※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
新人はすぐに死ぬ
情報
作者:蝸牛くも
イラスト:神無月昇
ざっくりあらすじ
ゴブリン退治だけを希望している魔術師の少年が、冒険者希望者としてやって来た。そんな彼を何かと気に掛けるゴブリンスレイヤー。一方、街から少し離れた場所では冒険者訓練場が建設されつつあった。
感想などなど
救出した令嬢騎士は心を壊すこともなく、街へと戻り、冒険者としてではなく支援者側として生きていく道を選んだようです。そんな彼女の支援の甲斐があってか、前々から計画されていた冒険者訓練場が建設されようとしています。
冒険者――人々からの依頼をこなし、街の小さな平和を守る人達のことです。まぁ、目的は人それぞれであるようですし、悪い人もいますが。
そんな冒険者達は常に死がつきまといます。鼠退治という単純な依頼だって、噛まれれば毒に犯され、囲まれればほぼほぼ死にます。ゴブリンに関しては、これまでを読んでいれば分かっていただけるでしょう。
生きて帰れるだけで儲けもの……物を言うのは経験のみ……厳しい世界です。数多くの新人冒険者が死んでいったのでしょう。ゴブリンスレイヤーが来なければ、女神官もそんな有象無象の一人になっていただろうことは、想像に難くありません。
そんな新人に少しでも知識を与えよう、生き残れる確率を少しでも上げよう、というのが冒険者訓練場建設の目的です。
そんな冒険者訓練場では、 ”辺境最強” こと槍使いや重戦士、ハイエルフにドワーフに至る名だたる冒険者が指導者として入ります。当然、我らがゴブリンスレイヤーも。初期とは比較にはならないほど、色々なことに積極的になりましたね。
そんな冒険者訓練場の作られつつある街に春がやって来て、同時に新しい冒険者もやって来ます。一年前はこの中に女神官がいたんだと考えると、感慨深いものがありました。
そんな新人達が、ゴブリンスレイヤーに対してボソボソと、小馬鹿にした言葉が聞こえてくる様も懐かしいです。そんな彼らに対して怒りの表情を露わにする面々もいることを嬉しく思ったのは自分だけではないでしょう。
さて、そんな新人達の中でも特に異彩を放っていたのが、「ゴブリンを退治したい」と何度も口にする赤髪の少年です。「ゴブリンスレイヤーかな?」と思われるかも知れませんが、実力の伴っていない発言は煩いだけの雑音に過ぎませんが、果たして彼にゴブリンを駆逐するだけの能力があるか? と問われれば、答えは否。明らかに威勢と実力がかみ合っていないのでした。
何かと彼に気に掛けるゴブリンスレイヤーといつもの一行と共に、何やかんやでゴブリン退治の依頼を共にすることとなった赤髪の少年。いつもと少し変わったメンバー構成に加え、試しにリーダーとしての指揮を担うこととなった女神官という不安な構成で挑んだゴブリン退治は無為に不確定要素を増やすものとなっていました。
冒険者にとって一瞬の油断は命取りです。例え相手が最弱なゴブリンであろうと、ゴブリンは馬鹿だが間抜けではありません。それを経験によって知っているメンバーは問題がないのですが、新人である少年は――。
彼が一番のマヌケだった……とだけ言っておきましょう。彼の犯した失態の数々は、物語内にて確認して下さい。
これまでの感想記事でイラストに突っ込んだことは片手で数えられるくらいしかありませんが、今回は言わせて下さい。全体的にイラストを各場面の選択が素晴らしすぎる。痒いところに手が届くとはこのことかっ! と私は言いたい。
エグいシーンもありましたが(いつも通り)、全体的に楽しく読める作品でした。