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ゴブリンスレイヤー12 感想

【前:第十一巻】【第一巻】【次:第十三巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

世界各地で起こる冒険者による冒険譚

情報

作者:蝸牛くも

イラスト:神無月昇

ざっくりあらすじ

棍棒剣士と聖女に白兎猟兵の一党は竜に追われ、女神官は女騎士の発案で魔女と妖精弓手の四人で冒険に出かけ、水の街の仕掛け人はヤクの売人の始末に向かい死体に出会う。ゴブリンスレイヤーは槍使いと重戦士に誘われて……。

感想などなど

ゴブリンスレイヤーを好んで読む方は、ゴブリンスレイヤーに何を求めているのだろうか。第十二巻を読んでいると、それが良く分からなくなっていく。

あらすじでも示した通り、第十二巻の物語は『棍棒剣士達による冒険』と『女性メンバーによる冒険』と『水の街の仕掛け人達による事件』と『ゴブリンスレイヤー達の冒険』の四つに分けられる。それぞれの繋がりは大変希薄であるため、群像劇というよりは短編集として楽しむことになるだろう。ゴブリンスレイヤーが登場するのは最後のエピソードだけであるので、途中で読むのを断念するという方もいるかもしれない。

そして物語としての方向性も、それぞれで大きく異なってくる。一つずつ整理してまとめていこう。

まずは『棍棒剣士達による冒険』である。「棍棒剣士って誰やねん」と思われる方もいるかもしれない。これまで下水道で鼠を棍棒で潰していた新人冒険者で、雪山の事件で白兎猟兵が仲間になって三人グループになった面々である。

今回は下水道の鼠ではなく、村の依頼でゴブリン退治にやって来た。棍棒と剣を両手に携えて、ゴブリンの扱う毒への対処としての薬もきっちり所持し、それぞれの連携をしっかりとしている辺り、新人の頃とは比べて大いに成長していることが分かる。棍棒剣士が幼馴染みを女性として意識し始めたというのも、読んでいてニヤニヤできる。白兎猟兵がヒロインに加わることによりケモナーも大歓喜であろう。

ゴブリン退治を大してピンチになることもなく終えた三人。ほっと胸をなで下ろしたのも束の間、なんと竜に襲われることになる。どうやらゴブリンが根城にしていた洞窟は、元々竜の居住空間であったらしい。

竜……第十一巻にてゴブリンスレイヤー一行が討伐したことは記憶に新しい。自然環境や運を味方に付けて倒すことができたものの、新人が持っている棍棒程度でダメージを与えることすら厳しいということは考えずとも分かる。他の聖女や猟兵の武器でも同様である。

逃げて逃げて必死に逃げて……竜から逃れるべく、自らのポケットにあるものを確認し策略を巡らす。地上最強の生物として名を連ねる竜を倒す? いや、倒すことができない。ならば、どのようにして逃げ出す? これは難しい問題だ。

『棍棒剣士による冒険』は、この竜から逃れるためのエピソードが中心となる。あれほど弱かった新人が成長した姿を見ることができ、危険な状況でありながらどこかほっこりできる。ゴブリンスレイヤーイヤーワンのエピソードが好きな人にはお勧めである。

 

次に『女性メンバーによる冒険』である。メンバーの内訳は、女神官と女騎士と妖精弓手と魔女の計四人。大したことのない依頼をこなすだけだったはずが、いつの間にか砦の攻城戦に巻き込まれることになる。

どうやら魔物の軍勢が攻め込んでくるらしい。冒険者としては黙って逃げ帰る訳にはいかない。それぞれがそれぞれにできる形で戦いに参戦していく。

このエピソードでのメインは女神官が自信を付けることにある。これまで銀等級と冒険をしてきたことで、自分に求めるハードルが高すぎるように思われる。これまでも十分すぎるほどに活躍してきたし、彼女がいなければ死んでいたような依頼もあったことを読者や他のメンバーは理解しているが、彼女はそうは思えないようだ。

砦での攻城戦の最中、ペリュトンという獣に襲われる。元ネタでは放射能によって身をやつした人間のなれの果てとされているが、本作では存在しない獣……つまり幻のような獣として描かれている。矢を撃っても当たらないというのに、ペリュトンからは一方的にこちらを攻撃できるし、人語を操る程度の知能を持っているというチート性能。

しかし魔女からの情報で、「ペリュトンの正体が分かれば消滅させることができる」というらしい。そのヒントを得るために、女神官はペリュトンに対して謎かけ勝負を挑む。武力では勝てない相手には、頭脳戦を挑むというのは戦いの基本である。古人も言ってた……かもしれない。

頑張れ女神官。銀等級もすぐそこだぞ。女神官の頑張りと成長を楽しみたいという方にはお勧めとなっている。

 

次は『水の街の仕掛け人達による事件』であるが、これは少しばかりミステリチックなエピソードとなっている。まぁ、難解な密室トリックとかアリバイを解き明かすようなことはないが。

水の街にて、依頼があれば人を殺す……つまりは殺し屋の男と、その愉快な仲間達が事件に巻き込まれていく。依頼自体はとても簡単で、主を裏切ったというヤクの売人の暗殺するというものであったが、殺しに行ったら既に殺されたいたのである。しかも護衛の人間に見つかってしまい、殺人の容疑者として追い回される。

脳裏には「嵌められたかもしれない」という疑惑が浮かぶ。だとすればすることはただ一つ。嵌めてきた相手を見つけて懲らしめる。こうして捜査が開始されていく。事件の犯人自体はメタ的な読みをすれば一瞬で分かるが、作中の人物にそんなことができるはずもない。水の街を駆け回り犯人を捜していく。

TRPGの世界を舞台にしたミステリに興味があるという人は、入門の入門としてぴったりかもしれない。逆にこれまでのゴブリンスレイヤーの物語が好きという人には似合わないとも言えるだろう。かなり毛色の違うエピソードだった。

最後は我らがゴブリンスレイヤーによる冒険。メンバーは槍使いと重戦士。クソ強メンバー達はゴブリンスレイヤーがかつて倒したことのある目玉の化け物(第二巻、水の街の地下にいた化け物)を討伐する。前回とは違って、人語を操り、ゴブリンに捕まえさせた人間達を生け贄に捧げることで、何やら得体の知れぬ存在を味方に付けていた。

いわばこれまでのゴブリンスレイヤーと同様の展開と雰囲気。

強者と相対しているにも関わらず安心感を覚える展開が続き、これまで孤独だったゴブリンスレイヤーが仲間達と共に過ごす時間には笑みがこぼれる。人の死が日常に溢れる世界観の中にある幸せ。それこそが本シリーズの魅力なのではないだろうか。第十二巻を読んで、そのようなことを考える。

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