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キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

平和を願う気持ちは同じ

情報

作者:細音啓

イラスト:猫鍋蒼

試し読み:キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 2

ざっくりあらすじ

星脈噴出泉という戦争の元凶である星霊エネルギー噴出の予兆が観測された。吹き出すエネルギーに星霊をその身に宿す者が触れると、星霊が強化されるのだという。”皇庁”は戦力強化のため、”帝国”はそれを防ぐため、星脈噴出泉の奪い合いが始まる。

感想などなど

第一巻にて、この戦争が始まった原因は説明されている。星霊という未知のエネルギーに取り憑かれた人々が、帝国の差別から逃れる形で皇庁を建国。そこから帝国と皇庁間では長きに渡る戦争が幕を開いたのだ。

つまり言ってしまえば星霊が全ての元凶と呼べなくもない。

そんな星霊のエネルギーが溢れてくる星霊噴出泉出現の予兆が観測された。正確に言うならば、帝国は科学の力で、マグマとは違う高エネルギーの動きを観測した。一方、星霊というのは感覚的なもので分かるらしい。

そんな見つけ方の異なる二国では、星脈噴出泉の扱いというのも大きく異なってくる。

星庁の場合、星霊のエネルギーを受けると力が強化されるのだという。身に宿す星霊の種類によってまちまちではあるが。帝国の場合、まだ謎の多い星霊のエネルギーについて調査することもしたいだろうが、何より敵の戦力が強化されるという事態は避けたい。

つまり双方にとって、星脈噴出泉を何が何でも早く手中に収めたい訳だ。

……そう、戦争の過激化である。

 

双方に緊張が走っているのだが、どうにもその緊張の走り方が異常な者がいた。イスカとアリスである。方法も立場も違う両者であるが、共に願うは平和と……戦いの決着であった。第一巻では「いざ参る」という段階で、共に倒すべき強敵が現れてしまい、有耶無耶になってしまったのだから再度戦いたがるというのも仕方ないのかもしれない。なにせ不完全燃焼状態なのだから。

そんな二人は中立都市でニアミスしつつ、共に同じ占い師に「待ち人にいつ会えるか?」を占って貰うと、ともに「待ち人は近くにいる」という結果が出た。占い師曰く、「あらゆる因果に負けない強い運命で結ばれている」らしい。

この作品はアリスとイスカの両視点を交互に展開していく。そのため敵でありながら互いに会いたがっているもどかしい状況と、戦場でのすれ違いというものを描いていく。戦場でイスカイスカイスカ叫ぶアリスは少し恐いが、言動だけ見ればラブコメである。

 

第二巻では星庁の企てた数年越しの作戦や、イスカがかつて名を連ねていた「使徒聖」の別メンバーも登場し、その強さを確認することができるのもまた、見所として数えることができよう。

アリスのいる星庁では王女がトップに立ち、国を引っ張っている。その現状をヨシとせず、権力争いが水面下で起きていた。アリスもその争いに巻き込まれていくこととなり……いや、今回の場合は(イスカに会うために)自ら突っ込んでいったという方が適切か。状況はややこしくなっていく。

イスカのいる帝国も権力争いがあるという状況に大差ない。まぁ、イスカを指揮する隊長ミスミスに、上に上り詰めようという意思が希薄なために大して巻き込まれてはいない……と思いきや、「使徒聖」同士のいざこざに利用されたりするので油断できない。

自国内で争っている余裕なんてないと思うのが、外野の読者としての感想である。しかし当人同士は戦争に勝つことだけでなく、どう勝つかまでを視野にいれた戦争をしているのだろう。難しい話だ。

そんな戦記物らしいややこしさが増えつつ、このシリーズは展開されていくのだろう。ラブコメ要素がかなりの癒やしであった。

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