれ、機関の耳にもいずれ入ることは分かりきっているのですから。
これぐらい整理できれば、ストーリーは理解できると思います。
殺される紙木城直子
エコーズを探しにやって来た紙木城直子が、マンティコアによって殺される。紙木城正美は最後の最後までマンティコアの心配をしていた。……。
ここでエコーズとマンティコアの関係性が確定します。どうやらマンティコアは、エコーズのコピーとして作られた存在であるようです。つまり、エコーズはマンティコアの上位互換であり、エコーズがいる限りマンティコアは欠陥品として扱われるということを意味します。
エコーズ視点
街を彷徨うエコーズに声をかけるブギーポップ。
ボロボロの彼に対して、優しい声をかけてくれた紙木城直子。
……。
ここで第一話冒頭、竹田啓司の見た光景――ブギーポップが男に一言声をかけるシーンと繋がります。ブギーポップがエコーズにかけた言葉は、
「君は何かを追い求めているんだね。だったら泣くのは、それを見つけてからにした方がいい」
ここで言う ”何か” とは、「人間はどっちなのだろうか?」という問題の答えでしょう。優しいのか、優しくないのか。そんなシンプルな問題の答えを宇宙に届けるために、彼は街を彷徨っているのです。
唯一、エコーズに声をかける紙木城直子
彼女は何の躊躇いもなく、彼に声をかけ、救いの手を差し伸べる。彼女はエコーズと言葉を交わし、霧間凪に「マンティコアを探して欲しい」と依頼をする。……。
彼女はエコーズの望みを叶えようと、霧間凪に相談を投げかけます。ここで「霧間凪がエコーズやマンティコアを知っていた」理由が分かります。紙木城直子と友人だったからなのですね。またエコーズが学園に匿われていることもここで分かります。
紙木城直子は、地球にやって来てすぐに人体実験の道具として扱われ、逃げ出したはいいものの誰からも邪険に扱われていたエコーズが、最初に触れた人の優しさだったのです。
まぁ、彼女は殺されたんですけどね。
エコーズに話しかける霧間凪
エコーズの居場所を聞いていた霧間凪は、エコーズに話しかける。しかし、彼は何も答えない。……。
エコーズは何も答えません。いや、答えられないのです。
ここで彼と会話をしたのだという紙木城直子の凄さが分かります。そして同時に霧間凪は、変人である自分に近づいて信頼してくれた彼女を守れなかった自分の無力さも知るのです。
最後に
物語は最終局面へと向かって行きます。紙木城直子を失ったエコーズはどうなるのか? 能力を使いこなせないマンティコアが今後生きていくためにはどうすればいいのか? 友人を失った霧間凪は次に何をするのか? ブギーポップは何をしているのか?
伏線が回収され、物語が迎える一つの結末……楽しみですね。
このブログを機に、ブギーポップシリーズの面白さが分かって貰えれば幸いです。
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