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ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

ギャルゲヒロインとの日常

情報

作者:田尾典丈

イラスト:有河サトル

ざっくりあらすじ

不思議なメールに誘われる形で『エターナル イノセンス』というギャルゲー世界のヒロイン達と生活することになった都筑武紀。ハーレムの状況に戸惑いながらも、どうにか自身やヒロイン達との思いと折り合いをつけようと奮闘するある日、春姉と夏海の実父を名乗る男が現れた。

感想などなど

『メモリーロンド』という鬱過ぎるゲームにおいて、ハッピーエンドへの道のりはあまりに遠かった。しかし、『エターナル イノセンス』の明石葵が持っている設定や、現実世界だからこその齟齬を生かして辿り付いたEDは清々しいものとなったのではないだろうか。

木の効果で一度は記憶を失った幼馴染みの理恵との関係性も、ゲームにはないイベントにより大きな進展を遂げた。第一巻を終え、第二巻でようやくヒロイン達が現実に溶け込むことができたように感じる。

しかし、全てのキャラクターが理恵のように関係性の変化を生むことはできていない。春姉や夏海、咲との関係性はゲーム上で描かれていたものに過ぎない。「ゲームで設定されていたから」という理由で抱いた好意に過ぎないのだろう、という何ともいえない違和感を、読者は覚えずにはいられないのだ。

第三巻では、メタ的な言い方をすると、ヒロイン達が主人公である都筑武紀に好意を抱く理由付け的な側面が大きいように感じる。ある意味、物語としてはここからがスタートラインなのかもしれない。

 

第一巻では咲、第二巻では理恵にスポットライトが当てられ、現実とゲームの祖語に苦しむことになったとすれば、第三巻では義理の姉妹である春姉と夏美が主役だと言える。

ここで春姉と夏海のキャラ付けというものについて考えて見たい。よく考えずとも、二人はギャルゲーにはありがちな(と勝手にブログ主は思っている)設定を所持している。

例えば春姉。世話好きでお節介で、家事にスポーツに勉強まで何でもできる万能型。しかし体力の少なさが数少ない弱点で、それ以外に目立った欠点など存在しないとも思える天才だ。

そんな彼女は、『自身の将来』というものについて思い悩むことになる。ゲーム上では、彼女の夢や願いといったことに関しては、描写も設定もなされていなかったらしい。テニスができるのであれば、迷わずテニスを選ぶこともできただろうが、利き腕を痛めてしまった今、その夢を選ぶのはかなり険しい道となってしまう。彼女の悩みに対して、都筑武紀はどのように向き合い、言葉をかけることができるのか? 主人公として、いや、男としての力量が試される部分であろう。

次に夏海。彼女の場合は、『どこから見ても中学生にしか見えない』という外見的な問題が挙げられる。高校生にしては低い身長、顔もかなりの童顔。性格も甘え上手な子供っぽさを残している。

ゲームとしては可愛いですむようなことだが、現実では痛い。そんなギャップが彼女を苦しめる。見た目とは裏腹な、重く切実な悩みを打ち明けるシーンは、男としてはどう受け止めることが正解なのか分からなくなってしまう。

 

というように二人は虚構と現実の齟齬に苦しめられる。そこに追い打ちをかけるが如く、二人の実父を名乗る男が現れた。ゲームでの設定では、仕事に打ち込みすぎて家庭を無視しすぎた果てに離婚。母親がなんやかんやあって、今の義理の家族関係に至っている。

そんな父が今さら現れた。どうやら二人を引き取って、一緒に生活したいのだという。長い時を経て心変わりし、家族への献身的なサービスに努めたいという気持ちの表れなのだろうか? はたまた、もっと別の理由があるのかは定かではない。

主人公としても、姉妹としても、今の住み慣れた家を離れて別れるというのは、決して嬉しい話ではない。しかし――これもまたゲームと現実の齟齬による影響だろう――姉妹と主人公の三人で生活していくには、金銭的な問題というものが浮上し始めていた。

春姉が大学にいくにしても、現在の状況では金銭的に不可能。当然、都筑武紀も夏海も同様である。これから先、遠い未来のことを考えて見ると、三人一緒に暮らすよりも、姉妹は実父(仕事人間なので金だけは大量にあるらしい)の元で、金銭的に何不自由ない生活を送る方がいいかもしれない。

姉妹の感情としては、離れたくないという思いと、金銭的な迷惑をこれ以上かけたくないという思いがせめぎあっていた。そんな二人にかけるべき言葉を、都筑武紀は冷静に考えなくてはいけない。

これから先も虚構と現実の齟齬は、ヒロイン達を苦しめることになるのだろう。都筑武紀は後悔のない選択をしなくてはならない。なにせ彼は主人公であるのだから。

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