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【アニメ】「ブギーポップは笑わない」第三話【感想・解説】

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2019年冬アニメリスト

 

まず最初に

「ブギーポップは笑わない」における ”世界の危機” の終結。これまでの登場人物達の思惑が繋がり、迎える世界の結末。三話まで見た人は、ストーリーを理解し、楽しめたのでしょうか。

原作ファンとしては、かなり分かりやすくまとめられているので、満足できでした。細かな心の機微などの表現を不満点として言っている人もいるようですが、アニメはアニメらしい表現で、原作特有の雰囲気を損なうことなく作り込まれた作品だと思います。

この作品を楽しめない理由の大半は、原作未読であるため「分からない」「難しい」というものだと思います。しかし、実際起きていることはシンプルです。まぁ、キャラそれぞれの設定や過去を含めると途方もないことになりますが。

このブログでは少しでも理解の足しになるように、原作の知識を交えて、解説しています。極力分かりやすいよう工夫を凝らしているつもりですが、疑問点などありましたら、コメントなどお願いします。

用語・人物解説

田中志郎

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
  • 弓道部の一年生であり、紙木城直子の彼氏(ちなみに紙木城直子は別の彼氏もいる)。
  • 原作では可愛らしい美少年ということになっている。
  • 何故付き合ってくれるのだろう? と彼自身思っていたらしい。
新刻敬

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
  • 風紀委員長。
  • 原作「ブギーポップは笑わない」では最終話の締めを担当している。
  • 見てもらえば分かるが、世界を救った勇気ある人の内の一人。
早乙女正美

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
  • これまでの記事では「霧間凪のことが好き」だと書いたが(アニメではそうするのかな? と思っていた)、実は彼女に殺されたくて告白していたことが判明する。
  • 霧間凪のいる ”普通ではない” 側に回りたかったのだろう。
  • 彼については原作を読まないと分からないと思う。アニメでは表現しきれていない心の機微がたくさん存在する。
宮下藤花(=ブギーポップ)

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
  • 糸を使って戦う作中最強。
  • 「もっと早く出て来いよ……」という声も出てくるかもしれないが、どの作品も最後の最後に現れて、世界の敵が倒される ”きっかけ作り” 的役割を担っている。
  • 勿論、世界の敵を自ら殺すこともある。
霧間凪

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
  • 炎の魔女と陰では呼ばれている。
  • 今回はあっさりと殺されかけたが、実際は能力者相手と対等にやり合えるだけの実力がある。
  • ブギーポップとは顔見知り……まぁ、正義の味方としては ”世界の敵” と戦うことになる際に、自然と出会うことになる。

注目すべきポイント

紙木城直子の彼氏・田中志郎

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

弓道部の田中志郎は学校に来ない、電話にも出ない紙木城直子を心配して捜し始める。どうやら新刻敬も知らないようである。……。

ここで紙木城直子の彼氏が判明する。一話でも彼氏がいることは言及され、弓を引くジェスチャーをしているシーンがある。「彼女の両親が離婚調停中である」「志望校判定がA判定」「最近奇妙な家出事件が頻発している」、などの状況について知っていた彼にとっては心配せずにはいられないだろう。

新刻敬も職員室で偶然話を聞いてしまう。最初は大したことのない話だと思っていた「紙木城直子が学校に来ていない」という話も、家にも帰っていないとなると話は深刻さを増す。この後、竹田啓司に職員室で聞いた話をしている場面が、第一話では描かれている。

早乙女正美も捜索に加わる

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

早乙女正美は霧間凪を探したらどうかと進言し、霧間凪捜索に加わる。……。

霧間凪を厄介だと考えている早乙女正美としては、さっさと見つけて殺しておきたい。しかし、疑われるような行動をとって警戒されるのはまずい。……ということで取った行動が ”新刻敬と田中志郎に加わる” というものだった。結果彼の思惑通り、彼女に疑われることなく近づくことができたのである。

”何か” を隠す早乙女正美

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

霧間凪を捜す一行が最後にたどり着いた体育倉庫。しかし、早乙女正美は ”何か” を隠しているようだ。……。

アニメでは暗くて分かりにくい。原作では紙木城直子が身につけていた鈴やエコーズが生活していた跡(毛布や食事のカス)などが置かれていた、という記述がある。鈴などが見られれば田中志郎に疑われるし、誰かが生活したとなれば新刻敬も黙っていないだろう。

さらに、エコーズが誰か――霧間凪の支援を得ていたことを、早乙女正美はここで確認している。やはり霧間凪は消さなければいけないことを再認識した訳だ。

霧間凪による襲撃

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

全校放送で霧間凪を呼び出すことにしたが、霧間凪の襲撃により、三人は縛り上げられる。……。

ここまで全て早乙女正美の計画通りである。疑われることなく、霧間凪と対面し、エコーズの姿も確認。後は霧間凪を殺して成り代わり、スレイブを自由に増やしていくだけである。

