※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
殺意を覚えまして
情報
作者:東出裕一郎
イラスト:品川宏樹
ざっくりあらすじ
ローマを舞台にした殺人ゲームに勝利した赤神楼樹。疲弊した体を癒やす間もなく調停者アストライアから ”十二使途のゲーム” 開始が告げられる。ルールは町中に散らばった十二人の娯楽提供者を殲滅し、ロザリオを集めるというものであって……。
感想などなど
ヴァレリオ・ロベルティという無関係な人を殺し、完全に堕ちてしまう前にあやなに救われた楼樹。ゲーム内容は「ヴァレリオ・ロベルティを楼樹が殺すか、殺さないか」の賭けだったようです。
結果として楼樹の勝利と言ってもいいでしょう。だからといって、「はい、解散」とならないのが ”クラブ” のゲーム。さらなる ”十二使途のゲーム” と呼ばれるヤバいゲームの開始が告げられます。
ゲームの内容はかなりシンプル。『町中に散らばった十二人の娯楽提供者を殲滅する』というもの。そんな十二人の娯楽提供者がまた癖が強く、まともではない奴らなのです。殺人を殺人とは思わず、ただ自身の快楽が赴くままに動く様は正に ”ケモノ” と呼ぶに相応しい面々が勢揃いしていました。
十二人全員を紹介していては時間がいくらあっても足りません。まずは快楽提供者を簡単に二つのタイプに分類し、それぞれ一人ずつ紹介することにしましょう。
ではまず一つ目のタイプは『秩序型』。これは理性が存在し、会話がきちんと成立するような快楽提供者のことを指します。分かりやすいのは第一巻の “ロビン・フット” でしょう。 ”クラブ” に入る理由としては「殺戮に対する欲求を持て余しているため」が妥当だと思います。
次のタイプは『破綻型』。これは『秩序型』とは対照的に理性が存在せず、いわば兵器のようにただ殺戮を行うことで、自己の世界を守っている者達のことを指します。第一巻で登場した ”ハリウッド・スター” がこれに該当。 ”クラブ” に入る理由とすれば、「そこにしか行き場がなかったから」です。
次に今回登場する、それぞれの快楽提供者を紹介。それぞれ選定された理由は、個人の趣味です。
『秩序型』の代表とも言えるのは ”炎神” 。読み方は ”アグニ” グルカ兵において最強と謳われ、あらゆる戦況を才能ではなく、理詰めで切り抜けてきた男です。
彼の魅力は、その理詰めで切り抜けたことによる経験値です。天性の才ではなく、努力で ”娯楽提供者” 最強の高見へと上り詰めた。アウストライア同様、ただ強者と戦うことを望んで生きる ”ケモノ” としての生き様も愛される理由と言えます。
『破綻型』の代表……これはかなり難しいですね。強いて言うならば自分は、”バズーカ・パンシー” を選びます。度々、逃げ惑う面々の前に現れ場を乱す彼女の武器は、ロケットランチャーです。
ロケットランチャーはかなり重い武器であり、反動もかなりのものです。しかしか、彼女は片手でロケットランチャーを容易く操り、めちゃくちゃに打ちまくり敵も味方も関係なく殲滅していきます。どうやら火事場の馬鹿力が常に発動されているようです。
そうして撃ちまくる最中、「タスケテ……タスケテ」と何度も呟く様は狂気を感じます。どうやら昔、彼氏に受けた暴力に対抗すべく持った武器がロケットランチャーであり、それを用いて彼を殺したことにより、全ての理性という理性が消し飛んでしまったようでした。
そんな無茶苦茶な彼女ですが、最もシャーリー達を追い詰めたということで選定しました。いやぁ、強かったですね。
”アグニ” と ”バズーカ・パンシー” 意外にも、『命や名誉よりも大切なものを持つ男』 ”銀環蛇” 、『騎士として生きる少年』 ”ズィルバー・リッパー” など狂った娯楽提供者が十二人も登場し、潰し合い、殺し合い……血のたぎる戦いが繰り広げられていくのでした。
そんな戦いづくめの物語ですが、二転三転する展開や伏線回収も魅力となっています。
『何故、ヴァレリオ・ロベルティがリストに名前を連ねていたか』
という最大の問題が解決していないのです。その理由も、クラブの目的も、そして最後に戦うこととなる敵も、全てが驚きづくめの第五巻。最高の物語でした。