※ネタバレをしないように書いています。
川釣りへ友達と
情報
作者:匡乃下キヨマサ
試し読み:カワセミさんの釣りごはん : 2
ざっくりあらすじ
ミサゴの兄妹間で「誰が一番釣りが上手いのか」を、バス釣り大会で競うことになった。その見届け人としてカワセミも参加することに……その他、カワセミとミサゴの鯉釣りや、釣具店の友達を引き連れての海釣りなど、釣り尽くしの日常物語。
感想などなど
拉致されて釣りに強制参加させられたという出会いを経て、家族には恋人関係と邪推されながらも、良好な関係性を築きつつあるカワセミとミサゴ。ミサゴは釣るだけ、血は苦手。カワセミは良い笑顔で魚を捌く……という持ちつ持たれつの間柄というのが、良好な人間関係を築くために必要なことなのかもしれない。
さて、すっかりミサゴ兄と姉に好かれてしまったカワセミ。妹の可愛い友人ということも大事なのだろうが、魚を料理して良いおつまみを作ってくれるということも、家族に気に入られた一因なのではないだろうか。
ブログ主は数多の漫画の影響で、魚料理にも手を出した。しかし魚は高いし、調理は血なまぐさい。狭いキッチンでは手間暇もかなりのもので、魚を食べるとすれば、スーパーの総菜コーナーで安くなっている魚のフライ等に限定されつつある。魚を調理するスキルの貴重さは身に染みて感じている。
そんなミサゴ兄妹に連れられて、今回はバス釣りへと赴いた。
バスはブラックバスと呼ばれる特定外来種のことを指す。1925年に米国から食用として輸入されたが、現在の日本の食卓にブラックバスが並ぶことがないことからも分かる通り、日本人の舌には受け入れられなかった。また、肉食性であり日本の生態系を破壊するために放流は禁止された。
それでも日本全国津々浦々、生態系に溶け込んで破壊の限りを尽くしている。そんな憎きブラックバスを駆除するため、大会などで釣り人を集めて駆除するようになっているようだ。
今回、ミサゴ兄妹が参加するバス釣り大会もその一環であり、駆除のためということで参加費は無料ということらしい。釣り大好き人間にとっては、無料で釣り放題という絶好の機会である。
ついでに大会ということもあり、釣ったブラックバスの大きさによって順位がつく。兄妹間で「誰が一番釣りが上手いのか」を決めるには、ぴったりの場であると言えよう。そしてミサゴ兄妹それぞれが、これ以上ないくらい本気の装備で釣りに挑む。
ブラックバスを釣る技術的な話もしっかりと描かれ、大物を釣るための試行錯誤する楽しみが絵を通じて伝わってくる。ルアーの一つとってしても、条件に応じて適したものがあったり、投げ方や投げる場所にも理由があることなどなど……漫画で読んだだけなのに釣りをしているような満足感がある。
拉致されて釣りを無理やりさせられるという不可思議な出会いだったが、「もう少し早く出会いたかった」「一緒にいると楽」という言葉が、互いに自然と零れるような素敵な間柄になっているのも、読者としてはポイントが高い。
鯉を食べると聞くと、「はだしのゲン」の鯉の生き血には滋養強壮の効果があるといって、金持ちの家の庭で鯉を取ろうとする話を思い出す。鯉はそれなりに昔から食べられてきたのだろう。
カワセミとミサゴは、二人で鯉釣りに挑む。その釣り方は鯉に特化した特殊な針に餌を使うようだ。釣り竿には鈴を付け、魚がかかったら音が鳴って知らせてくれるように工夫が凝らしてある。
どうやらミサゴが初めて釣った魚は、鯉だったらしい。そういう風に昔のことを語ってくれるミサゴは、カワセミにかなり心を許してくれているということなのだろうか。それに対してカワセミも、自分が初めて作った料理は味噌汁だったと語ってくれた。
こうして二人の仲はさらに深まっていく。読者としても二人の意外な一面など知ることができるのは嬉しいことである。
この漫画の良いところは、独特なセンスだと思う。
コマの細かなところにセリフやネタが散りばめられており、どれもクスッと笑ってしまうような小気味よさがある。魚から見たような構図だったり、太もも越しに湖面を見るような構図だったりも、漫画として面白い。
巻末の嘘次回予告も、地味に毎回楽しみにしている。作者のセンスが嵌れば、がっつりはまってしまう漫画ではないだろうか。