しかし、彼・彼女らは知らない。新刻敬の意思の強さとブギーポップの存在を。

殺される霧間凪、逃げ去る田中志郎、呆然とする新刻敬

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

霧間凪が殺され、田中志郎は逃げだし、新刻敬は早乙女正美と対峙する。……。

さて、舞台は最終局面である。全く疑われていなかった早乙女正美は霧間凪を殺害。ここで「殺す側に回るのも悪くない」「僕からすれば、あなたが普通だ」といった発言から、

  1. 霧間凪に殺されたかった
  2. 普通じゃない存在になりたかった

ことなどが漠然と読み取れる。原作ではがっつりと「彼女に殺されたかったから告白した」と描かれているために分かりやすい。何やかんやで結果として、無事 ”普通じゃない存在” にはなれたようだ。「殺されたい」という時点で普通じゃないだろ! という突っ込みがあるかも知れないが、今の彼の状況が彼の目指したモノに近しいと言えば、分かりやすいかも知れない。

ここでもう一つ注目したいのが、新刻敬の意思の強さと理解力の高さである。目の前で人が死に、訳分からない奴が屋上から飛び降りてきて、意味の分からないことをブツブツいっている奴を前にして、何が起こっているのかを冷静に知ろうとする姿勢……自分も見習いたい。

逃げ出した田中志郎の姿がある意味正しいと言えるのだろう。まぁ、実際は逃げ出したのではないことが後々分かるが。

「悪魔よ!」

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

「あなたたちは悪魔よ!」新刻敬は死を前にして叫ぶ。……。

エコーズは何度も自問自答していた。「人間はどっちなのだろう?」と。

自分を無視していた街の人々、と声をかけてくれた紙木城直子。

人を平気で殺すマンティコアと早乙女正美、と自分のために声を荒げる新刻敬。

果たしてどちらが人なのだろうか? 殺される前にエコーズは報告しなければいけない。選択を迫られる。

新刻敬は早乙女正美達を「悪魔」と評した。エコーズは小声で「悪魔」と反復する。そして……

「我が身を情報に変えて――」

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

「我が身を情報に変えて、今、御許に報告を送る!」という言葉と共に、光となって宇宙へと放たれる。早乙女正美はマンティコアを庇い、消滅した。……。

あぁ、やっぱりエコーズは宇宙から来た奴何やなって……。この光によって周囲で電波障害が発生し、放送はホワイトアウト、電子機器のデータの破損が見られた。この情報によって宇宙にはどのような報告が行われたのかは想像で補うしかない。

しかし、後に霧間凪が言うとおり、世界が救われたということには変わりがないだろう。ありがとうを言うことは叶わないが。

暴走するマンティコア

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

暴走するマンティコア。彼女を糸でつるし上げるブギーポップ。弓で射貫く田中志郎。こうして事件は決着した。……。

一番驚いたのは声優の演技だろう。悲鳴から「殺す」の流れは、鳥肌が立つほど完璧だった。声優ってやっぱ凄い。アニメでした表現できないシーンだったと思う。

ここで田中志郎はただ逃げ出したのではなく、弓矢を取りに帰っていたことが分かる。化け物に弓道の道具で挑もうとするとは……とんだ勇気である。しかも土壇場で外さないというのもポイントが高い。

個人的に残念なのが、ブギーポップの口笛がなかったことだ。ブギーポップは登場する際に必ずと言って良いほど口笛を吹いている。そんな口笛の描写が出る度に、「あっ、終わったな」という感じがするのは自分だけではないはずだ。何故そんな場面をカットしたのか、全くもって意味が分からない。

霧間凪生きてた……

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

死んだと思われていた霧間凪は、エコーズによって生かされていたことが判明。……。

エコーズによって救われた “炎の魔女” こと霧間凪。ブギーポップとは顔見知りであることが明かされる。これまで ”世界の敵” が現れる度、直接的であれ、間接的であれ、関わりを持ったことがあることは、今後のシリーズを読んでいけば分かる。

ちなみに ”炎の魔女” と呼ばれるきっかけの話が「ハートレス・レッド」(ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド 感想 )で描かれている。ネットで調べるとすこぶる評判が悪かったが、そんなの気にせず読んで欲しい。

世界は救われた……

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

全てが終わった後、日常へと戻っていく。……。

ブギーポップは宮下藤花に戻り、平穏な日常へと戻っていく。ここで一話のラストへと繋がるわけだ。宮下藤花に苦手意識を持っていた(アニメでは描かれていない様に思う)新刻敬も普通に話しかけられるようになっている。

そして次へと……

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(c)上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

そして最後に飛び降り自殺が……。……。

さて、「ブギーポップは笑わない」はこれにて終了。次の「VSイマジネーター」に向けての掴みといった所でしょうか。彼女に関しては今後バカみたいに書くことになるので、それまでのお楽しみということで。

最後に

最高の作品だったと思います。BGMからOP、EDにかけて、全てが雰囲気にマッチしています。物語の分かりにくさ、に関しては原作からそうなので気にはなりませんでした。三話でよくぞまとめてくれたな、と驚いたくらいです。

次は「VSイマジネーター」。原作はPART1、PART2と二冊に分けられているため、かなり理解しにくい部類の作品だと思います。それをきちんと伝わるように、かつ面白さを損なわないように、アニメ化してくれることを期待しています。

素晴らしい作品でした。

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